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【ソリスの憂鬱:第14話:戦いはつづいてルンです】

ガン

ルンが大きな盾で敵を停めた。

アミュアと同じ程度の大きさのイノシシ形モンスターで、眼が赤い以外は普通のイノシシだ。

アミュアの魔法が無詠唱で飛ぶ。

アイスニードルが一本だ。

シュドっと突きたち、ぼひゅんと消えるイノシシ。

ころんと魔石が落ちた。

魔石をアミュアが拾い腰のポーチに入れる。

ソリスに作って貰った空間魔法内蔵のポーチで、見た目以上の容量を持っている。

その中には素材や魔石を収納するほかに、キャンプ道具や携帯食料も入っていた。

「るんだ、大丈夫?けがしていないですか?」

アミュアは戦闘の度に聴くのだが、ゴーレムのルンは傷一つ無い。

「ダイジョウブデス」

毎回きちんと返事をするルン。

歩き始めてすぐに先程のように戦闘がある。

突然モンスターがわいてきて、たおすと消えて素材を落とすのだ。

「なんだか都合のいいつくりですね」

アミュアは簡単すぎておかしいなと思い始めていた。

「第一層ダカラデショウカ?」

それもそうかと歩き始めるアミュア。

敵が弱いので魔法も普通のアイスニードルしか撃っていない。

シングルキャストのシンプルな矢である。

今のアミュアの実力なら、Dクラスはそれで余裕であった。

何度か戦闘をこなすと、先の方に黒い四角が見えてきた。

ドアのような大きさと形だ。

その横にソリスが立っていて、かるく手を振った。

てとてととアミュアが小走りに近づく。

「ししょうおまたせしました」

ルンも小走りに追いかけて遅れないで来た。

「うむ。まあ簡単だったろうが説明するより、意味が解ったであろう?」

うんうんとうなづくアミュア。

「ここからこんどは階段のあった、あなにてんいですね?」

「正解じゃ」

そういってまた手をだすソリス。

もう孫を迎えに来たおじいちゃんにしか見えない状態であった。

「るんだ」

名前を呼び近づいたルンの手を取り、反対側の手でソリスの手を取る。

ソリスが踏み出すとまた音もなく階段に戻っていた。

急に暗くなるので、眼がなれるのに少しだけかかる。

「この階段を下りていけば、かなり先まで寄り道せずに進めるのじゃ」

てを離して歩き出すソリスを、遅れないように追うアミュアとルン。

「階段だけで移動できるのが一つの階層だと思えばいい。ほらここは次で行き止まりじゃ」

ソリスの言うように階段が途切れ外壁の穴だけがあった。

ここも草原になっているのが見える。

「ここを入って行けば3階の出口に出るのじゃ」

ふんふんと理解できたアミュア。

「今日は面倒じゃし時間ももったいないので、先に進む。」

ひょいと柵をこえてソリスが飛び降りた。

アミュアが覗き込むと、少し先でレビテーションを使い浮いていた。

おいでおいでしているのでアミュアも進むことにする。

「るんだもレビテーションつかえるの?」

「モンダイアリマセン」

ふむっとなり、飛び降りるアミュア。

ぴょんっと柵をこえ落ちていく。

確認したルンも下りてソリスの側でレビテーションを使い停止。

追いついたのを確認したソリスがさらに下りていった。

時々左右の壁からモンスターが飛び出してくるが、ソリスの無詠唱魔法で瞬殺され消えた。

だいぶ下まで来たのかアミュアが上をみると、青い空を覗ける穴が小さくなっていた。

「ここいらでいいだろう」

そう言って足元に見えた階段に着地するソリス。

手を伸ばしアミュアを捕まえて階段におろした。

同じ手順でルンも引き寄せる。

レビテーションは水平方向に移動できないので、降りるときはコツがあるのだ。

「ふむ氷雪だな。おそらく20階層あたりであろう」

ソリスが手を出し、3人で先程のように階層に降りた。

瞬間吹雪にもまれるアミュア。

長い髪が吹き乱れ、軽いアミュアは飛ばされそうになる。

ルンが素早くアミュアを捕まえ、足元におろした。

「ありがとうです、るんだ」

ソリスはすでに見当たらない。

また魔法を使い姿をけしたのであろう。

アミュアのローブは環境耐性が付与されているので、寒くはないが飛ばされそうになる。

ルンに支えられながらディテクトダルイェと言う出口を探す魔法を使った。

「あっちです」

アミュアがロッドで差した方向には真っ白な吹雪がただ広がっているのであった。

「むむ。これは目印がないと迷いますね」

ルンが解決策を提案。

「ワタシハじゃいろこんぱすガ内蔵サレテイルノデ方向ヲミウシナイマセン」

ルンは会話に抑揚がないので、聞き取りづらかったが、アミュアは記憶力がよいのでなんどか言葉をなぞり理解した。

「じゃああっちにいこうね、るんだ」

そういって先にルンを進ませた。

もちろん戦闘を想定した装備も忘れない。

ふと思いついてルンをとめるアミュア。

「まってるんだ、敵意をさがしてみる」

そういって詠唱をはじめるアミュアがディテクトイビルを唱える。

「あっちに2体いる。ちかい」

敵を感知したのだ。

ルンが戦闘準備で盾をあげ、メイスを片手で構える。

ルンの力は人間と比べるとだいぶ強いので、両手持ちのリーチがあるメイスを片手で扱う。

まもなく咆哮があがり接敵した。

しろくまの魔物である。

眼が赤く、爪と牙が長い。

大きさもルンより一回り大きく重そうであった。

前衛をルンにまかせてアミュアは詠唱に入る。

一匹を盾で受け止め、リーチのあるメイスでもう一匹を釣り込む。

ルンは見事な盾職の動きだった。

アミュアからの射線も確保するよう考慮していた。

アミュアは敵の強さがわからないので、とりあえずすぐ撃てる中級の炎魔法を選択。

詠唱しながら式を足すダブルキャストだ。

アミュアが赤い魔力をまとい、少し浮き上がる。

この魔力で浮いている状態は環境から影響を受けないので、風も影響しない。

『フレークヘッシェ』

ダブルキャストの特徴であるユニゾンのエコーを伴い魔法発動。

アミュアの頭上から4本の炎の大きな槍が2本づつに別れ、それぞれ軌道を変えつつ2匹のシロクマに突き立つ。

「GUAHAAAA!!」

2匹ともにかなり効果が有ったのか、ルンをがしがし攻撃していた手を停め離れた。

撃った直後から高速詠唱していた上級炎魔法が通常発動。

今度は範囲の上級魔法「スツーヒフレーク」だ。

荒れ狂う炎の嵐が2匹を包み込み焼き尽くした。

とんっとアミュアが着地した時にはクマは消えて魔石と爪を落とした。

(手応えから最初の中級でほぼ倒せていたみたい)

アミュアはちょっと無駄だったかもと反省。

20階層近辺のCクラスモンスターではアミュアの敵ではないようだ。

ルンを確認し問題なさそうなので進むことにしたアミュアであった。

「るんだ、いたくなかった?」

「モンダイアリマセン」

このやり取りにも慣れてきたのであった。

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