【ソリスの憂鬱:第13話:攻略開始すルンです】
「ぷーっ」
アミュアはむくれていた。
「仕方あるまい。ルンを街には入れられないしな。帰りに時間があったら見ても良いぞ」
街をみたいとごねたアミュアを引きずるようにダンジョンに直行したのだ。
戦闘用ゴーレムは届けがないと街に入れないと門で断られたので、直通で街に入らずダンジョンに入ることとなったのだ。
「スミマセンあみゅあサマ」
ルンが気を使いあやまってくる。
「いいの。るんだはわるくない」
ルンの腕に抱きつき、じろっとソリスをにらむアミュア。
まるでソリスが悪いかのような視線であった。
「帰りにルンを先行して飛空艇に行かせて街を見るから、がんばって進むのじゃアミュア」
まったく気にしないソリスが進んでいったので、アミュア達も続くのであった。
今はダンジョン第一層にむけて階段を降りているところであった。
そとから見えた巨大な穴の外周を螺旋に下りていく階段だ。
幅は広く4~5人並べるほどあり、崖の内側にえぐられたようにある階段が下に向かい回っている。
階段の内側には手すりが頼りなくあるのだが、それを超えれば奈落までなにも遮るものがない。
実際にはソリスは飛行魔法があるし、アミュアもルンですらレビテーションの魔法があるので落下死する危険はない。
「このダンジョンは奈落に続くこの大穴と、その周りに階層がある構成だ。奈落は果がなくどこまでも続いていたな。敵が強すぎて進めなくなるのじゃ」
かつて若い頃奈落のそこを見ようと飛行魔法で下りたことが有ったのだ。
奈落に続く穴は周りにフロアが一定距離毎にある。
そこから敵が湧いてきて進めなくなるのであった。
賢者ソリスですらすすめない強さの敵がいるのだと。
「飛行魔法やレビテーションは消費も多いしな、戦いながら使うのは不利なんじゃよ」
そうしてダンジョンの構造や敵の種類や数など指導を受けながら進むアミュア。
階段の先、外壁が切れて外側が見えてくる。
奈落の穴の外側には、果てしなく広がる世界が有った。
「これはどういうことでしょう?」
アミュアが不思議そうに外を眺める。
どこまでも晴れて気持ちの良い平原が広がっているのだった。
壁の外側には空まで見えるのだ。
「よし、少し説明するので、その階段を出ないようにな」
真剣な顔で告げるソリス。
「そこを超えるとあちら側の世界に落ちるのでな。戻るには階段に出会うまですすまねば行けなくなる」
「??」
まったく理解がおよばないアミュアは首こてんである。
「空間魔法と同じ理屈じゃな。この世界には所々そういった場所があり、ダンジョンと呼ばれているのじゃ。なかでも最大のものがここ中央ダンジョンじゃよ」
「ほー」
なんとか理解したアミュアであった。
「まちがって落ちたらどうするですか?」
くくっとソリスが笑う。
「はぐれたら私が探しに行くので、そこを動かないことじゃな」
デティクト系の魔法も同じフロア内は効くらしいので、あまり心配はないとソリスは説明した。
「第一層など久しく入っていないが、アミュアの経験になるじゃろう、一度入ってみよう」
そう言って階段にあいた縁までいくソリス。
たどり着くと手をだした。
「手を繋がないと、別々に落ちるからしっかり握るのじゃ」
「るんだもつなぐよ」
そういってソリスと右手を、左手をルンにだすアミュア。
3人で繋いだ所でソリスが踏み出す。
音もなく景色が代わり、そこは平原のど真ん中であった。
きょろきょろするアミュアが不思議そうに聞く。
「階段もあなもなくなりました」
ソリスが手を離しながら言う。
「もう手は大丈夫じゃ。無くなったのではなく、我らが移動させられているのだ。転移じゃな」
ふむふむといいつつルンの手は話さないアミュア。
「モウテハイイソウデスヨ?」
ルンが言っても離さないアミュアであった。
「ルンが迷子になったらこまるので」
そういってぎゅっと手を握るアミュアであった。
どうやらルンを弟か妹だと認識しているようだ。
今日のルンは完全装備なので、背中に大き目の盾と腰にはメイスを持っている。
メイスは両手持ちの長柄であった。
アミュアも厚手の白いローブに白い膝下まであるマントを付けている。
ダンジョン仕様であった。
「さてここからなんじゃが。各階層にはさっきの階段に戻る転移地点が複数あるのだ。そこは先程のように近くまで行けば穴と階段が見えるので解るぞ」
アミュアは真剣に聞いていた。
「後は実はディテクト系で出口を探す魔法があったであろう?あれで方向は解るはずじゃ。ここなら問題なくたどりつくであろう。敵もDクラス程度だしな」
にやっとわらうソリス。
「では修行開始じゃ、階段であおうぞアミュア」
そういうと詠唱もなく魔法が発動しすうっとソリスが消えた。
隠蔽系の魔法を使ったのであろう。
すっと拳をルンに向けるアミュア。
ルンも心得て拳をだした。
コチンと当てながらアミュア。
「がんばるよ、るんだ」
「リョウカイシマシタ」
しゃりっと音を立ててルンが装備をする。
アミュアもロッドを抜き、まずはディテクト系の魔法を詠唱した。
ぱあっと魔力が広がり反応がある。
「うん、あっちだね。いこうるんだ!」
こうしてアミュアの冒険が始まったのであった。




