表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/87

【ソリスの憂鬱:第1話:封印】

ガラガラと途轍もない音が響き渡る。

ソリスの極大魔法で地盤を揺るがした先に、勇者カイランの一撃が入ったのだ。

魔王と呼ばれる黒死竜グラザーヴァスの巨体が地獄の底のような大地に飲み込まれる。

自らを雷のように叩きつけたカイランは青い髪を振り乱し、ソリスを見る。

「ソリス!!今だやれ!」

事前に打ち合わせてあった作戦では有る。

ソリスは納得はしていない。

理解は出来ていた。

それ以外に方法はないと。

すぐ横にセリアの気配。

躊躇するソリスの腕を掴んだ。

「ソリス、もうカイランの強化が切れてしまうわ!!」

カイランにはセリアの強化魔法が最大限入っている。

効果時間を犠牲に威力に極フリした魔法だ。

ソリスも覚悟を決めて詠唱に入る。

ビシュウと音を立てて巨大な魔法陣が立ち上がる。

『おのれ!させるか小僧めどけえ!!』

魔王の咆哮があがり黒い長大な尾が暴れるが、打ち合わせどおりにカイランがさらに最後の一撃を入れる。

ゼロ距離からの極大雷魔法だ。

自らを触媒に使う魔法。

逆立つ青い髪がぱりぱりと放電していく。

「おとなしくお前も一緒に来いよ」

カイランの囁きとともに魔法の発動。

ズバアアアアアアァァァァン!!

一瞬で落雷があり、カイランと魔王が見えなくなる。

反響した音が何重にも響き渡った。

光と音に負けず詠唱を維持するソリスはプリズムのような魔力を放ち、遥か上空まで浮かび上がる。

(すまん‥‥カイラン)

カイランの魔法でさらに地面が崩壊する。

『ググアアアアアア!』

魔王とともに沈むカイランが微笑む。

右手でグッドマークを出すカイランが緑色の魔法陣に包まれほどかれていく。

世界最強の戦士を触媒に封印魔法がついに発動する。

上空から少しづつ大きくなる積層魔法陣が閉じていく。

最後の一つが重なり合い消えると、そこには強固な封印が完成する。

くろがねの外装を持つ巨大な蓋だ。

緑色の複雑な文様を刻まれ、少しづつ今も地面に沈んでいく。

ソリスが魔力切れで落下した。

受け身も取れないその体をセリアが横っ飛びに受け止め魔法発動。

レビテーションを瞬間発動してクッションにしたのだ。

自分の倍はあるソリスの体を受け止めセリアが悲鳴を上げた。

「あうぅぅ!!」

長い三つ編みが絡まり、柔らかい体を感じたソリスは慌てて起き上がった。

「す、すまんセリア助かった」

残り魔力を殆ど封印に回し、通常10人もいて制御を分担する儀式魔法を1人で短時間にこなしたのだ。

ソリス以外には出来るわけもなく、ソリスにとってもかつて無い規模の魔法で脳が焼ききれそうであった。

「う‥うん大丈夫だよ」

そういって赤くなりチラチラとソリスを見るセリアに気づかず、ソリスは封印の状態を確認した。

「よし、封印自体は作動した。後はグラザーヴァスの魔力に拮抗できるかだけだ。

まだ経過観察が必要では有るが、一旦成功といっていいだろう。

そしてソリスが膝を落とす。

(カイラン‥‥)

首を折りうつむくソリスの背に、そっとセリアの小さな手が添えられる。

「ソリス‥‥カイランも望んだことだったわ」

そういうセリアの目は真っ赤で涙が溢れてしまっていた。

振り仰ぎ気づいたソリスが、そっとセリアの背に手を添え返した。

「セリアありがとう。立ち上がらなくてはな。これで終わりではないのだ」

理屈っぽいソリスの声にセリアがうなずくが、心まで前に進むにはしばらく掛かりそうであった。

それは200年にわたる魔王の支配を終わらせて、また人類が歩み始めた日であった。




世界は滅びようとしていた。

魔王たる黒死竜グラザーヴァスは、世界の源にもなる魔力を喰うのだ。

地獄の門をこじ開け神話の悪竜が現世に躍り出たののは200年前と言われている。

世界の魔力が減っていき、星自体の力も弱っていると観測されたのだ。

高度魔法文明の担い手たる人類達によって。

世界の中心とも言われる、世界最大にして最下層にいまだ届かないダンジョンがあった。

その地下深くに魔王グラザーヴァスが居ると確認されたのは10年程前だ。

10年前にはすでに世界の魔力は目に見える形で減り、不具合として明るみに出ていた。

最初に海から生き物の気配が少なくなり、魔王の眷属たるモンスターが海に増えていった。

次に各地のダンジョンを中心に、いままで観測されてない新種のモンスターが増え地上にもあふれていった。

そして各地の魔力研究所や、地脈から魔力を吸い上げ利用する魔導炉も稼働率を下げていった。

ずいぶん前から少しづつ、失われる速度を上げつつ魔力が無くなっていったのだ。

世界中から集められ、莫大な懸賞金が魔王グラザーヴァスに掛けられたが、その姿すら見たものはいなかった。

中心ダンジョンには毎日のように、世界中からあつまった冒険者達が勇者として潜っていった。

現在の到達最下層は74層。

煉獄とよばれる階層で、溶岩の流れる火炎属性であった。

階層はランダムに1~5階層で表情を替えてきた。

たいてい階層の最後にはボスモンスターが居る。

ここまでの事例だと10層置き程度にボスがでる。

それ以外の階層変化は中ボスと言いならわれる弱めのボスだった。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ