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わたしの外伝あつめ  作者: Dizzy
第1章
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【ミーナ学園編:第4話:寮内のルールには表と裏が】

たっぷり外歩きもした二人が部屋に戻ると、たまたま隣の部屋にもどる二人と出くわした。

入室しようとする彼女達に戻ったミーナが出会う形だ。

「こんばんわ、新しく隣に入りました、ミーナ・ヴァルディアと申します。お見知りおきを」

きれいなカーテシーと共に挨拶をしたミーナ。

軽く会釈だけ返ってきたが、言葉はなかった。

視線は自分の後ろだったので、エーラを見たのかな?と気づくミーナは不穏な雰囲気を感じ取った。

固まっているミーナの背を優しく押して、部屋へ戻ろうとするエーラ。

「戻りましょう。ミーナ、少し説明しなくてはいけない寮のルールがまだありました」

にっこり笑うエーラに不審な点はなかったので、思い違いかなと気にしないこととするミーナ。

「はい。ごしどうお願いします!」

にっこり笑顔になるミーナをみると、一瞬沈んだ気持ちも盛り返すエーラであった。





室内にもどり互いに外套を片付けると、並んだ机にエーラが座りミーナを呼ぶ。

「少し細かいルールも話しておくね。一回で覚えなくてもいいよ。私が一緒に動くから」

「うん、ありがとうエーラ」

この一度のお出かけで、大分距離をつめた二人は楽しそうに話を続けるのであった。

(この机の配置も結構いいものですね)

ミーナは真剣に聞きながらも、ならんだ机という初めての配置にちょっと意味を見出した。

(同じ方向を向いて学ぶのは、なんだか新鮮で楽しそう)

今は椅子同士を迎え合わせにして話している。

(こうして向き合うと、間を遮るものが無いのもなんだか嬉しく感じる)

寮の門限や、食事・入浴のルールから始まり、購買で手に入る物・外で購入しなければならないものなど、事細かに親切さが滲む説明であった。

「なので、次は晩ごはんが決まった時間になるわけね」

「なるほど。平日と休日で時間割が違うのが難しいですね」

「そうそう。まぁ私と一緒に動けば大丈夫すぐ覚えるよ」

エーラの声はミーナより少し低く、声量は小さいのだが頼もしく感じるミーナであった。

「後は‥‥一応学園内も寮内も身分は関係なく平等となっているけど‥」

「そうはいっても身分差はある?ということ?」

「そうね。私の家は平民だから、少しそうゆう扱いもあるわ。しかたないのよ」

しかたないの部分にあわせて眉が下がったエーラ。

ミーナも下級貴族の出なので、上の方の御ん方々はどんなものかうっすら解っていた。

家格が2つ違ったら、普通は目も合わせることが少ないのだ。

男爵家から見たら伯爵から上は、国王と変わらない身分と感じられる。

魔導科学文明たる近代に於いても、それは面々と続いている身分制度だった。

ただし、スリックデンは比較的新鋭の都市でよりスマートな気風となっていた。

ミーナは領主たる伯爵家ともそれなりに面識が有ったのだ。

「ありがとうエーラ。言い辛いこと教えてくれて。感謝します」

にっこりミーナに言われると、沈みかけた気持ちが上向くエーラであった。

「うん、私のせいで嫌な思いしたらごめんね‥‥」

おそらく先程の違和感もそこいらなのかな?と察するミーナ。

「お互い様かもよ?気にしないことにしようよ。うちも最下級の男爵家だしね」

実際には騎士伯や準男爵などの身分もあるのだが、一般的に貴族家といわれるのは男爵家からだ。

「ありがとうミーナ。二人で頑張ろうね!」

最後は気合の入るエーラ。

自分のことよりもミーナを守る気持ちで力が湧いてくるのであった。





そうしてまた仲間意識を高めた二人は、食事の時間となり一階へ降りた。

ミーナ達の部屋は2階にあった。

寮の建物は4階建てで、3階から上には魔導エレベーターがあり、2階は比較的身分の低いミーナ達に当てられているのだ。

その時点で平等とは?となる所がうかがえる。

食堂は14人ほどで満席になる、大きな部屋のわりに座席が少ないのだ。

これも明らかに席が決まっている雰囲気がある。

ビッフェ形式で自分の食べたいものを取ってくる形式だった。

ミーナは喜々として肉を避けるのであった。

「エーラは嫌いなものないの?」

なんでも取っていくエーラの迷わぬ手先をみてミーナが尋ねた。

「うん?とくにないかな。ミーナも好き嫌いはダメよ」

「むぐぐ。がんばるます」

少し言葉がみだれつつ、最大限の努力はしてちょびっと肉もとったミーナ。

くすくすとなりながら見守るエーラ。

ふたりは当たり前のように、一番手前のテーブルに掛けた。

出口側が下座といわれる一番身分の低いものが座る席なのだ。

奥の方など一段上がるし、テーブルも大きい。

王様用かな?などとミーナあたりは面白がっていた。

そうして最後に残ったお肉とミーナがにらみ合いをしていると、王様用に向かうひとが見えた。

さり気なく視線を向けたミーナをエーラが注意する。

「ミーナだめよ、奥に行く人をみてはだめ」

それだけで察したミーナが頷くが、耳に入ったのか振り向く豪華な姿。

「あら、見かけないお顔ですわね?」

それだけ告げて、待っている。

ドレス未満普段着以上の綺麗な生地を流し床にふれさせる、アップにまとめた綺麗な金髪。

その青い瞳をみるまでもなく、やんごとなきご令嬢であろう。

名乗れといわれているのだと察したミーナが立ち上がり軽くカーテシー。

「初めまして存じます。ミーナ・ヴァルディアと申しますお見知りおきを」

シーンと場が凍りつく。

エーラも動けず下を向いていた。

「そう。わたくしはレティシア・カタリナ・ヴァレンシュタイン。今日は立礼をゆるして差し上げますわ」

言われた意味が理解できないミーナは、ペコリとお辞儀をして席についた。

レティシアが席についても、一緒に入ったお供風の二人はミーナを睨みつけていた。

消え入るようにエーラの声。

「ミーナ‥‥部屋に戻りましょう」

壇上のレティシアとその間に何組か残っている同級生達は凍りついたまま動かないのであった。

(私の礼儀がおかしかったのかしら?前に伯爵様がお見えの時もあれで良かったのだけど)

ミーナにはいまだ王都とスリックデンの礼儀に対する認識の差が理解できないようであった。

(まあお陰でお肉をのこせました)

このときのミーナは呑気にそんな事を考えていたのだった。




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