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【ユアママ編:第14話:たどり着いた日々】

アイギスがエルナから任務を受け、やる気満々に旅立ってから、早いもので5年が過ぎた。

ユアはみるみる大きくなり、今ではエルナと身長にほぼ差がない。

女性的にはまだエルナに追いつかないが、大人びた体付きは日々の訓練によるものだ。

あれ以来エルナは容赦なくユアを鍛えた。

思ったより早く外に出すことを想定したのだ。

剣術に関してはエルナは非常に優秀な師でもあり、またユアの性格もこの頃には完全に把握していた。

どうすればやる気になるのかお見通しであった。

普通の子供であれば当たり前にありそうな反発も反抗も、ユアにはほとんど見られず、年下の子供たちにも好かれ指導にも当たっていた。

お姉さん気質はそうして育まれ、それゆえの反抗のなさだった。




今日も午前中の訓練をしながら、年下の妹弟達に指導もする。

今は小さい子達がへとへとになったので、休ませながら上の子達にかかり稽古を付けている。

子供達は防具も付けさせ、ユアは木刀一本だ。

「はい、胴ががら空き」

優しく言って手加減した抜き胴を披露する。

打たれても痛くないように防具をつけさせるのだ。

ユアは決して打たれないので防具を付けていなかった。

一渡りこれで全員かかったが、一本どころか呼吸一つ乱れていない。

既に師範代となれる技量であった。

そこに最近では珍しくエルナが現れた。

時々ユアに実地で稽古をつけるのだ。

最近はユアに子供達を任せているので、出番は少ないエルナであった。

師範の登場にユアを先頭にスッと1列に並び挨拶。

「お疲れ様です!師匠!」

道場としている広場では師弟をきちんと守ると教えていた。

「はい、お疲れ様。楽にして良いわよ」

子供達皆もエルナが優しいことをちゃんとわかっていて、挨拶が終わればにこやかに迎える。

「どうしたの?おかあさん」

ユアが最初に話しかけてくる。

「ユアが寂しいんじゃないかと思ってね」

そう言ってウィンクするエルナに木刀をわたし、自分は防具をつけにいった。

ユアもうきうきである。

防具が必要な稽古は久しぶりなのだ。

しっかり胴も頭も護る防具をつけたユアが、他の子から木刀を借りた。

小手も両手に付けるので、かなり熱いのだがユアは涼しげにエルナの近くまで進む。

他の子供達は端によって1列に座り見学だ。

小さい子に上の子が説明したりと微笑ましい姿だった。

「よろしくお願いします!」

元気にユアが礼をすると、合わせて納刀しているエルナも礼をする。

互いに振り向きある程度間合いを取って構えた。

「ユア左足下がりすぎ」

構えにも指導が入る。

他の子供なら見逃すレベルの乱れだが、ユアには厳しいエルナ。

言葉は無く、スッと少し左足を引き寄せる。

攻めっ気が強く出ていたのだ。

「いいわね、始めましょう」

許しが出たのでユアがじりじり左前に動く。

基本の攻め方だ。

エルナはこういった手順にとてもうるさいのだ。

ユアが型に無い動きをすると、手を止めて指導が入る。

最近は試合を止めるほど指導は入らない。

防具の下でニコニコのユアは、エルナに指導されるのが大好きだった。

何しろ本気のユアを負かせるのはエルナとアイギスだけになっていたのだ。



そうしてお昼まで少し指導を受け、ご飯が済めば午後はフリータイムとなるのだ。

ユアはこの時間をほとんどお手伝いに回す。

誰に言われたわけでもなく、手が足りない所を探し手伝うのだ。

小さい頃から村人皆に学んだユアは、本当に何でも出来るようになっていた。

料理や片付けは言うに及ばず、狩猟、農耕、補修全てプロレベルにこなす。

沢山教えてもらって、とても多くの愛情を受けたと、ユアはちゃんと理解していた。

今日は畑の手伝いをして、村に一頭だけの牛を引いていた。

「よしよしおいで、ラヴィこっちだよ」

ユアが10才の年にまだ小柄な若い牛が来たのだ。

牡牛であったので、ユアが一番好きな名前をつけさせてもらった。

エルナから聞いていた父の名前であった。

最初農業を担当するおじさんはフケイだとかオソレオオイとか反対したが、エルナがいいのよと言い決まったのだ。

よしよし頑張ったねと汗を拭いてブラシも入れてあげるユアは牛が大好きで、最後は必ずハグして別れるのだった。




平穏な日々に遂にトラブルの気配が、生まれた。

集会所に大人達が集められ、エルナが議題を上げた。

「残念ながら嗅ぎつけられたようだわ」

厳しい目付きは隊長時代のそれだ。

議題を引継ぎ、カリウスが議事を進めた。

アイギスから手紙で報告が来たのだ。

傭兵団の暗号で書かれたそれは、一見すれば普通の商取引の報告書に見える。

団の秘匿暗号で2つの言葉が、書かれていた。

『ダウスレム』と『シルフェリア』だ。

そこから読み取り最初の議題が出るのであった。

ダウスレムの配下には、東方暗殺ギルドとも繋がりがあるカルヴィリスがいるので、警戒はしていたのだった。

「では、一旦半年単位で疎開しましょう」

エルナはにっこり結論を出した。

最後の決断は現地上位者に責任があり、一番上は今エルナであった。

元々色々な襲撃を想定しており、王都近辺と公都方面にも疎開先を準備していたのだ。

子供達と妊婦を中心に村から出すのだ。

全員で逃げる事は解決にならないので、ここで向かい打ち、倒す腹積もりだ。

「エルナさんもユアちゃんも行くのよ」

年配の女性がエルナを気遣い肩を抱いた。

にっこり頷いたが答えは否定だった。

「ありがとう、でもユアだけよろしく頼むわ。私は戦います、この聖剣にかけて」

エルナの腰にはラドヴィスの形見となったシルヴァリアの聖剣が下がっていた。

村人皆がいい顔をしないのだが、止めることもできなかった。

「最後にこれだけは厳命。影獣の名は決して出さない。私達の世代で終わりにするわよ奴らとの関わりは」

エルナの瞳には赤赤と闘志が燃えていた。

その炎はかつてのラドヴィスに迫る気迫であった。

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