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【ユアママ編:第11話:アイギスのしたいこと】

アイギスは時々村をでて、偵察任務につくのだ。

それは誰かに指示されたものではなく、自ら課した任務だった。

成長の過程でとても世話になったラドヴィスと死別して、同じく世話になりっぱなしのエルナに恩義を強く感じているのであった。

その恩義に報いるのに、最も自分が得意とする分野で貢献したいと願っている。

それは暗殺者の技能も活かせる斥候兵としての自分であった。

二人の娘ユアの育児を手伝っても見たのだが、未だ自分自身が勉強中の身で教育的指導は叶わなかった。

エルナが心配するような仇討ちめいた考えはなかった。

むしろ丁寧に自身の移動経路を隠し、村の存在を消し込んで行くことこそ、斥候の任務と心得ていた。

アイギスに斥候技術を仕込んだ先輩の斥候兵は、戦後間もなく戦傷が原因で亡くなってしまい、指導期間は1年ほどであった。

『俺はもう体がうまく動かない。アイギスよ村を、エルナ隊長をたのんだぞ』

死の間際にアイギスに託した兵の言葉に、かつて結婚式の日にかけられたラドヴィスの言葉を思い出したアイギスであった。

『これからもエルナをたのんだよ』

その日アイギスには理解できなかったが、違和感を感じたのだ。

なぜ自分で守らないのかと。

その後の戦いの中で察することができた。

(ラドヴィスさんは死を予感していたんだ。あの時すでに雷神の力で傷ついていたのだろう)

だからたのんだよとアイギスに伝えたのだ。

そして、あの最後の戦いの後にもう一つ頼まれたのだ。

満身創痍で左手は戦いの中で失われていた。

エルナのお腹に残った右手で触れながら涙を流して。

(うまれてくるこの子に‥伝えてくれ‥ただ『健やかであれ』と)

きれぎれに、最後の力で伝えてくれた言葉であった。

自分で伝えたかった言葉であろうと、当時のアイギスにも理解できた。

ユアがもう少し大きくなって、意味を理解できるようになったなら必ず伝えねばと心に刻んでいた。

だから死ぬことは出来ないともアイギスは肝に銘じていた。

主にアイギスが出先でする事は情報収集であった。

ハンターオフィスや酒場、賭場などの裏表の情報が集まる所に出入りしていたのだ。

それは斥候兵の心得の最初に習う、情報収集と自身の情報の隠蔽だ。

情報を集め、こちらの情報を欺瞞したり隠蔽したりする。

一つ一つ丁寧に、小さな努力を積み上げていた。

村から一番近い街となるルメリナには頻度高く訪れ、ハンターとしての身分を勝ち取っていた。

街に所属することで、自身と村の関係を隠蔽するのだ。

それでいて人間関係は最低限度に絞り、気を配る。

ルメリナでは思いがけず信じられる人間とよしみを得た。

ハンターオフィスのマルタスである。

彼は職員と名乗ったが、身のこなしで戦士だなとすぐ分かった。

何度か高難度の依賴を二人でこなしたりもして、仲良くなったのだ。

当時のルメリナには高ランクのハンターがおらず、ランクCのアイギスが最高ランクであった。

引退したマルタスは高ランクだったとのことで、駆り出されたのだ。

北の海方面から逃げ出してきた地竜の群れが、ルメリナに迫ったのだ。

マルタスとアイギスはバディとして動き、多大な戦果を残した。

スリックデンからも要望が来ていた討伐任務なので、達成後の評価でアイギスはランクアップしBクラスとなった。

マルタスが辞退したこともあり、実績はアイギスに着いたのだ。

その短いが濃密な戦いの旅を通じ、師弟のような関係を築いた。

マルタスは年齢的にも20代後半とアイギスより大分年上だったこともあり、面倒を見てもらった感じであった。

未だ不器用な心をもつアイギスに、マルタスの親心のような優しい指導であった。

「言いたくないなら聞かないがな、困ったことがあったら俺の所に来い」

マルタスは訳知り顔でそういうのであった。

その後少し目立ちすぎたと距離を置いたアイギスは、もう2年程マルタスには会っていなかった。




そんなアイギスの地道な活動が、残念ながら身を結んでしまう。

影獣を見つけたのだ。

「あれは知っているぞ。ダウスレムの手のものだ」

ラドヴィスとシルヴァ傭兵団に伴われ、戦地を移動したアイギスは当時主な相手だったダウスレム配下に詳しかった。

実はダウスレム配下に暗殺ギルドで指導を受けた教員も見つけていた。

カルヴィリスである。

当時アイギス含む6名の指導をしたのはカルヴィリスであった。

まったく変わらぬ容姿の彼女を戦場に見つけ、青ざめ震えたのだ。

その話をするとラドヴィスはあの女も影獣だと断定した。

ラドヴィスは影獣を見抜く技能を持っていた。

東方暗殺ギルドと影獣の関係に、当時の傭兵団は騒然としたのだった。

ルメリナの街で見かけたのはそのカルヴィリスの配下の者だ。

こちらを認識はされなかったが、こんな辺境の街になんの用事なのか気になり探りを入れている。

カルヴィリスの配下はそろって高練度の刺客技能持ちで、探りをいれるのは骨が折れた。

やっと現地協力員の手もあり情報を手に入れた。

協力員から公園で偶然を装い受け渡された資料には、こう書かれてあった。

『ルメリナ北方にシルヴァ傭兵団の痕跡を見つけた』

資料を宿で見ていたアイギスは目をむく。

(まずい、俺では奴らを密かに処分することはできない)

戦場でみた影獣達の戦いは、今のアイギスを持っても対抗するので手一杯。

痕跡を残さず倒すのは困難であり、そんな危険は置かせないと判断した。

(いったん持ち帰り、エルナさんに判断してもらおう。最悪逃げ出さねばならない)

こうして一旦村に戻ることとしたアイギスは、再び丁寧に自分の存在を街から消すのであった。




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