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【ミーナ学園編:第20話:花束】

意外な所から情報提供があり、事件は進捗を見たが、結果何もわからないと結論が出るのであった。

複雑な社会においては往々にして起こる事態だが、当事者が広げたがらないので世には知られない。

カーニャは複雑で、すっきりしない思いを抱えていた。

ミーナやその友達に怪我はあっても犠牲がなかったのでまあよしとも思っていた。

理屈は納得行かないが感情としては終れる状態であった。

最近のカーニャには珍しくない事なのだった。

「すまんなカーニャ、来年の会議では必ず通してみせるよランクアップ」

王都で主にカーニャを担当するオフィスの職員であった。

引退したベテランのハンターで、元はAランクまで行った1人だ。

カーニャが王都でハンター登録した駆け出しのころ、何度か世話にもなった人だった。

「お気になさらないで。わたくしとしては特にあげて欲しくはなくってよ?」

いまだ王都では仮面を付けているカーニャ。

ツーンである。

「まあ、そう言うなよ。こっちも色々あるんだ、わかってるだろ?」

10代の女の子に政治を押し付けるダメな大人達であった。

「ふん、勝手にしたらいいですわ」

それだけ告げて、個室を出ていくカーニャ。

これで今回の事件はハンターカーニャ的には終わったのだった。

姉としては見つけ出してぶちころがすぞ、くらいは考えていたのだが。




談話室には珍しい取り合わせが卓を囲んでいた。

「本当に助かりましたリオネルさま」

フィオナが礼を述べた。

「ありがとうございました」

あわせてセレナも頭を下げるのであった。

こんなに頭を下げた年はなかったなどとも考えながら。

「気にしないでいいよ、レティシアにも頼まれていたしね」

今回の男爵家の暴走はリオネル麾下の調べで発覚したのだ。

合わせてレティシアからも二人に伝えて欲しい気持ちを預かっていた。

「二人共顔を上げて聞いて欲しい」

リオネルは実はレティシアの婚約者であった。

何度か幼少より屋敷を行き来しており、公開してはいないが内々に婚約となっている。

その関係で年も近く、何度か腹を割って話したことも有る3人であった。

無言で顔を上げ見つめる侍女達。

「レティシアは君たち二人が本当に好きなんだよ?」

ピクっと二人の頬が歪む。

もちろん知りつつ避けていたのだ、親密にするのを。

「君らの家にはウチからお願いをさせてもらうよ。どうかレティシアをよろしくと」

貴族家のあいだでよろしくとは言葉どおりの話ではない。

実利を伴うやり取りとなるのである。

「それで今回の()()の婚約者を悲しませた件は終わりにしよう」

そこまでするかとフィオナは察したが、セレナは理解が及んでいない様子。

これは後でしっかり説明しようとフィオナが心に刻む。

「せめて学院にいる間だけでも良いので、あの子の自由にさせてあげられないだろうか?」

ここに話が至るのかとフィオナ辺りは感じ入ったが、セレナはストレートに感激していた。

婚約者の心を慮ったのだと。

実際には家同士の貸し借りの話をしていたのだが、意味としては通るのだ。

確か伯爵家からの借り入れがあったな公爵家にはと。

王弟派閥の公爵家に富が集まるのは、伯爵家にとっても悪い話ではない。

リオネルの善意も、まったくの嘘ではなかった。

……そういうことにしておくほうが、色々と都合がいい。

フィオナは、面倒くささをかみしめながら静かに頷いた。





エーラは昨夜につづき、珍しい来客を向かえていた。

レティシアである。

それも侍女のお供なしで1人で来たのだ。

「突然のお伺いにもかかわらず、お時間ありがとう存じますわエーラ嬢」

びしっと挨拶されて戸惑うエーラ。

「レティシアお嬢様どうかお顔をお上げください。治療中でしてこんな格好で申し訳ございません」

ベッドの上で叶う限り頭をたれたエーラであった。

顔を上げたレティシアは悲しそうな申し訳無さそうな表情に変わる。

「エーラ嬢のお怪我はわたくしの家の下のものが成したと伺いました。わたくしの出来うる限りの謝罪とお詫びをさしあげたく存じます」

改めて深々と頭を下げるレティシア。

エーラは複雑な顔で言葉に詰まる。

言いたいことは先日の手紙で伝えてあった。

ただ事件の件は手紙を書いた後にセレナ達に伝えられたので、誤解がある文面だったかもと後悔していた。

「どうかお顔をあげてくださいレティシアさま。私にはすでに隔意はございません。お嫌でなかったらミーナと同じく扱っていただけたら嬉しく思います」

そういって目線があうとにっこりするのであった。

エーラは昨夜戻ったミーナに返事とともにレティシアと友だちになったと嬉しそうに告げられていた。

そしてとても寂しそうだったのでエーラもゆるしてあげれるのなら仲良くして欲しいと頼まれたのだ。

「ミーナが?」

ああ、もう呼び捨てあってるのか?とちょっとやきもちするエーラ。

「ええ、もしよかったら私のこともエーラと呼んでね」

試しに少し失礼に言ってみた。

「本当ですか?嬉しいです!わたくしのことも良かったらレティとお呼びくださいねエーラ」

ちょっと頬をそめ恥ずかしそうにはにかむレティシアであった。

(これは破壊力まんてんだわ)

そんな不遜を考えつつ、意地悪しないでこちらから聞いてあげようと思うエーラは賢く優しい女の子であった。

「もしイヤじゃなかったら私も友達にしてねレティ」

ちょっとエーラも頬を染めてしまうのだった。

ミーナを超える破壊力の微笑みに。

その時ドアをそっと開けてミーナが入ってくる。

「やったあ~!これで3人でお友達ね!レティ、エーラ!!」

きゅっとレティごと抱きついてくるミーナ。

「はわわ」

「ひゃぅぅ」

二人はミーナのおかげでドキドキになるのだが、ミーナはお構いなく3人を一纏めにするのであった。

まるでかわいらしい花束のように。



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