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わたしの外伝あつめ  作者: Dizzy
第1章
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【ミーナ学園編:第2話:姉妹の夜とはじまりの朝】

買い物を終えた二人が戻ったホテルは、内壁よりに建つ品の良いもので、高級な部類であった。

部屋にはシンプルなテーブルセットがあり、夜ご飯をすませたあと二人はそこで湯気の立つお茶を楽しんでいる。

カーニャはこの時間になると、決まってお気に入りの茶葉を使って湯をわかす。

「とてもいい香り! 姉さま、お茶を入れるのもお上手ですね」

頬をそめ笑みを浮かべるミーナに、カーニャもにっこり笑顔を返した。

「こんなの簡単よ。茶葉がいいものなの、あとで分けてあげるわね」

貴族子女として育てられた二人は、お茶の素養も収めている。

家は男爵家なのだが、寄り子として上位の客を迎えることもあり、幼少よりカーニャは何度か腕前を披露したことも有った。

12才で家を出てからは自分のためにだけに煎れてきたが、最近友人が増えたので振る舞う機会は度々あったのだった。

香りを楽しみながら見回してため息のミーナ。

「それにしても‥すごい豪華なホテルにお部屋です。姉さまはお金持ちなのですね?」

ミーナの常識は実家での金銭感覚なのだが、カーニャはAクラスハンター。

その収入は十分贅沢が許されるものだった。

一般的平民の家庭が1年暮らせる量の金貨が、一度の依頼で支払われるのだ。

ここまでの成功はハンターの中でもほんの一握りであった。

「ふふ、ミーナのために頑張って討伐任務終わらせたからね。今は余裕あるのよ」

にっこりで答えるカーニャであった。

ミーナのために地竜と飛竜があわせて10匹ほど消し飛ばされたのであった。

「いつの日か私も姉さまと一緒に旅がしたいです。もちろんアミュアとも行きたいけど」

ちょっと胸に来るカーニャ。

「もう、嬉しいこと言ってくれるな。ありがとう楽しみにしているわ」

幼いころから体が弱く、命を落としかけた時期もあるミーナ。

それが奇跡によって今に至った。

カーニャの心には二人の友人が自然と浮かぶのであった。

それはあたたかく優しい時間を思い起こさせ、すこしだけ寂しさもおぼえるのであった。

姉の表情の変化を敏感に受け取るミーナ。

最近はアミュアの影響か、他者の心を丁寧に知ろうとするミーナ。

「姉さま、せっかく2つベッドを準備してもらって申し訳ないのですが」

ちょっとほほを染めもじもじするミーナが上目遣いに姉をみる。

「もしよかったら今夜は一緒に寝てはだめですか?寮に入ったらまた姉さまとも会えなくなります」

ミーナ大好きカーニャには妹の気遣いは見抜けなかった。

「もちろんよ!べったりくっついて寝ていいのよ!」

すこし鼻息が荒かったりもしたが、姉が元気になってよかったなと思うミーナであった。




「時々こうしてユアさんと泊まるじゃないですか?ちょっと憧れてました。二人の距離感」

同じベッドで向かい合い、ふれずとも互いの熱を感じる距離で姉妹は過ごす。

「ユアはとても優しく話すのよ、こうしているとき。自然と素直な言葉がでちゃうのよ」

やさしい微笑みを浮かべるカーニャを、とても綺麗だなとミーナは感心する。

少し成長したミーナも同じ顔をしていると本人はあまり気づいていなかった。

「アミュアとも一緒に寝たんですけど。いっつもお話する前に寝ちゃってね」

クスクスとミーナ。

「わかるわ、アミュアちゃんすぐ寝ちゃうよね」

「暗くすると、すうすう一瞬で寝ちゃうの」

「あはっ、ちょっと物足りなかったのね?ミーナは」

「そうなんです。お話したいこといっぱいあるのになって。こうゆう雰囲気じゃないと言えないこと有るじゃないですか」

そうして、抑えた小さな声で話し続ける二人。

思えばこんな姉妹らしい一時もなかったのだなと、カーニャは少し後悔をおぼえる。

「そうだ、姉さまの学校にいってたお話も教えて下さい」

カーニャの表情に敏感なミーナが話題を替える。

今度は気遣いを感じたカーニャが苦笑を漏らしながら話してあげるのだった。

「そうね、寮は基本的に二人部屋なのね。」

そうして夜は更けていく。

あたたかなベッドの幸せを噛み締めながら。




翌日ホテルをチェックアウトした二人は、それぞれの道に進むのであった。

ハンカチもった?忘れ物はない?としばらく行かせてくれない姉に、少しだけ困ったミーナであった。

学園は先日ミーナが見出された噴水公園の横にある。

寮も同じ敷地内に佇み歴史を感じさせる空間を作り出していた。

案内状にあった小さな地図を頼りに、女子寮にたどり着いたミーナ。

手荷物はスーツケース一つにまとめ、腰には昨日プレゼントされたロッドを刺している。

制服はなく私服なのだが、姉のお下がりでそれっぽい上等なローブも着せられていた。

色は白に赤い縁取りのカーニャカラーであった。

事務所で受け付けてから、総務の女史に案内を受け、ミーナの部屋へと案内された。

「ミーナさんは中途編入ですので、二人部屋で空いていたところとなります」

女子寮の上階には上級貴族の子女向けに個室があるそうだが、基本的には二人部屋だとのこと。

ミーナは初めての実家以外の住処となるここに興味津々であった。

今現在25人住んでいて、食事は一階の食堂で学年ごと時間が決まっているとも教わった。

普段なら授業が始まっている時間だとも聞いた。

「こちらですね、今日は休日ですのでまだ同室の子がいると思います」

そういって丁寧なノックをする女史。

「エーラさん、在室ですか?」

間を置かず声が返る。

「は、はい。どうぞお入りください」

すこし震えた小さな声であった。

事前に知らされていたのであろう、準備されたような答えだった。

がちゃりとドアを開ける女史に導かれ入室するミーナ。

部屋はそれなりの大きさで、狭くは感じなかった。

左右の壁際にベッドがあり、正面には窓の前に机が2つ並んでいた。

右側には物が綺麗に整理して置いてある。

左が私のかなと思いつつ挨拶するミーナ。

「初めまして、本日よりお世話になりますミーナ・ヴァルディアと申します。若輩者ですがよろしくお願い致します」

丁寧な挨拶にちょっと驚いた風の女子が答える。

「ご、ご丁寧にありがとうございます。エーラ・マルタと申します。同じ1学年ですのでご遠慮なく」

ミーナより少し背が高く、体のボリュームも大きな女の子をみてミーナの感想。

(アミュアと同じくらいの背かな?少し大人っぽいけど)

質素な部屋着に隠しきれない女性のフォルムを恥じるように、腕で少し隠し背を丸めていた。

あまりグラマラスな自分が好きではないようだ。

「では細かい説明は彼女に聞いて下さい」

それだけのこして部屋を去る総務女史。

「ミーナさんは編入という事で13才なんですよね?私は通常入試で今年入学の15才です。できたら年は気にせず仲良くして欲しいと思います」

すこし落ち着いたのか、話し口も柔らかくなったエーラが自分の椅子に戻り左をしめす。

「そっち側がミーナさんのベッドと机ですね。ベッドの足元側にクローゼットがあるので荷物はそこに整理してください。時々入室検査が行われるので、片付いていないと怒れます」

最後は笑顔になり説明してくれたエーラであった。

肩で切りそろえた柔らかそうな茶髪がサラサラと揺れていた。

「丁寧にありがとう。私のことはミーナと呼んでくださいね。お言葉に甘えてエーラとお呼びしても?」

手荷物をベッドの足元におろし、にっこりミーナも話した。

こうしてミーナの学園生活が始まるのであった。



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