【ミーナ学園編:第11話:冬休みがはじまります】
ミーナ達の学園生活は順当に進んでいった。
あの実技授業での覚醒さわぎは、それなりに賑わいを見せたが荷日の授業は普通に続いていった。
エーラの実演のあとは、器具の故障が判明し「測定不能」という評価になった。
一応ミーナに次ぐ、その日の第2位評定となってはいた。
予備の測定機に速やかに入れ替えられ、その後の実技も行われたのであった。
ミーナも夕方には医務室を開放され、寮に戻りくつろげた。
二人の隠されていた実力についても、やんわりと察していたものも多く、それほどの騒ぎにはならなかった。
特に教師陣内では入試の成績も共有されていたので、やっとかと思われてもいた。
結果第1年生の首席はレティシアで変わらず、ミーナとエーラが次席となっていた。
そうして季節は進み冬になり、王都でも時々小雪が見られるようになる。
下がった気温は人々の距離を少しだけ縮めるのであった。
「エーラは年末のお休みどうするの?一月もあるんだよね?」
時間割通りに朝の部屋掃除中である。
ちょっと厚着になったミーナはもこもこしてかわいい。
箒を片手に掃き掃除しながら尋ねたミーナであった。
「うん、実家に帰るよ。おとうさんうるさいのよね、手紙がいっぱい来てた」
ちょっとうんざり顔のエーラ。
にこっとなるミーナ。
「そっか、エーラ美人だからおとうさんも心配よね。気を付けて行ってらっしゃい」
「ええ?!べつに美人じゃないよぅ。ミーナがそうゆうの嫌味にも聞こえちゃうから気をつけるように!」
「ん?私も実家に帰るんだ。うちはスリックデンだから北に帰るの。エーラとは丁度反対だね。ポルト・フィラントだったよね?」
ミーナには自身の容姿に全く自覚がなかった。
なにしろ回りが美形揃いで、ユアですらスタイル抜群なのだ。
「行ったこと無いの海。見てみたいなあ」
とは、ぽわっと憧れの表情でミーナ。
「前にアルシェラ湖で泳いだこと有るんだけど。海はもっとずっと大きいってきいたよ。いってみたいな」
「アルシェラ湖か、たしかに大きいけど海は別格だよ。いつか遊びに来て!案内するわ」
「やったー!たのしみだな♪夏休みとか良いかな??」
そうしてなかなか掃除が終わらずに過ごした二人であった。
魔法学院には長期休暇が3回ある。
夏休みは長く2ヶ月近くあるのだ。
これは王都の異常な気温を鑑みたものでもある。
近年魔道具の普及で、富裕層を中心に室温のコントールをするようになった。
おかげで王都の壁の内外に排熱で気温上昇の事態をみるのだ。
冬休みは年末年始を跨ぎ1ヶ月程ある。
遠方から学びに来ているものも多いため、帰省を促すためだ。
最後は春先の学年末にある。
次年度の試験準備や、そのたもろもろ学園側の事情によるところが多い。
冬より少し短く半月ほどの休暇となる。
そしてミーナはカーニャと合流し、実家のあるスリックデンまで汽車に乗るのであった。
「姉さま!アミュアから手紙が来てたのです!」
じゃじゃーんと言う感じで封書を両手で出すミーナ。
もう嬉しくて、テンションがおかしくなっているのだ。
「はいはい。スリックデンに寄ってくれるって?」
カーニャもユアから手紙を貰っているので、実は事情は解っている。
「そうなの!アミュアに会えるわ!うれしいです」
満面の笑みで手紙を胸に抱きしめるミーナ。
手紙が折れたりしないか心配になるカーニャであった。
「あっちは4人で来るだろうから、突然賑やかになるわねウチ。おかあさまはそうゆうの好きだから良いけど、おとうさまはちょっと苦手なのよね、さわがしいの」
「そうですね。自重します!」
ペロっと舌を出すミーナは自重しても大変な騒ぎだろうなとカーニャは微笑むのであった。
「ミーナ!!」「アミュア!!」
ひしっと抱き合う二人。
すでに恒例の行事だなとカーニャやユアあたりは思うのであった。
「おかえりカーニャ。つかれたでしょ?馬車持ってきてるから乗せていくよ家まで」
そういいながら別に重くはない手荷物を持ってくれるユア。
抱き合うため落としたミーナの荷物共々後部の荷室にしまうユア。
「出迎えありがとう。忙しくなかったの?今」
にっこりのユア。
「忙しくなかったけど、そんなの関係ないよ。あたしも会いたかったカーニャ達に」
話しながら先に入ったミーナ達につづき二人で客車に入る。
「こんにちわ」
「おかえりなさいカーニャ、ミーナちゃん」
運転席にはノアとラウマが座る。
二人共金銀の長い髪を三つ編みにして背に垂らしていた。
ノアの銀髪はアミュアよりも大分暗い色だ。
アミュアはゆわずに背にながしているが、3人の容姿は鏡写しのようにピタリとおなじになる。
あの事件の後、マルタスの進めもありハンターとなった二人は、ユア・アミュアと4人パーティとして活動している。
二人のランクはDだが、パーティランクはCであった。
ラウマとノアはアミュアの親戚で通している。
わいわいと前方窓も通して6人の姦しさが流れて、スリックデンを賑わす一助となるのであった。
馬車から降りて実家でも、いつものようにべったりで過ごしたミーナ。
ユア達は微笑ましそうに見守るのであった。
お風呂まで一緒に入るミーナとアミュア。
「ねえアミュアはいつまで居られるの?お仕事いそがしいの?」
すっかり話し方まで元通りである。
「仕事は緊急のがはいらなければへいきです。ユアが皆でまた旅行に行こうといってましたよ」
「わぁうれしい!行きたいです」
「夜霧に二人騎乗すれば、おとうさまとおかあさまもご一緒できるかなと話してました」
胸の前に手を組むミーナが固まった。
感動したのである。
「ありがとう‥そんなの初めてだわ家族で旅行なんて。うれしい」
ちょっと涙ぐむミーナの頭をよしよししてあげるアミュアであった。
ぎゅっとアミュアに抱きつくミーナ。
ん?ミーナまた成長したな?とアミュアは一部分の圧力から察するのであった。
こうして久しぶりにアミュア成分を補給したミーナはつやつやで朝を迎えるのであった。