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八十話 放課後デート

ノアは、人目につかないように校舎の裏側に飛び降りた。

「ここなら誰もいないよね」


とバレないように気をつけながら校舎の中へと入った。

「ここに戻ってくるのは思ってたより早くなったなぁ」


本来隣国の獣人国家ガリアスまで協力を仰ぎに行くつもりだったが状況が状況のため一時帰還となったわけだ。


幸いなことに、エリン王国としての手紙は無事に届いていたようで、『前向きに検討する』との返事に返ってきていた。


「教室は確かこっちに言った先にあったはず」


正直あまり授業は受けていないので場所が少し朧げにしか覚えれていなかった。


二年生の教室には一度しか行ったことがないわけだし仕方がない気もしなくはない。


そう自分に言い聞かせ迷っている事実から目を背けた。

ここどこ?裏から入ったことなんてないし迷ったんだけど⋯

ウロウロウロウロしているうちに気がつけば帰り道すらわからず、途方に暮れていると


「おや、ノアがどうしてここに?」


振り返るとそこには


「ゼクノさん。お久しぶりです」


そこにいたのは、生徒会の庶務のゼクノだった。


「ああ、長期任務と聞いていたが何かあったのかい?」


「まあ、急ぎの報告を済ませたあとですかね」


と要点を隠しながら話した。


「そうか。ところで道に迷っているように見えたのだ」


そうだった二年生の教室に行きたかったんだった。


「あの二年生の教室ってどこですかね?場所の記憶が朧げで⋯」


「それなら、ここと正反対の方向だ。この先には図書館しかないな」


とノアの背中方向を指差した。


「え?本当ですか」

「本当だ」

いつの間にか方向音痴になっていたようだ。

正直動揺が隠せない。

「あ、ありがとうございます。そ、それではー!」

ノアは急いで逃げるように走り去っていった。


「廊下を走るの校則違反だぞー」


「はい!すみませんー!」

急いで角を曲がった。


まあ、それからは無事に教室に着くことができた。


「何のために飛んで来たのかがもうわからない」


本当にその通りである歩いて表から入ったほうが早かっただろう。


ガラっと音を立てて教室のドアを開けるとそこにはフィリシアがいた。


「どうしてノア様がここに?」


随分と驚いているように見える。

元々半年は戻れない予定だったからだろう。

「ちょっとどうしても報告しなくちゃけないことがあって帰ってきたんだ」

「そうですか。次はいつ頃立つのですか?」

「いや、調査は終わったよ。必要な情報はもう手に入れたから」

魔王復活と言う嫌な事実を

「なら毎日会えるようになるのですか!」


「うん。しばらくはこっちにいると思う」


領主の件はしばらく後のことのようだし、勇者召喚の件も準備に時間が掛かるとのことだった。

フィリシアは嬉しそうに微笑んだあと

「今日は一緒に帰っていただけませんか?」

とノアの手をつかみじっと見つめてきた。

「いいよ。今日は特に何もないしね。あ!そうだ。これお土産」

とずっと渡すつもりだった花のヘアピンを手渡した。

「うれしいです。ありがとうございます!」

フィリシアは早速ヘアピンをつけて

「どうでしょうか?似合ってますか?」

「とても似合ってるよ」

そう言った後上機嫌になったのか

「ノア様さあ、帰りましょう!」

とノアは手を引かれて教室を出た。

なんか悪いことをしている気分になるなぁ。

レファも似たような反応をしていたし⋯

まあ、レファには誕生日プレゼントとして、フィリシアには婚約者からの贈り物として受け取っていてもらおう。

一方教室の後ろの方から凄い嫉妬心をだしている生徒がいた。

ネプンだ。

「平民あたりのくせに生意気な。そもそも、おかしいだろ。この俺が贈り物をしたときにはあそこまで喜んでいなかったじゃないか。くっそ、あいつさえいなければ⋯」

と歯ぎしりを立てながら苛立ちを収めていた。

「そうだ。父上にあれを頼もう」

ノアに新たなる魔の手が忍び寄り始めていた。



─────────────────────




ノアは連れられるがまま校門の外へと出た。

「帰るって歩いて帰るつもりなの!?」

「そうです!ちょっとしたデートをしてください」

「でも何かあったら⋯」

何かあったら王様に顔が上がらない。

「街の見学も王族の義務です。それに何があってもノア様が守ってくれるのでしょう?」

と甘えるような口調で言った。

「わかったよ⋯せめて幻影魔法だけかけさせてね」

「分かりました」

二人は人目がつかない場所へと行き幻影魔法をかけた。

「これで大丈夫」

「何も変わっているように見えないのですが⋯」

「それは自分だけかな。こっちから見たら普通の服に見えるよ」

ノアから見た今のフィリシアの服装は街娘の服装と言った感じだ。

「確かにノア様の服装が違って見えます」

「それは自分の私服をイメージしただけかな。準備もできたことだし行こっか」

とノアは手を伸ばしフィリシアを人気のない路地から賑やかな大通りへ連れ出した。

「相変わらず市場は賑わってるなぁ」

そこには様々な店が並んでいた。色々な人が商品を売り込もうと声を張り上げている。

「初めて見ました」

フィリシアは胸に手を当て圧巻されていた。

元々箱入り娘だったフィリシアは街の事をほとんど知らなかった。ただ馬車から見下ろしていただけだった。

もとを辿ればこれはノア様のお陰で見れた景色ですね。

思い返せば、彼女の人生は一人の少年によってガラリと変化させられた。フィリシアはノアの事を聞いた時、物語の英雄かのように感じた。そして、刺激された。

そして彼女は勇気を振り絞って会いに行くことにした。

けれどその日乗っていた馬車は盗賊に襲われてしまった。死ぬことも覚悟もした。

けれど、彼女は少年とその仲間に助けられた。

彼とその仲間は危険を顧みず助けてくれた。

その後ろ姿は本物の英雄だった。

それがノアだと知った時は歓喜した。

英雄に会えたと。そして、気持ちは大きく動いた。

一目惚れだった。彼が私を箱入り娘(フィリシア)を引き上げてくれた事実は変わらない。

私は彼と添い遂げるのだと心に決めている。

今も彼は私を一人の少女として接してくれる。

そんな優しく温かい彼が好きなのだ。

「フィリシアどうかしたの?」

「いえ、何でもありません」

この気持ちはいつか直接伝えることにしましょう。

そう心に誓いフィリシアはノアの後を追った。

「フィリシアは何か見たいものとかはある?見学なわけだし」

「特にはないですかね。強いて言うならアクセサリーでしょうか?」

「ならそこにあるみたい。行ってみよう」

そこには様々な種類のアクセサリーが並んでいた。

「いらっしゃい。カップルさんかい?」

と店頭の人に言われた。

「まあ、似たようなものです」

「ならゆっくり見ていってくれ。似合うものがあるといいな」

それから、二人は一緒にアクセサリーを見ていた。

「こんなのもあるんだ」

「こっちのも可愛らしいです。このネックレスもいいですね。店員さんこれはいくらですか?」

ときれいな銀色をしたネックレスを指を指しながら言った。

「銀貨五枚だよ」

「じゃあこれでお願いします!」

と小金貨を手渡すフィリシア。

「小金貨ね。お釣りの銀貨五枚だ。もう持っていっていいぜ」

とネックレスをフィリシアに手渡す店頭さん。

「じゃあこれをノア様に」

「え、いいの?」

「もちろんです。この国には贈り物をした相手にその日のうちに贈り物をすると幸せになれると言う話があるのです。ですからぜひ受け取ってください!」

ノアはネックレスを受け取った。

「ありがとう!うれしいよ」

「喜んでもらえてよかったです!」

それを見た店頭さんは

「青春してるねぇ」とつぶやいて二人が顔を真っ赤にした。

そんなこともありながらも二人は一緒に王城へと向かうのだった。




ちょっと良からぬ気配を感じますが、二人が幸せそうでよかったです。

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