六話 頼れるものには頼ろう
「まさか、頼る日が来ちゃうなんてな」
「ノアは人に頼るの嫌なの?」
とレファが聞いてきた。
「あんまり人に恩を着せておくのは少し嫌なんだ」
前世では周りからよく頼られていろんな人に恩を着せてしまった。
「恩は悪いものじゃないっていうのはわかってる。でも、相手に気を使わせるのは嫌かな」
「ノアは優しい人⋯だからみんなお礼がしたいんだと思うよ」
とレファは俺を励ました。
でも、仕方がない時もある。だから、ここに来たんだ。
と決意を固めてギルドに入った。
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ギルドは冒険者達で賑わっていた。
「あら、今日はどのようなご用事ですか?」
と受付嬢の人が言った。
「ギルマスのグレイさんに会いたいのですが」
「約束はあるの?」
「いえ、ありません」
「じゃあ、無理ね。ごめんなさいね」
と言われてしまった。
まあ、仕方がない。
こっちでは十五歳だし、こんな子供がグレイさんの知り合いだとは思わないだろう。
「えっとなら、ギルマスにノアが来たとだけ伝えてもらえますか?」
「それぐらいなら⋯いいわよ。伝えておくわ。ちなみに身分証明できるものはある?」
「ギルドカードでいいよね。はい」
とギルドカードを見せた。
「Bランク!?この年で?」
年かなり驚いていた。
(みんなはSランクなんだけどな)
元パーティーメンバーたちを思い出した。
「まあ、身分は証明できたわ。これからも縁がありそうだし。私はマリアよ。よろしくね。困ったことがあったら頼ってくれていいわよ」
と自己紹介をしてくれた。
「ありがとうございますマリアさん」
「仕事だから気にしないでね」
「ところでその子は?」
とレファのことを言った。
(やっぱりごまかしきれないか)
「この子は俺の知り合いの子(という設定)です」
「へえ、大変そうね?」
「知り合いが出てる間預かってるって感じですかね」
とハハハと笑って誤魔化した。
なんとか納得してくれたようで
「まあ、一人は危険だから気をつけてね。ちょっと混んできたわね」
とノアの後ろを見た。
「じゃあ、俺はこれで帰りますね」
「ちゃんと伝言伝えておくから安心してね」
「はい。ありがとうございます」
と言ってギルドを出た。