五十九話 初陣
食事を終え、全てアイテムボックスに収納したあと、ボス部屋の前にやってきた。
「ミリスとあった時の扉と同じくらいかな?」
大きな黒い扉は十メートル強の大きさで、本当に開けるのか怪しくなるレベルだ。
「ここまで大きいのは、前のパーティーにいた時にSランクダンジョンに言った時依頼だ」
てっきり、強さが関係してると思ったんだけど、違うかったんだ。
「そんなことはいいから早く行こう!」
とまた、襟をつかまれ引きずられている。
「ちょ、ちょっと待って。『状態の権能』」
すると、レファは様々な色に輝き始めた。
「別に大丈夫だよ?」
「まあ、年のためにね」
とノアはウィンクした。
(修行のおかげで、一部の力なら、行使することができるようになったんだよね)
本来の十分の一程度の力しか出すことはできないが、それでも十分なくらいだ。
ノアは名も顔も知らない師匠のことを思い出した。
(結局最後まで、名前すら教えてくれなかった。唯一知っているのは俺と同じ透き通った蒼の瞳だけ)
ノアは今は亡き、師匠の冥福を願った。
「じゃあ、行こっか」
と巨大な扉を開け放った。
すると強風が吹いてきて、二人の白色と黄金色の髪を揺らした。
そして、部屋の中心に鎮座しているのは
「サイコロプスか。強そうだなぁ」
本でしか見たことがないけれど、Bランクの魔物だったはず。にしては大きいよな?
サイコロプスははや、十五メートルほどの大きさだった。
「少し、鑑定してみるか」
ノアは鑑定を使用し、そこに移されていたのは
「ジャイアントサイコロプス?特殊個体かな」
と顎に手を当てて考えていると
「そろそろ、いっていい?」
と催促が来てしまった。
「そうだね、行っていいよ」
そう言った途端、レファはサイコロプスの方へと突撃していった。
「俺もこれ試したいしね」
その手に握られているのは、この世で唯一の拳銃『ルミナス』だった。
「うーん、やっぱり最初は威力低めにしておこうかな」
そうして、装備していたポシェットから、水色の弾丸を装填した。
ノアはサイコロプスの足元に狙いを定めた。
(レファに当たらないように注意して)
パァーン
と何発かの銃声が響いたあとにその弾は見事にサイコロプスに命中し、足を氷漬けにした。
「やった!成功した!」
発動した魔法は『アイスエッジ』ノアが約一年の間に覚えた魔法の一つだ。
この発明が意味するものはノアが想像しているよりも、大変なもののためこの国の宰相は頭を痛めることになった。
ちなみに戦闘の結果は一方的なものとなった。
動けなくなったサイコロプスが、レファの攻撃を避けられるわけがなく、全ての攻撃をもろに喰らい討伐された。
そして、現れる宝箱。
なんか、ごめんよ。サイコロプス⋯
悪気はなかったんだ、どうか無事に成仏してください。
とノアは手を合わせた。
「ノア、ノア!宝箱だよ!開けていい?」
と無邪気に近寄ってくるレファ。
レファは相変わらず可愛い。
これは誰にも否定させないぞ。おっと、雑念が
「レファが倒したし、開けておいで」
「わーい!」
レファは宝箱の方へと駆けていった。
『アイスエッジ』
本来は詠唱が長い上級魔法。
それを連発するって⋯鳥肌ものです。
サイコロプス。ご愁傷様です。




