五話 過ぎた恩義
二人はとある場所を目指して街を歩いていた。
「ねえ、どこに向かってるの?」
「それはギルドだな。そこのギルマスとちょっと縁があって」
昔、依頼とは別にギルマスと知らずに助けてあげたらめちゃくちゃ感謝されてそれから仲良くなったんだよな⋯
確かあの頃は
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
あの頃はまだみんな駆け出しだった。
「おい、みんなこの依頼なんてどうだ!」
「ロウッドはしゃぎすぎじゃない?」
とリーラとロウッドが話していた。
一方で当時十歳だった俺とサーシャは二人で外で待っていた。
「ねぇノア?」
「どうしたのサーシャ姉さん」
この頃はサーシャは俺が似たような境遇だったからなのか弟のように接してくれていたし、こっちでの家族がいない俺もそれが嬉しくてたまらなかった。
十二歳ぐらいの時にやめちゃったけどね。
「この街での初依頼終わったら一緒に買い物にいかない?」
「いいよ。でも、どうして?」
「食材がほしいからついてきてほしいの。恥ずかしいことにノアに料理は任せっきりだから」
と少し情けなさそうに言った。
「いやいや、いつも怪我直してもらってるしこれぐらいさせてよ」
「そう言ってほんとは自分でも回復でくるくせに」
とちょっとした雑談をして待っていると二人は戻ってきた。
「これなんてどうだ!」
「なになに、森の魔獣の討伐。ふむふむ、私はいいと思うよ。ノアは?」
「俺もいいと思う」
「なら決定だな」
この頃のロウッドは別人のような性格をしていた。
今では考えられない。
今のあいつは堕ちてしまったと思う。
金に目がくらんでいるように見える。
それに比べてこの頃は正義心も強くて心強いリーダーだった。
そうして、俺たちは森に向かった。
「ちょっとこんなの聞いてないんだけど!」
「まさか、猪の魔獣だとはな」
「俺が足止めするよ」
「ノア無理すんな」
「大丈夫。『パラライズ』」
パラライズは状態異常魔法の一つだ。
効果は相手を麻痺させることだけだけど、時間を作るには十分だった。
「動けないみたいだぞ」
「倒しておきましょうよ」
と二人が攻撃を始めた。
『オーラブレイド』
『ファイヤーランス』
そうして、攻撃をもろに食らった魔獣はそのまま倒れた。
「おーしゃー、やっぱり行けたじゃん」
「言ったとおりだったわ」
と二人は飛んで喜んでいた。
「じゃあ、俺が運ぶけどいい?」
もちろん、反対の声は上がらない。
『アイテムボックス』
と魔獣の死体は魔法陣の中に吸い込まれていった。
「それ本当に便利ですよね」
「俺のはちょっと特殊だけどね」
回収も終わったことだし、俺たちはギルドで達成報酬をもらうことにした。
「なにか証明できるものはありますか?」
「ちょっと待ってくださいね」
とかけていたバックの中を漁った。
俺はアイテムボックスから出せばいいと思ったのだが、俺の身を案じてか、サーシャにあまり人目があるところでは使っちゃダメと俺に言いつけた。
「角でいいですか?」
「はい、大丈夫です。確認できました依頼達成です」
そうして、報酬をもらったあと、みんなはそれぞれしたいことをしていた。
「ねぇ、ノア?これ何?」
「これは調味料ですよ~。あったほうがいいです」
「そうなんだ。知らないことだらけだな〜」
とそのうちに会計をしまし、宿に戻ろうとしていた時、路地裏で倒れている細身の男の人を見つけた。
「大丈夫ですか?」
「み⋯」
「み?」
「水⋯」
「わかりました。これ水です!」
そするとその男人は勢いよく水を飲みだした。
「ぷはぁ〜、助かったありがとう」
「いえいえ」
「是非お礼がしたい、名前を聞いてもいいかな?」
「ノアです。で後ろにいるのが仲間のサーシャです」
「そうか、おっと名乗っていなかったな、私はこの街のギルマスのグレイだ」
「ギルマスさんだったの!?」
まさか、ギルマスが路地裏で倒れてるとは⋯
「ところでどうしてこんなところで」
と恐る恐る聞いてみた。
「それは⋯働きすぎて昼食を食べる前に力尽きただけだ」
この人ワーカーホリックかよ。
「そ、それは大変でしたね」
これは流石に苦笑いするしかなかった。
「で、お礼の件なんだが」
「なら、困ったときにくるのでそのときにお願いします」
「わかった。神誓おう。ノアくんが困ったときに私は君を助けよう」




