セレナの能力亜里沙の能力
冒険者たちは瘴気対策をしながら続々と城周辺に集結していた。さっきまでは「今助けるぞ!」「大丈夫だ、耐えてくれ!」と亜里沙に声をかけていた者たちも、亜里沙が敵と判断したのか、態度を豹変させた。
「吸血鬼の仲間め!」「ギルドの裏切り者が!」罵声が飛び交い、剣を構えて距離を詰めてくる。
亜里沙は苦笑しながら肩をすくめた。「あそこまで態度変える必要ある?さっきまで味方感出してたのに、一気に敵扱い…まあ、別にいいけどさ。」
そんな状況を目にしていたセレナがくすくすと笑い、手をひらひら振ってみせた。「私は後方でちょっと仕掛けるから、頑張って戦ってね。」
そう言うなり、セレナは闇に溶け込むように姿を消した。そして次の瞬間、無数のコウモリが湧き出すように召喚され、冒険者たちに襲いかかっていく。
(少しでも血を集めておかなきゃ…これで一気に仕留める!)
コウモリたちは冒険者たちに噛みつき、集めた血をセレナのもとへと届けていく。「ありがとうね、コウモリたち。」
セレナは両手に血を集めると、不気味な笑みを浮かべながら片手ずつ冒険者たちに向かって血の塊を放った。
「なんだ、今度は氷の矢か!」血の塊は空中で氷へと変わり、冒険者たちを正確に射抜いていく。その攻撃に対応できない冒険者たちは次々と倒れていった。
「さっきは炎で、今度は氷だと?くそ、対策できてないぞ!」
焦る冒険者が距離を取ろうと後退した瞬間、足元で血が鈍く光る。
「踏んだか?」セレナの低い声が響くと同時に、血溜まりが爆発を起こし、冒険者たちを巻き込んで吹き飛ばした。
「なんだあの化け物!こんなの戦えるか…一旦引くしかない!」と、一人の冒険者が背を向けて逃げようとしたその時、セレナが闇から現れた。
「お兄さん、遊びはこれからだよ。」
振り向いた冒険者の首筋に、セレナの牙が深々と突き刺さる。「たまには吸血鬼らしいこともしないとね。」セレナは血を吸い尽くし、再び闇に溶けるように姿を消した。
そんな中、別の冒険者たちが血溜まりを見つめ、ささやき始める。「吸血鬼の血を飲めば、吸血鬼になれるんじゃなかった?」
「じゃあ、この血を飲めば俺たちも強くなれるかもしれない…!」
意を決した冒険者たちは血をすくい、震える手で飲み始める。
「まずいけど…これで私たちも吸血鬼に…」
その瞬間、セレナが不気味な笑みを浮かべながら姿を現した。「あらあら、何してるの?」
冒険者たちは憎々しげに答える。「これでお前なんか怖くない。俺たちも吸血鬼になって、お前を倒すんだ!」
しかし、セレナは楽しげに首を傾げる。「あ〜、飲んじゃったの?残念だけどね、吸血鬼になるには私の許可がいるの。」
彼女が目を光らせた次の瞬間、血を飲んだ冒険者たちは内側から爆発し、断末魔を上げながら散っていく。
「勝手に人の血を飲まないでくれる?まあ、手間が省けたけど。」
セレナは冷たく言い放ち、闇の中へと消えた。そして心の中でつぶやく。(それより…あの子、大丈夫かな?)
その頃、亜里沙はガチャを見つめながら頭を悩ませていた。
(10連か20連か、それとも新登場のモード限定ガチャにするか…そもそもモードって何?変身かな?でもデメリットがログイン時間を消費することって…まあいいや、ロマンあるし試してみよう!)
意を決してモード限定ガチャのレバーを引く。すると画面に「ゴッドレア:シューティングモード」と表示される。
「シューティングモード…?なんだろうこれ?」
クロノスリングが光を放ち、亜里沙を包み込む。その光が収まると、彼女の姿は戦闘機へと変わり、デバイスは操縦桿に姿を変えていた。
「うわっ、すごい! 本当にシューティングゲームみたい!」
亜里沙は興奮しながら状況を確認する。「武器は……あ、ショットだけか。えっと、敵を倒せばパワーアップするやつだよね、きっと!」
周囲にいる冒険者たちは、戦闘機に変貌した亜里沙を前に呆然としていたが、その隙を見逃す亜里沙ではなかった。操縦桿を握り、目の前の冒険者たちにショットを浴びせる。
「なんだこいつは!? 吸血鬼だけじゃなく、戦闘機まで襲ってくるのか!」
冒険者たちは混乱しながらも抵抗を試みるが、亜里沙はショットで次々と彼らを倒していく。そして倒した冒険者から現れたパワーアップアイテムを拾うたびに、亜里沙の戦闘機は着実に進化していった。
「おお! ミサイルが追加された! 本当にゲームみたいに強くなってる!ターン制もなくなってゲームシステムも変わってるよ!」
興奮を抑えきれない亜里沙はさらに冒険者たちを追い詰め、ミサイルとショットを巧みに使い分けながら攻撃する。スピードも上がり、まるで逃げ道を与えないように冒険者たちを圧倒する。
その頃、セレナも血を集めながら周囲を見渡していた。城周辺で逃げ惑う冒険者たちの姿を確認すると、亜里沙の戦闘機を見てにやりと笑う。
「楽しそうなことしてるね、あの子も。」
セレナはコウモリを召喚しながら冒険者たちを追い詰めていくが、突如として眩い光線が飛んできた。それを軽やかに避け、セレナはその方向を見据える。そこには光の魔法使いが立っていた。
「吸血鬼風情が、光には勝てるわけがないだろう!」
光魔法使いは次々と光の球を放ち、セレナを撃ち抜こうとする。しかし、セレナは笑みを浮かべながら、その中の一発をわざと受けてみせた。
「ふふ……吸血鬼だからって、必ずしも光が弱点ってわけじゃないんだよ?」
そう言い放つと、闇に紛れて素早く魔法使いの背後に回り込む。そして流れた血を魔法使いにかけ、その体を首から下まで凍らせた。
「残念でしたね。」
ニヤリと笑うセレナは、凍った魔法使いの首筋に噛みつき、血を吸い尽くす。
一方、その頃亜里沙はレーザーを発射できるようになり、さらにバリアが発生していた。冒険者たちは数を減らし、ついには逃げ帰る者も現れる。
「ひとまず片付いた、かな?」亜里沙は操縦桿を握ったまま、周囲を見渡した。
城周辺には、すでに逃げ遅れた冒険者がわずかに残るだけだった――。
残された冒険者たちは一箇所に集まり、剣士が声を張り上げた。「このままバラバラに戦っても勝ち目はない!残った者同士でパーティを組んで、あの二体を倒すぞ!」
その号令に応じて、魔法使いが剣士と武道家に全耐性アップ、防御力アップなどの補助魔法をかける。剣士たちも攻撃力を上げるスキルを使い、ガンマンは命中率を上げる準備を整えた。いつしか、4人でパーティが結成されていた。
その様子を遠くから見守っている者たちがいた。「ほう…あれがこの世界を一瞬で救った吸血鬼と、最近ウラヌスから情報が流れてきた高村亜里沙か。そんでもって、離れた場所で見守っているだけの捕食者ってわけね。」
「ギルドの連中は分が悪いな。まあ、あんなレベルの低い連中じゃ情報不足も仕方ないか。」
「ギルドの連中に紛れ込んで奇襲でもしようかと考えたけど…弱すぎて話にならないね。」一人が肩をすくめ、もう一人は薄く笑う。「まあ世界レベルが変わったってことで、ご愁傷様ってところかな。力なき者たちには消えてもらおうか。」
「それもそうね。じゃあ私たちは隊長に報告しに戻りましょうか?」
「いや、先にお前たちだけ報告しておけ。俺はここに残る。」
二人は少し驚いた表情を見せたが、了承して姿を消す。「わかった。でも危なくなったらすぐ戻ってきてよ?」
「言われなくてもわかってる。ちょっと英雄たちの強さを確かめたいだけだ。」黒い鎧の男はそう言い残すと、冒険者たちのパーティに合流した。
その様子を見ていた亜里沙は、不安そうにセレナに話しかける。「セレナ?なんか5人がパーティを組んだみたいだけど、大丈夫かな?」
しかしセレナはキョトンとした顔で答える。「え?数十人倒したのに、たった5人にビビってるの?大丈夫だって。血はたっぷりあるし、ここは闇の世界だよ。」
「うーん、そうなんだけど…さっきまでの4人はそうでもなさそうだけど、遅れて合流してきたあの人が気になるんだよね。雰囲気が違うし。」
亜里沙の警戒をよそに、4人の冒険者が一気に接近してきた。しかしその直後、亜里沙の極太にまで成長したレーザーとミサイルの一斉攻撃によって、彼らは一瞬で全滅してしまう。
「ね?何の問題もないでしょ?」とセレナは笑う。
「そうだけど…呆気ないね。パワーアップしすぎたかな?」と、亜里沙は自分の強さに驚きつつも首をかしげた。
その勝利ムードに割って入るように、黒い鎧の男が低い声で言った。「確かにお前たちは強い。でもな、あいつらが弱すぎただけだ。ルーキーレベルだからな。調子に乗るなよ。」
そう言いながら、背中に背負った巨大な斬艦刀をゆっくりと抜く。「戦闘機か…面倒だな。よし、こっちを使うか。」
男は圧倒的な速度で亜里沙に接近し、一瞬で鋭い斬撃を繰り出した。そのまま元の場所に戻ったが、その間に戦闘機のバリアごと斬られていたことに亜里沙は気づく。「えっ?今の何?ダメージはなかったけど…何が起きたの?」と動揺する亜里沙。戦闘機のシステムを確認すると、バリアが消失し、初期の状態に戻っていた。
「あーあ、一機失った…。ガッカリ。」しょんぼりする亜里沙を横目に、黒い鎧の男も内心困惑していた。(確かに斬ったはずなのに、手ごたえがなかった…あの女、一体何者だ?)
男は斬艦刀をしまい、代わりに腰に差していた別の刀を抜いた。そのとき、亜里沙の戦闘機の残り時間が切れ、システム音声が響いた。「ログアウトしました。」フィールドと戦闘機が消え、亜里沙がしょんぼりとセレナに言う。「しまった…無制限チケット使っておけばよかった。ごめん、しばらく戦えない…。」
その言葉を遮るように、黒い鎧の男が斬撃を放つ。しかし、それはセレナの爪によって弾き飛ばされた。「ほう…英雄さん、なかなかやるじゃないか。今まで戦ってきた中でも上位に入るな。」
セレナは軽く笑い、「ありがとう。でも思ったより大したことなさそうね。」と挑発的に返す。
男はさらに挑発を重ねる。「でもさ、お前の仲間は俺に勝てないと見て逃げようとした。情けないと思わないか?チーム解消して俺と組まないか?」
セレナは冷たい笑みを浮かべた。「ごめんなさいね。亜里沙は特殊な戦い方をする子なの。今は休憩中なだけで、情けないとは思わない。それに、これからも仲間だから。」そう言い放つと、セレナは凍った爪を振り、男に氷柱を飛ばした。しかし、それはあっさりと斬り捨てられる。
「本気でやらないと死ぬな。」男はそう言いながら居合の構えに入る。その鋭い気配に、セレナもまた戦闘態勢を整え、二人はじっと向き合った。