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ログインガチャ:選ばれた運命、進むべき道  作者: 紅月ヨルカ


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進むべき道

亜里沙たちの行方を捜索し始めてから、じりじりと時間が過ぎていく。焦燥と不安が、張り詰めた空気となって空間を支配していた。メビウスは、レーダーの範囲を最大限に広げ、微細な反応も見逃さないよう、目を凝らしていた。しかし、広大な空間は、まるで底なしの闇のように、亜里沙たちの痕跡を飲み込んでいく。

ガイアは、無数の胞子を空間に放ち、一つ一つに意識を集中させていた。胞子は、微かな振動や温度の変化を捉え、ガイアへと情報を送り続ける。しかし、その情報は、広大な空間の前では、まるで砂漠の一粒の砂のようだった。

アルティアとセレナは、何もない空間を彷徨っていた。エメラルド・レルムから離れすぎないよう、慎重に距離を測りながら。時折、アルティアが放つ光が、暗闇を切り裂き、セレナの瞳に反射する。その光は、希望の光であると同時に、見えない敵への警戒を促す光でもあった。

クロノスとエリスは、ガイアの捜索と並行して、エメラルド・レルム内を直接捜索していた。クロノスは、その鋭い観察眼で、微かな痕跡も見逃さないよう、注意深く周囲を見渡していた。エリスは、その優れた空間認識能力で、複雑な地形を把握し、効率的に捜索範囲を広げていた。

そんな中、ヴィスティーだけは、微笑みを浮かべたまま、じっと佇んでいた。その様子に、ウラヌスは苛立ちを募らせる。「あなたはなぜ何もしないの?諦めてるの?」その問いかけに、ヴィスティーは、変わらぬ微笑みで答える。「いいえ、私は案外近くにいるかもって思ってるだけですよ〜」

「私もずっと空間領域と世界の隅々まで探したけど、どこにもいなかったんだ」ウラヌスの声は、徐々に焦りと寂しさを帯び始める。「空間領域は広すぎるぐらいで、どこまで行けばいいかもわからない。行けるとこは全て見て回ったのに...」

ヴィスティーは、そんなウラヌスの心情を読み取るかのように、静かに問いかける。「まあ色んな表情をしますね〜。本当に探せる所はほぼ見たんですか?例えばこの拠点の中は?」その言葉に、ウラヌスは苛立ちを露わにし、足早に拠点内へと向かう。

拠点内は、長い年月を経た建物の静寂が支配していた。入り口から広がるホールは、ひんやりとした空気に満ち、微かに埃っぽい匂いが鼻を突く。二階へと続く階段、地下へと続く暗い入り口、そして奥へと続く食堂やリビング。ウラヌスは、念のため、一つ一つ丁寧に見て回る。食堂、厨房、リビング、そしてお風呂場。しかし、そこには誰の気配もなかった。

「やっぱり、いないじゃない...」ウラヌスが呟いたその時、ヴィスティーが静かに現れ、地下へと続く階段を指差した。「地下室は行きましたか?」その声は、確信に満ちていた。ひんやりとした空気が肌を刺し、微かに漂う金属の匂いが鼻腔をくすぐる。

地下へと続く階段は、闇に覆われていた。ウラヌスは、手のひらに炎を灯し、明かりを確保する。湿った土の匂い、そして暗闇に反響する自身の足音。その全てが、ウラヌスの不安を煽る。

通路を抜けた先にあったのは、広い部屋だった。その中央で、亜里沙とファクトが静かに眠っている。二人の寝顔は、安らかで、まるで時間が止まったかのようだった。しかし、その安らぎが、逆に異様な静寂を際立たせる。

「本当にいた!」ウラヌスは、驚きの声を上げた。そして、ヴィスティーへと向き直る。「知ってたなら、早く言ってよ!」その言葉に、ヴィスティーは満面の笑みを浮かべた。「だって〜、聞かないんだもん」

ウラヌスは、その笑顔に苦笑いを浮かべた。「普通、聞かないでしょ?」

満足げな笑みを浮かべたヴィスティーは、「皆さんに知らせてきますね〜」と、軽やかな足取りで地下室を後にした。彼女の背中を見送りながら、ウラヌスは亜里沙とファクトを抱え、拠点前へとワープする。

そこには、ガイアとメビウスが待ち構えていた。二人の様子を見たガイアは、安堵の表情を浮かべつつも、どこか戸惑いを隠せない。「亜里沙もファクトも無事なのね。ただ眠っているだけのよう。良かったわ...。でも、もう一つ、微弱な魂の気配を感じるのだけれど...。これは一体?」

ガイアの言葉に、ウラヌスは一瞬驚いた表情を見せた後、喜びの声を上げた。「まさか...。イフも消滅せずに、肉体の中に残っていたのか...!良かった...!」しかし、すぐにヴィスティーの方を見て、問いかける。「ヴィスティー、イフは消滅する運命だったはずなのに...。まさか、あなたが改変したの?」

ヴィスティーは、微笑みを浮かべたまま、静かに答える。「私に罰を与えたければ、どうぞ。覚悟は出来ていますよ...」

その言葉に、ウラヌスは逆に笑みを浮かべた。「誰があなたを裁けるというの?今回に限っては、生死不明だったし、悪い事をしたわけでもない。ただ、少しばかり、予想外の事が起こっただけ...。まあ、もし次に何か悪さをした時は、その時はちゃんと裁かせてもらうけどね」

ウラヌスの言葉に、ヴィスティーは一瞬驚いた表情を見せた後、静かに微笑みを浮かべる。「ええ...。わかっています」

ガイアがファクトの肉体からイフの魂を取り出すと、ウラヌスはファクトの肉体を複製した。そして、ガイアが複製前の肉体にイフの魂を戻す。その間、ヴィスティーからの知らせを受けたメンバーたちが、続々と拠点へと戻ってきていた。

遠くから聞こえる足音、ざわめき。そして、次第に近づいてくる気配。誰もが、亜里沙とファクト、そしてイフの無事を願い、亜里沙達の方を見ていた。

ゆっくりと瞼を持ち上げた亜里沙の目に飛び込んできたのは、眩い光と、周囲を埋め尽くす人々の姿だった。ぼやけた視界が徐々にクリアになるにつれ、彼女の驚きは増していく。「えっ?みんながいる...?私、死んだんじゃなかったんだ...」

亜里沙は、まだ混乱した意識の中で、ゆっくりと周囲を見渡した。そして、そこで信じられない光景を目にする。「えっ?イフが二人...?いや、ファクトとイフ...?でも、肉体はどうなってるの?分離した?待って、頭が追いつかない...」

亜里沙の混乱をよそに、ファクトは驚きながらも、亜里沙に触れた。「ねえ、亜里沙。私に触れても消えないよ〜!良かった〜!もう制御できるようになったみたい!...でも、お腹空いた〜!何か食べ物ない〜?」そう言うと、ファクトは嬉しそうに、食べ物を探して走り回る。

騒がしい状況の中、イフもゆっくりと目を開けた。目の前にいる、自分そっくりの女性が、楽しそうに走り回っている。そして、自分が置かれている状況。全く理解できなかった。

「亜里沙、何か知ってる?」イフは、混乱した頭で、必死に質問を投げかける。こんなにも凄いメンバーがいるのに、なぜ私に聞くのだろう...。

亜里沙は、困惑しながらも答える。「私も事情がよく分からないから、ウラヌスさんに聞いてみたら?」

イフは、きょとんとした表情で、ウラヌスを見た。「ウラヌスさん、何か知ってますか?私がどうなったのか、とか...。自分の中の違和感には気付いていました。何か別の存在がいるのは分かってたけど、どうすることもできずに、ただ一緒に過ごすしかできなくて...」

ウラヌスは、静かにイフを抱きしめた。「簡単に言うとね、私の目的が達成されたら、亜里沙とイフが消滅するように設定していたの...。それが発動した時、イフは消滅したけれど、イフの中にいたファクトが、あなたの肉体を消えさせたくないと願った。そして、イフの肉体に魂を移し、繋ぎ止めた。それが、ファクトとして姿を現した理由よ」

「待って...。あの違和感の正体がファクト...?そもそもファクトって何者...?」イフは、まだ状況を理解できずに、焦りを隠せない。

ウラヌスが言葉を濁していると、ヴィスティーが前に出て、説明を始めた。「はい!それに関しては、私が説明しますね。イフが異世界を食べている時に、偶然、生まれたばかりの破壊神候補のファクトがいて、一緒に食べられたんです。しかし、彼女は能力値が高かったため、イフの中で、分別もされずに居場所を作り、そこで暮らしていた。そして、イフが取り込んだ知識を同等に取り込み、穢れの一部も吸収していったんです」

ウラヌスは、ヴィスティーの説明を聞き、納得したように頷く。「ああ、だから分別もされずに、中途半端な融合になったのね」

ヴィスティーは、微笑みを浮かべながら説明を続ける。「ええ、そうです。ですから、融合も中途半端、おまけにイフと同等の知識、イフと同じ物を見て感じて育ち、異常な穢れも取り込んだため、破壊神を超え、終末の女神となった...。までは良かったんですが、制御を覚える前にイフが消滅してしまい、慌てて表に出た事で、コントロールできず、全てを消滅させる存在になってしまった...。って感じですかね?」

イフは、それでも疑問が残り、再び質問を投げかける。「じゃあ、今の私は何?どういう状況?」

そんなイフに、亜里沙が声をかける。「もう細かい事はいいじゃん!みんなが無事だったんだから、ハッピーエンドじゃん!それより、ファクトに挨拶して来たら?」そう言うと、亜里沙はみんなの方へ向かって行った。

イフは、ウラヌスに一礼すると、走り回るファクトの元へと向かった。「こんにちは、ファクト。初めまして...かな?」少し照れたように言うイフに、ファクトは笑顔で答えた。「イフお姉ちゃん、こんにちは〜!初めてでもないよ。私はずっと、お姉ちゃんの心に触れてたから〜。亜里沙と行動するようになってから、静かだった心が変化していったね!」


イフは、心の中を見透かされたような気がして、顔を赤らめた。「うるさいわね...。そういう事は、人前で言ったらダメよ。全く、一から教えないとダメみたいね、あなたには...」そう言いながら、イフは呆れたような表情を浮かべた。

しかし、ファクトは、そんなイフの気持ちなど全く気にしていないかのように、無邪気に笑いかける。「これからもよろしくね〜!」その笑顔は、まるで太陽のように眩しく、周囲を明るく照らす。

イフは、その眩しさに目を細めながら、小さく笑った。「あ〜、はいはい、よろしくね、ファクト...」その声は、呆れながらも、どこか優しさを帯びていた。

周囲は、まだ騒がしかった。しかし、イフとファクトの周囲だけは、二人の笑い声が響き、穏やかな空気が流れていた。まるで、時間が止まったかのように。


少し離れた場所にいたアルティアが、急に足を止める。そして、静かに声をかける)


アルティア「ねぇ、亜里沙。……ちょっと、2人で話せない?」


(亜里沙は少し戸惑うが、アルティアに誘われるまま歩き出す。周囲を見渡しながら、少し静かな場所へ向かう。)


亜里沙「どこ行くの?」


アルティア「……ちょっと、あんたと向き合いたいだけだよ。」


(二人は少し歩き、ひと気のない場所、木の陰に入る。)


アルティア「ここなら静かだろ。……あたし、ずっとモヤモヤしててさ。」


(ゆっくりと近づいてくるアルティア。その手には魔闘気が纏い始める。そして、迷いなく拳を振るう)


(亜里沙は避ける素振りも見せず、ただまっすぐにアルティアを見つめる。寸前で拳が止まる)


アルティア「……何だよ。あたしの拳じゃ避ける必要もないってことか?」


亜里沙「……ううん。あなたから殺気を感じなかった。それに……殴られても、仕方ないことをしてるから」


(アルティアの魔闘気がふっと消える。肩を落とし、悔しそうに目元を拭いながら)


アルティア「……亜里沙には、まいったよ。殴れるわけないじゃん、そんなの……」


(亜里沙は小さく頷き、少しだけ視線を落としてから、静かに顔を上げる)


亜里沙「……ごめんなさい。」


(深々と頭を下げる亜里沙。沈黙が落ちる中、アルティアは少しの間だけ目を閉じ、静かに吐息をつく)


アルティア「……あたしね、ここでどっちが最強か決めてやろうって思ってたんだよ。拳ぶつけ合って、あんたに勝って、全部終わらせるって」


(ゆっくりと拳を下ろす)


アルティア「でも、あんたの“ごめん”で、もうどうでもよくなった。あたし……本当は戦いたかったんじゃなくて、ずっとモヤモヤしてただけだったんだって、気づいた」


(ちょっとだけ笑って)


アルティア「……正直言うとさ、ちっちゃいけどあたし、復讐してたんだよ。能力渡さなかったの、わざとだった。『あたしは渡さないけど頑張れ』って、あんた送り出した時、ちょっとスッとしたんだ。サイテーでしょ?」


亜里沙「……」


アルティア「でも、あんたが倒れそうになった時に後悔した。バカだよね。何やってんだろって。でもさ——」


(涙を拭って、無理やり笑う)


アルティア「それでもあんただから、一緒にいた。あんたといたから、強くなれたし、魔闘気も手に入れたし、毎日が楽しかった!……だから、許す。あんただから、許す!」


(くるっと背を向けて、いつもの調子で)


アルティア「——だからもうこの話、終わり!」


(亜里沙、少しだけ間を置いて)


亜里沙「えっ? ちょっと待ってよアルティア!……能力渡さなかったの!?今さら!? ていうか勝手に話終わらせないでってば〜!」

一方でガイアは、柔らかな光を宿した瞳でウラヌスに今後の事を静かに問いかけていた。「ねぇ、ウラヌス。もう一つだけ世界を作らない?穢れのない、この美しい世界の記憶をそのままコピーして。そうすれば、少なくともこの世界だけは、私たちが安心して平穏に暮らしていけるでしょう?」ウラヌスは、深いため息をつくこともなく、穏やかな声で答えた。「確かに、この世界で多様な生物たちと、それぞれの価値観の中で生活していくのは、私たち管理者にとっては時に苦痛を伴うかもしれない。ならば、私たちは少し距離を置いて、創造したもう一つの世界を、静かに見守っていこう」その言葉を聞いて、ガイアは安堵したように微笑んだ。「そうね。もう二度と、同じ過ちを繰り返さないようにしないとね」と、遠い日の記憶を慈しむように呟いた。そして、ウラヌスとガイアは、そっと手を重ね合わせ、温かい光を放ちながら、もう一つの世界を生み出した。

新しく生まれた世界は、風の囁きが心地よい緑豊かな草原もあれば、人々の活気と喧騒が溢れる小さな街もあり、空を飛ぶ乗り物が飛び交う未来都市もあれば、荘厳な石造りの建造物が佇む古代文明の遺跡もあった。まさに、あらゆる文明の可能性を秘めた、多様な表情を持つ世界になった。「この世界の名前は、私が付けてもいいかしら?」とガイアは、生まれたばかりの愛しい子を見つめるような優しい眼差しで、ウラヌスに提案した。「コスモテラリウムって、どうかしら?」ウラヌスは、その響きを確かめるようにゆっくりと頷いた。「うん、いいんじゃないか」こうして、新たな希望を宿した世界が静かに誕生した。

そして、それから数年の月日が流れた頃。木漏れ日が優しく差し込む拠点の入り口で、ウラヌスは、少し寂しそうな表情で亜里沙たちを見送っていた。「本当に行くのか?」その声には、別れを惜しむような、隠しきれない心配の色が滲んでいた。亜里沙は、少しだけ目を潤ませながらも、決意を込めた声で答えた。「うん。ここにいても、もう特にすることもないし…。それに、一度くらい、普通の人間としての暮らしもしてみたいの」イフは、亜里沙の背中にそっと手を添え、明るく笑った。「亜里沙だけじゃ心配だろうけど、私とファクトがちゃんと付いているから大丈夫よ。それに、セレナもアルティアも、少し遅れて同じ世界に来る予定だから、心強いし、心配はいらないわ」と、未来への希望を胸に語った。ファクトは、胸を大きく張り、自信満々に言った。「そうそう!お姉ちゃん達の面倒は、このファクト様が見てあげるから、絶対に大丈夫よ〜!」ガイアは、そんなファクトの頼もしい言葉に、苦笑いを浮かべた。「いや、一番あなたの事が心配なのだけれどな?」ヴィスティーは、相変わらず掴みどころのない微笑みを浮かべながら、亜里沙たちに言った。「亜里沙ちゃんたちが自分で決めたことなんでしょ?なら、行きなさい。自分たちの進むべき道を。もし嫌になったら、いつでも戻ってくればいいんだし〜」

亜里沙は、ふと、ここに姿を見せていないクロノスとエリス、そしてメビウスのことを気にかけて尋ねた。「そういえば、クロノスさん達は?」ウラヌスは、少し困ったように頭を掻きながら答えた。「あ〜、なんか新しい冒険者ギルドの立ち上げと、その管理システムの調整とかで、今はすごく忙しいみたいだ。まあ、いつでも会えるから、っていうのもあると思うよ」亜里沙は、「そうなんだ。大変だね。私たちも、向こうでやりたいことがたくさんあるし…もう行きますね…」と、こみ上げてくる寂しさを堪えながら、小さく呟いた。ガイアは、優しい眼差しで三人の背中を見送りながら言った。「いつでも会えますから。気をつけて、行ってらっしゃい」亜里沙、イフ、ファクトは、それぞれが抱く希望を胸に、「行ってきます!」と力強く応え、新たな世界、コスモテラリウムに向けて、一歩を踏み出した。

亜里沙たちの旅立ちから、3日後の静かな朝。セレナとアルティアも、それぞれの想いを胸に、新たな世界へと旅立った。セレナは、コスモテラリウムの中世風の美しいエリアに、自分だけのお城を建ててもらい、まるで夢が叶ったお姫様のように、満足げな笑みを浮かべ、気ままな一人暮らしを満喫している。一方、アルティアは、まだ見ぬ広大な世界を自分の足で歩きたいと、強い好奇心に突き動かされ、世界走破という壮大な目標を掲げ、一歩一歩、力強く前進している。

イフは、気まぐれな風のように世界のあらゆる場所を巡っては、漆黒の小さなブラックホールをぽつりと仕掛けていく。その特異な光景は、まるで夜空に散らばる星屑のようにも見えるが、近づくものを無慈悲に飲み込む危険な存在だ。

亜里沙とファクトは、街の喧騒から離れた場所にある新しく出来た工場を見つめながら、顔を見合わせて笑った。「ファクト、ついに出来たね!私たちの会社が!」亜里沙の声は、喜びで弾んでいる。「うん!本当に会社?って感じだけど、ここから新たな物語が始まるんだね〜!」ファクトの瞳は、期待にキラキラと輝いている。

イフが、どこか焦げ臭いような匂いを漂わせながら戻ってくると、ひんやりとしたコンクリートの床の建物の中に、歪んだ空間を作り出す、少し大きめのブラックホールを仕掛けた。「これでいいと思うけど…本当に危険じゃないの?こんな事して…?」イフの問いかけには、微かな不安が滲んでいる。「うーん、大丈夫だと思うよ。もし人が吸い込まれても、助けたらいいんだし。私たちの能力を活かせる仕事って、これがぴったりだと思うんだ!まず設置と回収のイフと〜消滅させるファクト。そして普段はゲームで遊んでる社長の私!この3人でしかやれない仕事ってなに?そう、ゴミ処理施設よ〜!世界中のゴミを集めて、ファクトが消す。完璧じゃん!」亜里沙は、自信満々に胸を張った。

ファクトは、首を傾げて、きょとんとした表情で言った。「亜里沙はゲームだけ?じゃ〜イフお姉ちゃんと2人でできるじゃん!おかしくない?」しかし、亜里沙は涼しい顔で答えた。「ううん…おかしくない。何かあった時、私がみんなを守るからさ。社長として」イフは、紫煙のようなオーラを漂わせながら、どうでもいいといった様子で言った。「まあ、どうでもいいけど。それで、会社の名前はどうするの?社長なんだし、決めてるんでしょ?」亜里沙は、得意げに胸を張った。「うん、決めてるよ〜!イフリサファクトリーだよ!3人の名前入れてるんだよ!」イフは、ふっと笑って言った。「そうなの?悪くないわね」ファクトは、歓声を上げた。「やった〜!私の名前も入ってる〜!」喜び勇んで建物に触れた瞬間、まるで泡のように建物が消え去った。「あ〜ぁ、消えちゃった〜」としょんぼりするファクト。「コントロールできてたよね?わざと?」と、イフは紫色の瞳を鋭く光らせた。「あ〜しばらくゲーム三昧だ〜!」と、亜里沙だけは何故か嬉しそうで、3人はそれぞれ全く違う反応を示していた。

(これからは結構楽しい日々になりそうだな〜)と、亜里沙は心の中で密かにほくそ笑んでいた。

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