終末の遊戯
亜里沙が目覚めない中、ファクトはゆっくりと近づいて来ていた…。到達されれば、消滅の危機の中、決断の刻が迫っていた。
ウラヌス「もう猶予もないし…正直、この世界も守りたいし、過去に戻ってイフの存在を消しても良いとさえ思っている…確かに全てをやり直すことになるだろうけど…全滅だけは避けられるし、ガイアはどう?」
ガイアは悩みながらも「でも、安易にそんなことをすれば、全てが根底から崩れてどうなるかもわからないよ?一からやり直すで済む話ではないだろうし、その決断ってただのリセットとはいかないよ。だったらさ、ここにいるみんなでなんとか封印でも別の次元に送るでもした方が良くない?」と提案をする。
メビウスは「ループさせるにしても、イフの中にあの存在がいる以上意味がないじゃあそれ以前に戻ったとしても、それ以降の歴史が完全に崩壊する。だったら、ガイアさんの言うように、ここでファクト自体をどうにかするしかないですよね?でも…」と言いかけたところで、ヴィスティーが「多分、封印も追放も無理ですよ〜その前に、彼女を封じる物や歪みが消滅してしまう…ファクトはおそらく自覚はないけど、存在自体が禁忌の終末の女神に覚醒したのでしょう…つまり、世界を消滅させるしか止めることはできない…でも、諦めたくはありませんよね?ムカつくし」と笑う。
クロノス「時空も壊すような存在と真っ向から勝負は無理だし、止めるにしても方向を変えるぐらいしかできないけど、何か考えがあるの?」と悩んでいる時、亜里沙がゆっくりと目を開けた。
亜里沙「う〜ん、みんなさっきから何勝手なこと言ってるの?イフをみんなで倒そうって話してるんなら私が怒るよ?イフは絶対私が連れて帰るから任せてよ」
ウラヌス「亜里沙が起きて嬉しいけど、今はあのイフ基ファクトをどうやってここから遠ざけるかの議論をしていたんだよ。連れてきたらダメなのわかる?」と言うと、ヴィスティーは優しく聞いた。
ヴィスティー「じゃあ、亜里沙はどうしたいの?イフじゃなくてもファクトでも連れて帰りたいの?例え、みんなが消滅したとしても?」
亜里沙は悩みながらも「いきなりすぎてよくわからないけどさ…たった一人の女の子に何ムキになってるのかがわからないよ。私はイフでもファクトでも連れ帰って一緒にいたいよ。仲間だったし…」とその気持ちを伝えた。
その気持ちを聞いて、ガイアは微笑み「そっか、メビウス、モニターに出せるかな?ファクトの様子」と言うと、メビウスは焦ってビットなどを用意し始めたが、「そんなことより、私の能力でファクトの様子をモニターに表示させるよ!」とウラヌスが言い、モニターにファクトの様子を映し出した。
メビウスは「どうやったんです?」と疑問に思うと、ウラヌスは自慢げに「異世界の目を使って見たいところを見る能力があって、それで見た映像をここのモニターに映してるの。投影の力でね!」と言うと、クロノスは「そんな能力があるんなら、私の命懸けの撮影はなんだったの…?」と落ち込んだ。
モニターに映し出されたファクトは、キョロキョロと周囲を見回していた。その表情は、まるで幼い子供のように無邪気な笑顔を浮かべており、好奇心旺盛な瞳がキラキラと輝いていた。しかし、その笑顔とは裏腹に、彼女の周囲には空間の歪みやノイズが常に発生しており、異質な雰囲気を醸し出していた。彼女はまるで、初めて見る世界に興味津々といった様子で、手を伸ばしたり、首を傾げたりしながら、ゆっくりと近づいてくる。その姿は、無邪気さと異質さが奇妙に混ざり合い、見る者に言いようのない不安感を与えた。
この映像を見た亜里沙は決意を新たにした。
「私、決めたよ」亜里沙が力強くみんなの方を振り向くと、セレナが駆け寄り、彼女の体に触れた。「良かった…!本当に亜里沙なの?」セレナの瞳には、安堵と喜びの涙が光る。アルティアは、何も言わずにただ亜里沙を見つめていた。その瞳には、複雑な感情が入り混じっていた。
エリスが改めて聞いた。「亜里沙、何を決めたの?」
亜里沙は一度深呼吸をし、まっすぐ前を見据えた。「私、決めたんだ。見た目はイフだし、イフがいなくても、せめて体は回収したい。私、ファクトの所に行くよ!」
クロノスは眉をひそめた。「私とアルティアとウラヌスさんでもダメだったのに、亜里沙が行ったところで何もできないような?」アルティアもうんうんと頷く。
「えっ?酷くない?ゲームとかなら、みんながおー!みたいになって応援してくれる流れじゃないの?」亜里沙のツッコミに、ヴィスティーが笑う。「ゲームのこと言うし、間違いなく亜里沙ちゃんだね」
ウラヌスが口を開いた。「このまま何もしないで終わるより、亜里沙にかけた方が良くない?」ガイアが嫌味っぽく返す。「じゃあ、ウラヌスが行った方が良くない?強いんだから」ウラヌスも負けじと言い返す。「それを言うならガイアも行けばいいだろ?私といい勝負なんだから」ガイアは微笑んだ。「私って戦闘好きじゃないのよね」
亜里沙が割って入る。「だから、私が行くって!ちゃんと聞いてた?」そして、少し笑みを浮かべた。「こうやって冗談言い合えるって、いいよね…ずっとソロだったからさ、なんか嬉しいんだよね…」
ヴィスティーが提案する。「じゃあ、皆さんで亜里沙ちゃんに力を貸してあげない?」
「言い出しっぺの私からね。はい、運命の書よ。亜里沙に力を貸してあげなさい」ヴィスティーが亜里沙に運命の書を託す。「頑張ってね」
ガイアも力を貸す。「じゃあ、私も貸すよ。はい、私の能力は世界の命のような壮大な物よ。ちゃんと使いこなしてね」「えっ?なんでプレッシャーも与えたの?」亜里沙は驚く。
エリスも亜里沙に手を添えた。「じゃあ、因果を司る力を貸してあげる」
その瞬間、セレナが亜里沙の首筋に噛み付いた。「ガブッ!これで血の活性化で能力が上昇するよ。頑張れ」と笑って手を振る。「っていや、私能力値は高いみたいだし、これってただ自分のお腹を満たしただけじゃないの?」亜里沙はツッコむ。
クロノスは少し落ち込みながら言った。「あ〜なんかやりにくいけど、時空を操る能力を貸すよ。ただし、消滅させられてるから、あまりあてにはしないでね…」亜里沙は「ありがとう。でもなんか哀愁が漂ってたよ!」と言う。
ウラヌスが近づいた。「あなたは私の写身。それだけで十分でしょ?応援してるね」「ちょっと会わないうちに別人みたいになってる〜」亜里沙は驚く。
メビウスが来た。「次は私だよね?」しかし、悩みながら言った。「私ってループさせることしか出来ないし、失敗してもボス戦前からやり直しさせてあげるよ。こんなんじゃダメ?」亜里沙は嬉しそうに笑った。「ファクト戦前のセーブポイントありがとうございます」
アルティアは、ずっと悩んでいたようだ。「ごめん、亜里沙。あたしは能力も貸せないし、セーブポイントでもないし、物資を提供することも出来ない…でもさ、あたしには出来ないことをしてくれるんだし、悔しいけど無事に帰って来たらアンタに譲るよ。この世界の覇王の座はさ!だから、絶対帰って来いよ!待ってる。絶対にファクトを倒して来てくれ」そう言うと、アルティアは走り去った。
「えっ?よっぽど悔しいの?私に託すのが?まあ仕方ないよね、アルティアだし…みんなありがとう。なんか力が漲ってくるよ!」亜里沙は運命の書を開き、「アディントログイン!」と叫んだ。
ヴィスティーは苦笑いする。「アディント?まあ亜里沙ちゃんらしいのかな?」
亜里沙の体が光に包まれる。彼女の髪は白銀に変わり、長く伸びて風になびいた。瞳は星々が瞬き輝いているように見え、純白のドレスが彼女を包み込んだ。発光する肌、伸びた身長。まるで女神のような風貌に変わった。
「やっぱりアディントってなんかしっくりくるな。ずっとループ中もログインしてたしね」亜里沙は微笑む。セレナは驚いた顔で言った。「亜里沙、雰囲気変わったね…見違えた〜」
「ふふふ、ありがとう。皆さんのおかげで私は変われました。皆さんのためにも行ってきますね」
ヴィスティーが笑う。「その感じといい、みんなの力が一つになったってことも合わさって、全能神って感じかしら?」
「いいですね、全能神亜里沙。いい響きですね」亜里沙は微笑み、みんなの方を向いた。「改めて、ファクトの元に参りますね…では、ちょっと遊んできます」そう言うと、彼女はファクトの元へと向かった。
クロノスは驚きの声を上げた。「今、遊んでくるって言わなかった?」
エメラルド・レルムの澄み切った空に、ファクトの無邪気な笑顔が響き渡る。その純粋な笑顔は、これから始まる激しい戦いを予感させないほどだった。
「イフと変わらないね?本当にイフはいないの?」亜里沙が優しく問いかけると、ファクトは首を傾げ、満面の笑みを浮かべた。
「うん、いないよ。ずっと待ってたんだよ、亜里沙のこと〜。どこに行ってたの?ずっと探してたんだよ〜」
その無邪気な笑顔に、亜里沙は戸惑いを覚えつつも、「どうして私を探してたの?」と尋ねた。
「あのね〜、イフちゃんが亜里沙にはわかってもらいたいとか、一緒にいたいとか、気持ちが伝わってきたから、どんな子かな〜って思って。でも、なんか普通だね〜。がっかり〜」ファクトはそう言って、悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「ごめんね〜、ファクト。普通で。何かしたいことはあるの?」亜里沙が尋ねると、ファクトは亜里沙に近づき、目を輝かせた。
「あのね、お姉ちゃん達がいたんだけど、みんな消えたり逃げたりするから…亜里沙とはいっぱい遊びたいな〜」
「うん、わかった。私は逃げないで、ファクトといっぱい遊ぶね」亜里沙が微笑みかけると、ファクトは目を丸くして喜んだ。
「やった〜!約束だよ、いっぱい遊ぼうね〜!」
ファクトが腕をぶんぶん回した瞬間、亜里沙から貰ったリボンが解け、彼女の長い髪がバサッと揺れた。咄嗟にリボンを掴もうとしたが、それは光の粒子となって消えていった。
「あ〜あ、消えちゃった。みんな消えちゃうんだよね〜。どうでもいいけど」ファクトはそう呟くと、すぐに気持ちを切り替え、目を輝かせた。「何して遊ぼうかな〜」
そして、何かを思いついたように、亜里沙に向かって言った。「あ〜、そうだ!私のこの力を使って、打ち合いをしようね〜!」
次の瞬間、ファクトは亜里沙に向かって、遊びのような口調とは裏腹に、本気の衝撃波を放った。亜里沙はそれを跳ね返し、二人の間に激しい風が吹き荒れた。
エメラルド・レルムの静寂は破られ、最終決戦の幕が上がった。




