表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ログインガチャ:選ばれた運命、進むべき道  作者: 紅月ヨルカ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/32

プランニングセッション

広大な草原の中央、地平線まで続く緑の絨毯の上で作戦会議は開かれた。都市の痕跡はすでになく、風が草を揺らす音だけが静かに響く。車座になった一同は、亜里沙の言葉に真剣に耳を傾けていた。

「救済は分かったけど、具体的にはどうするの?」

メビウスが真剣な表情で尋ねる。

「今のウラヌスは、おそらく本気で戦うことはないと思います」亜里沙は落ち着いた口調で言った。「でも、もし融合中のあの世界に向かって私たちが何かすれば、本気を出す気がしませんか?」

「いや、わざわざ本気にさせる意味が分からない。ただでさえ厄介なのに……」

クロノスが眉をひそめて反論する。

「例えば、イフが食べようとするとか。どうかな?」

亜里沙が挑発するように笑う。

「亜里沙、聞いてる?怒らせてどうするの?」

ヴィスティーが苛立った声で言う。

「それで勝算はあるの?ただ怒らせても駄目だと思うけど?」

イフが首を傾げる。

亜里沙は冷静に答えた。「ウラヌスが少しでも冷静さを失えば、上手くいくと思うんです。普通に正面から挑んでも、冷静に対処されて終わり。だから、感情がないとしても焦らせたい。そうすれば、こちらのペースに持ち込める……。それでも冷静に対処されるなら、もう降伏するしかない。最後の賭けなんです」

一同が押し黙る中、メビウスが意を決したように言った。「何をしても勝てないなら、やってみましょう」

「ありがとうございます」亜里沙は微笑み、セレナに向き直る。「セレナ、私の血を吸っても良いから、闇の世界の準備をお願い」

「へ?なんで?暗い所で闇の世界?意味ないよ」

セレナがきょとんとしていると、クロノスが顎に手を当てて言った。「あ~、なんとなく分かってきたぞ。冷静さを失わせる、闇に闇を重ねる……。つまり、ウラヌスに何かを仕掛けるつもりだな?」

「はい」亜里沙は頷いた。「真正面から挑んでも駄目なら、嘘で勝負するしかありません。お芝居で勝機を狙います!」

「お芝居って、最終決戦なのに?歌って踊るの?」

セレナが冗談めかして言う。

ヴィスティーが腕を組み、考え込む。「本気で戦っているふりをして、ウラヌスに油断が生まれた時、何かを仕掛ける。それで勝負あり、って感じ?」

アルティアが腕を組んで言った。「協力はしたいけど、嘘に付き合うのは何か違う気がする。正面から戦いたい」

「そこは諦めようよ。さっき駄目だったんだから」

セレナがたしなめるように言う。

「私は協力するよ。食べに行けば良いんでしょ?できるよ」

イフが軽く手を上げる。

「私の役目は?」

エリスが尋ねる。

亜里沙はエリスの耳元で囁いた。エリスは目を見開き、頷いた。「この作戦でそれが出来れば、確かに勝ちだね。分かった」

「私は時を操れば良いんだね?」

クロノスが確認する。

「そうです。ウラヌスには通じなくても、周りだけでも操れれば」

「嫌な事を言うな……。でも、分かった。出来る事をやるよ」

ヴィスティーが笑いながら尋ねる。「私はどうする?寝てて良い?」

「そんな事言わないで」亜里沙はヴィスティーに運命の書を差し出す。「運命の書を返すから、サポートをお願い。多分、運命の書が導いてくれるはず……」

「運命の書なしでどうやり合うの?レベル1で初期能力で!無茶よ。この作戦の要でしょ?」

「ふふふ」亜里沙は不敵に笑う。「だから、私自身もハッタリで勝負します。この戦いは、ウラヌスを欺く事ができないと失敗するんです。だから、全力で運命の女神になった亜里沙を演じてみせます!」

アルティアは面白そうに笑った。「分かった。つまり、あんたに全ての攻撃がいくように仕向けるから、それを他のメンバーでサポートすれば良いんだな?あんたには力がないから……。でも、運命の女神になったから全てお見通し、を演出したいんだな?それは面白そうだ」

「うん。一世一代の大舞台だよ!みんな、協力よろしくお願いします」

亜里沙は深々と頭を下げた。 

「みんな、やるぞ!」

アルティアの掛け声と共に、その場にいた全員が立ち上がり、それぞれの役割に向けて動き出した。亜里沙は、ヴィスティーと同じ純白のドレスを身にまとう。風が吹くたびに、軽やかなドレスの裾が波打ち、まるで女神が舞い降りたかのような神々しさを放つ。

「なんか本当に運命の女神になったみたいね」

メビウスが感嘆の声を漏らす。

「いや、嘘でも一度はなったよ、運命の女神に……。あの頃は、こっちが芝居をしていたね、ヴィスティーと」

クロノスが遠い目をしながら呟く。

ヴィスティーは亜里沙を見つめ、静かに言った。「私は亜里沙ちゃんに賭けたんですよ。いつか、私の命を狙わせた黒幕を見つけ出して倒してくれると……。あと少しで、それが叶いそうです」

「ヴィスティーって、ちゃんとしてるとやっぱり女神様ですね~」

亜里沙が屈託なく笑う。

「そこは当然です。本物ですから」

ヴィスティーは胸を張って答える。

「普段がふざけ過ぎてるだけだって。ちゃんとしてたら良い女神なのに……」

エリスが呆れたように呟く。

そこへ、セレナたちが合流してきた。セレナは亜里沙のドレス姿を見て、目を丸くする。

「あ~、亜里沙がドレス着てる~。準備出来たって事?あとさ~、アルティアが血を飲ませてくれたよ~。まずいけど」

セレナが顔をしかめて笑う。

アルティアは満足そうに頷いた。「おっ、ドレスもいいな。それとセレナ、血はしょうがないだろ。魔力も入ってるからな」

メビウスは、草原の中央に手作りのテーブルと椅子を用意し、様々な異世界の料理を並べた。

「まあ、最後の晩餐じゃないけど、いっぱい食べましょ?」

メビウスが笑顔で言う。指をさした場所には、イフのために用意された大量の食事が並んでいる。イフは目を輝かせ、「ありがとう」と言うと、食事に飛びついた。

亜里沙たちは、地べたに腰を下ろし、メビウスが用意した料理を囲んだ。

「ウラヌスって、こういう時も律儀に待つよね?本当に悪には思えないよ」

亜里沙が疑問を口にする。

クロノスはしみじみと語る。「別にウラヌスは悪人ではないよ。ただ、誰とも本気で向き合う事なく、自分の理想だけを追い求めただけ……。もしかしたら、異世界を繋げていったのも野心のためだったのかもしれない。でも、結果的にみんなの暮らしが豊かになったよ」

メビウスは悲しげな表情で俯く。「まあね。ウラヌスは私たちから見たらヒーローだしね。悪ではないよ。亜里沙の言う勇者って、まさにウラヌスの事だったよ。やり方は間違ってるし、理想もズレてるけど、もしそれが私たちと同じ方向を向いてたら、確実にもっと良い世界になってたと思う……。なのになぜ……?」

アルティアは笑い飛ばす。「まあ、曲がったんなら正せば良いじゃん。別に倒すってわけじゃないんだしさ。また、あいつ真っすぐに直せば良いよ!」

亜里沙は決意を込めて言った。「そのためにも、このお芝居は成功させないといけない……。もう終わりにしよう」

セレナは何かを迷うように言った。「でも、融合中途半端で止めるより、融合し切った方がいいような気もするね。中途半端に戻って来ても、なんだあれ?ってなるかもしれないし……」

ヴィスティーは笑顔で答えた。「まあ、その辺は勝ってから考えましょ?とりあえず、食事を食べて、いつでも戦えるように準備をしといてね~」

亜里沙は、白いドレスのスカートの裾を指先で揺らしながら、頬を赤らめた。「普段、こんなの着たことないから、なんか恥ずかしいな……」

イフは食事を頬張りながら、「似合ってるよ、亜里沙」と微笑む。

亜里沙は冗談めかして言った。「ちょっと、食べるのと褒めるの、どっちかにしてよ。そんなに食べたら、異世界の料理、なくなっちゃうよ~」

亜里沙はしみじみと呟いた。「イフって、ずっと私のそばにいたんだね。全然気付かなかったけど……」

イフは少し照れくさそうに言った。「私はずっと見てたよ、亜里沙のこと。亜里沙の動きを見て、いなくなったら食べてるから……。でも、いつからか亜里沙の後ろを歩いてついて行くようになって、それで景色とか美味しい物とか食べるようになって、いつかは亜里沙の横に並んで歩きたいって思うようになった」と言うと、そそくさと去って行く。

(私もイフと一緒に冒険できて良かったよ……。今までは食べる側、食べられる側だったかもしれないけど、今は横に並んで同じ方向を見てるよね?)亜里沙はイフとの事を考えていた。

セレナが駆け寄ってきた。「あ~、亜里沙~。やっぱり良く似合ってるよ~。あとさ、一つ確認したい事があるんだけど、いいかな?」

亜里沙は不安げに尋ねる。「えっ?何?急に改まって?作戦の打ち合わせ?」

「いや、そうじゃなくて……。亜里沙って、もしかして、私が倒した勇者だった?」セレナは目を逸らし、そわそわしながら尋ねる。「なんか、剣と魔法で戦ってる所とか、あの勇者にそっくりなんだよね~。別に恨みとかはないよ……。あの頃とは違うって分かってるし……。ただ、確認だけね」

亜里沙は頭を下げた。「私、過去の映像を見たんだけど、セレナと戦ってた……。負けたけど……。あの時は、ただひたすらに勇者として前に進んでただけだったから……。っていうか、ウラヌスの趣味か知らないけど、完全に主人公と思って生きてた。自分が正しいって。だから、ごめんね……。光の世界を闇に変えたのも、私だったって事だよね……」

「良いよ。結果的に、二人で協力して光を取り戻したじゃん!それに、もう友達でしょ?私のコウモリメガネを受け入れてくれたのも亜里沙だけだし……。アルティアなんてさ~」

アルティアは笑いながら言った。「あはははは。何そのメガネ。ダッサ~い。もっとマシなのがあるだろう。あははは」

「って、ずっと笑い続けてたんだよ……。コウモリが可哀想でさ……。まあ、良いんだけどね。仲間だし」セレナはため息を吐く。

「多分、悪気はないと思うよ……」亜里沙は苦笑いする。

「分かってるんだけどな~。なんかね~」そう言いながら、セレナはどこかへ行ってしまう。

「よっ、亜里沙。可愛いねぇ」アルティアは酒瓶を片手に、亜里沙に近づいた。「もしかして飲んでるの?決戦前に?大丈夫?酔ってない?」亜里沙は心配そうに尋ねる。

「あ~、大丈夫、大丈夫。酔ってるくらいがちょうどいいんだよ。ハンデ、ハンデ」アルティアはそう言って、豪快に笑った。

「いや、ハンデって。ボロ負けしてるんだけど?本当に大丈夫?っていうか、なんで私のところにみんな来るの?お別れの挨拶?」亜里沙は不安そうな表情になる。

「いや、たまたまだよ。それより、さっきのセレナの話を聞いてて思ってたけど、あの勇者が亜里沙なら、あたしの両親殺して、あたしに自分より強い奴以外興味がないって言ったのもあんたって事になるよね?」

「さあ、どうかな~?記憶にないな~」亜里沙は首を傾げる。

「まあ、どっちでも良いけど、あの頃のあんたは多分今とは違うんだろうし……。それに、あの言葉があったからあたしはここまで強くなれたんだし、お礼が言いたいぐらいだよ。まあ、気にしてないけどな」そう言うと、アルティアは亜里沙の肩に手を置いた。「絶対に死ぬな。あたし達が全力でサポートするからさ」

「う……。うん、ありがとう」亜里沙はそう答えた。

(全然恨んでないとか言ってたけど、肩がすごく痛い……)

また、「亜里沙ちゃ~ん」と声がする。

(やっぱり送別会かな……?私、死ぬって思われてる?)そう思いながら、亜里沙が振り返ると、ヴィスティー、メビウス、クロノスがいた。

クロノスは落ち着いた口調で言った。「一人一人と喋るのも疲れるかと思って、まとめて来た」

「あ~、ありがとうございます……。私、死ぬと思われてます?」亜里沙は落ち込み気味に尋ねる。

メビウスは微笑んだ。「別に、亜里沙が死ぬとかじゃなくて、失敗したらみんな死ぬからね。挨拶は大事でしょ?」

ヴィスティーは亜里沙を励ますように言った。「みんな、亜里沙ちゃんの作戦に命を賭けるって決めたんだから……。ウジウジしてないで、頑張りなさい」

「ありがとうございます……。そうですよね。みんなの命が懸かってるんですよね……。なのに、こんな馬鹿げた事を……」

エリスが食事を頬張りながらやってきた。「全然、馬鹿げてないよ!この作戦以外では、もう厳しいってくらい良い作戦だと思う。心に鉄壁の守りを固めてるウラヌスを倒すのは、正攻法じゃ無理だからね!」

「イフにも言ったけど、ご飯食べるか話すかどっちかにしたら?」亜里沙は呆れて言う。

エリスは頬を膨らませた。「なんか、亜里沙って私にはズケズケと物を言うよね~。一応、偉い立場だと思うんだけどな?」

クロノスは笑いながら言った。「いや~、私達より亜里沙と長く一緒にいたから、言いやすいんじゃないか?」

エリスは目を輝かせた。「そうなの?亜里沙、お友達って事?」

「あ~、はい、そうですよ~、エリスさ~ん」亜里沙は少し引きながら答える。

エリスは拗ねたように言った。「え~、何その言い方!全然友達と思ってないじゃん!」

ヴィスティーは穏やかに言った。「まあ、冗談が言える関係って良いと思うけどな?それより、亜里沙ちゃん。お別れ前に、これを渡しとくね~。やっぱり、運命の女神といえば杖でしょ?」

「今、お別れって言わなかった……?えっ?杖ですか?使った事ないけど、ありがとうございます。てっきり、運命の書かと……」亜里沙は戸惑いながら尋ねる。

「運命の書は私が持っています。でも、亜里沙ちゃんとはリアルタイムでやり取り出来るようにしとくので、指示に従ってね。もちろん、他の皆さんともリンクしとくので、戦局によって臨機応変に対応して下さいね~」ヴィスティーは笑顔で手を振る。

メビウスは優しく言った。「まあ、亜里沙、死なないで頑張ってね……」

「はい、行って来ます」亜里沙はそう言うと、エリスによってウラヌスの前に送られた。

ウラヌスは亜里沙の方を見ずに、融合中の世界を見ながら言った。「ずいぶんと長いタイムでしたね?」

「ごめんなさい。遅くなって。あなたの事を説得できないかと思って、話合ってたの」亜里沙はそう答えた。

ウラヌスはちらっと亜里沙の方を見て、微笑んだ。「あら、素敵な衣装ね。女神にでもなったの?」

「ええ。あなたの命令通りに、運命の女神になりましたよ」亜里沙は微笑み返す。

「そうなの。もう、どうでもいいわ……。それより、どうして理想の世界の方にいるの?」

亜里沙は融合中の世界をバックに立った。「こうしてると、あなたも手が出せないかな?って思って」

ウラヌスは目を細めた。「あらー、頭がいいのねー。でも、あまり気に食わない事はしないで」

「あれ?もしかして焦ってる?何かするんじゃないかと思って」亜里沙が笑うと、イフが現れた。

「来たよ、亜里沙。もういいの?」イフが尋ねる。

亜里沙は笑顔で答えた。「もう、食べちゃって~」

「本気でやめなさい!」ウラヌスが動くと同時に、イフはブラックホールを出し、世界を飲み込もうとする。

「やめろって言ってるでしょー!」ウラヌスはイフにブラックホールをぶつけ相殺すると、今度は「これでも食べてなさい!」と引っ張って来てた世界をイフに当てようとする。

イフは咄嗟にそれをブラックホールで取り込んで行く。

「そうそう、いい子ね。じゃあ、おまけでこれもあげる」そう言うと、ウラヌスは巨大な星を生み出し、亜里沙とイフに当てようとする。

「さよなら、侵略者と捕食者」そう言って星を投げると、それを魔闘気のアルティアが圧縮し、融合中の世界の方に投げ飛ばす。

ウラヌスはあっさりとブラックホールを出し、星を消し去った。「なかなか良いチームワークね。本気で消したくなったわ」ウラヌスはそう言って笑う。

亜里沙は毅然とした口調で言った。「私が運命の女神になった以上、あなたの好きにはさせません」

「そうなの。分かったわ。その気なら、あなたには痛みを与えた後に救済してあげる。」ウラヌスはそう言って、亜里沙たちを見据えた。最終決戦がついに開幕する。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ