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サイコロゲーム2日目


最新ゲーム機とソフトで興奮状態のまま徹夜で過ごした亜里沙は、アドレナリンとドーパミンが交互に出続けているのか全く眠くならず、アディントのことを考えていた。


「そもそもあのゲームって、目的とかポイント何に使うのかも説明ないし、駄目でしょ?普通ルール説明ぐらいしないとさ…」と、アディントのアプリを起動し、ヘルプにゲームの説明書があることに気づく。「……説明書あったわ!ゲームの目的、書いてたわ!!自分が読んでなかっただけじゃん!ごめん、アディントの開発者さんたち。色々遊んでるうちに、説明書読む習慣がなくて…」


徹夜のテンションか、かなり派手に驚いた亜里沙は一旦冷静になり、目的を読み進めた。「ふーん…ポイントを1000ポイント貯めて、100連ガチャを引けば良いのか〜。え?たったのそれだけ?100連ガチャ引いて何するの?そのあと何するの?ポイントもすぐ貯めれそうだし…何なの、このゲーム。ちょっとSNSで情報を見てみよう」


アディントで検索すると、レビューがいくつもあった。 「アプリをするだけでお金持ちになりました」や「似たゲームや見たことあるイベントがあって面白いと思う。ただ、二度と出来なくて残念」といったものも。しかし、レビューがどんどん不穏なものに変わっていった。


「今から始めようとしてる人は、間違っても起動してはいけません。生きていられる保証はありません」といった内容や、「ゲームしてたらマイナス一億円と出て、本当に借金を背負いました。返せるあてもないし、ゲームできないし、もう駄目だ」など、怖い書き込みが増えていく。 「急に海外に飛ばされます。しかも、マイナスイベントにハマるとお金もマイナスになって生きていけません…」


「これ、どういう事?己の運を示せってこういう事?運が悪いと死んだり、借金したり、海外に行ったり?でも、もう起動したし、無事にクリアしたかったら、ポイント貯めてガチャ引けってこと?やばいな…単純なゲームの割に随分とやる事が派手じゃない!面白い!私もゲーマーとしての意地もあるし、クリアしてやろうじゃない!」


決意を新たに、説明書を改めてじっくりと読むと、クリア条件が書かれていた。 「ポイントを1000ポイント貯めた状態で、家の前に辿り着くと、ガチャエリアに進む事ができ、ゲームクリア。」


「うーん、なんか斬新ね。普通ガチャは過程であってゴールではないはずなんだけど、このゲームは堂々と100連ガチャを引くのをゴールとしている…意味もわからないし、とりあえずゴールを目指しますか」


そう言うと、家の前に出た亜里沙は、1日目と同じように「ログイン」という音声と共にマップにマスが出現する。そしてログインボーナス200ポイントが表示される。


「今私は400ポイントある状態か。あと600ポイントでクリアか。頑張ろ!」


吹っ切れた亜里沙は、さっさとサイコロを振った。サイコロの目は1だった。

「良かった、青いマスで」と安堵しながら青いマスに入った瞬間、目の前でルーレットが回り始めた。


「ルーレット?今までにはなかった展開だ…」

恐る恐るボタンを押すと、結果は 500ポイント+新車一台。突然、巨大な鍵が空から降ってきた。


「うわ〜、テレビでよく見るやつだ〜!でも免許ないんだよね〜…。いっそのこと免許証も落ちてこないかな?運転はできると思うんだ、レースゲーム得意だし」と呟いた途端、急に恥ずかしくなりそっとサイコロを振った。


今度の目は3だった。さっさと進むと、次は黄色いマスに止まる。


「あ〜、イベントか〜。あと100ポイントでクリアだったのにな〜。またスリのあいつかな〜?」

そう思いながらマスに入ると、そこには目が虚ろで焦った様子の男性が立っていた。


「もしかして、またスリ?」


そう尋ねると、男性は青ざめた顔で「もうポイントも時間もないんだ…悪いけど負けてくれないか?まだ死にたくない…」と絞り出すように言った。


「えっ?何言ってるの?」


「君は何日目だ?」


「…2日目だけど?」


「2日目…?俺はもう3日目で、あと10分で終了するんだよ…悪いけど負けてくれよ!頼むから…!」


「さっきから負けてとか3日目とか、何言ってるの?これって別に競うようなゲームでもないじゃん?」


「バカだな…。ちゃんと読んでないのか?いや、ごめん、俺も注意書きは読んでなかったんだ…。でも今日読んで驚いたよ。3日目終了時までにガチャを引けないと強制ログアウト、その後アプリが消去される。そうなると、俺は死ぬことになる…!」


「…死ぬ?」


「だってさ、借金1000万プラス末期がんだぞ…」


「えっ?そんな状態でよくゲームなんてできるね?」


「いや、それもこのゲームのマイナスマスで付けられたんだ…。クリアすればマイナスは消えるけど、強制終了後は消えない。だから、お願いだ…負けてくれよ!」


「事情は分かったけど、どうやって負けるの?」


少し呆れたようにため息を吐いた男性は答えた。

「…じゃんけんだよ。知ってるだろ?一回勝負で勝った方が相手のポイントと持ち物を奪えるんだ。ただ、俺のポイントは100しかないけどな…」


「そっか…。あと10分で1000ポイントは厳しいよね。じゃあ、分かった。死なせたくないし負けてあげるよ!私はまだマイナスもないし、あと1日あるしね!」


その言葉を聞いた途端、男性は満面の笑みを浮かべた。


「本当にいいの?ありがとう!じゃあ俺はパーを出すから、君はグーを出してくれ!」


「なるほど、そういうことね。分かったわ、じゃあそれでいきましょう!」


「よし、じゃあ行くぞ!」


突然、目の前に「じゃんけんバトル開始!」の文字が出現した。


「じゃんけんぽん!」


二人が同時に手を出すと、亜里沙はグー、男性はチョキだった。


「…あれ?何でチョキ出してるの?」


「え…いや…いざとなったら色々考えすぎて、逆を出されるんじゃないかって怖くなって…つい…」


「もう…。だから駄目だったんだよ、運が良い人はそんなこと考えないんだから!」


その瞬間、男性は崩れ落ち、そのまま姿を消した。


「じゃあ、私に100ポイントが?やった〜!これで貯まった〜!あとは家の前に着くだけだ!」


サイコロを振ると、今度の目は6。嬉しさのあまり、スキップ気味に6マス進む。止まったのはまた青いマスだった。


「やっぱり私、運がいいのかな?また青いマスだ!」


ルーレットが再び回り始め、ボタンを押すと結果は 300ポイント+1000万円。空から1000万円が降ってきた。


「い、1、1000万円!?初めて見た!すごい、すごすぎる!本当にお金持ちになれるアプリだ!ゲームやってて良かった〜!」


興奮冷めやらぬ中、サイコロを振ろうとした時、スマホが振動し「家まであと3マス」と表示された。しかし、浮かれていた亜里沙は突然違和感を覚える。


「ちょっと待って…。昨日も思ったけど、私、一切角を曲がったりしてない…。なのに何で昨日も今日も家に戻れるの?」


改めて周囲を見回すと、気づいた。


「違う…。景色が全然違う。昨日も最初は普通の住宅街だったけど、途中から興奮して周りを見てなかった。でも、今は確信した。これ、私の知ってる星運町じゃない…」


急に怖くなったが、意を決してサイコロを振った。出た目は3。


「やっぱり…出たか。違和感に気づいたご褒美かな?短い間だったけど楽しかったよ。もう終わりにするね」


そう覚悟を決め3マス進むと、そこは見慣れた家の前だった。


「家は変わらない。この周辺だけはいつもの景色か」


スマホが振動し、「おめでとうございます。ガチャエリアへのゲートが開きます」と表示される。そして、家が真っ二つになり巨大な門が姿を現した。


しばらくその門を唖然と見つめていた亜里沙だったが、「家が割れてんじゃん!リアルでも割れてるの?それともゲーム的な演出?わけ分からん!でも…どっちにしても進むしかないよね…。じゃあ、行きますか家の中へ!いや、それもおかしな話か。ガチャエリアへ進もう!」巨大な門の扉を開き、慎重に一歩一歩扉の奥へ進んだ。

亜里沙は、しばらく歩き続けても、ガチャの機械も部屋も見当たらず、ただひたすら暗い道を進んでいた。


「まだ何もないな…道間違えてないよね?っていうか、こういうゲームって一本道が多すぎて不評じゃなかったっけ…?」


不安になりながらも歩き続ける亜里沙。やっと、目の前に広い空間が現れた。中に入ると、突然一気に灯りがつき、黄金に輝く大広間が現れ、その真ん中にひとつだけポツンとガチャの機械が置いてあった。


「うーん、なんかしょぼいな…こんな感じでガチャが設置されるのか…まるで『申し訳程度に置いた感』が溢れてる…!」


亜里沙は、歩み寄りながらも文句を言う。近くで見ると、その機械はまるでスロットマシーンのようで、何となく嫌な感じがした。


「こんな感じじゃなくて、もう少し大きくするとか、迫力を出すとかできなかったのかな?ま、いいけど。」


手にした携帯に目を向けると、画面に「携帯をガチャ装置のくぼみに置いてください」と表示された。亜里沙は少し戸惑いながらも、言われた通りに携帯をくぼみに置いた。


すると、眩い光に包まれ、気づいた時には、ゲームのような世界に入り込んでいた。


「え?何ここ?VRみたいな感じ?スロットマシーンもさっきよりデカくなってるし…」


戸惑う亜里沙に、部屋全体に響き渡る声が告げる。


「それでは今から100連ガチャを開始しますので準備が出来ましたらレバーを引いて下さい、違和感があれば大当たりとなります。それでは自分のペースで初めて下さい。」


「このレバーを引けばいいのね?とりあえず引きますか。」亜里沙は少し不安げにレバーに手を伸ばすが、引いた瞬間、何も起こらず、残り99回と表示された。


「うーん、ハズレかな?何ももらえないの?こんなガチャで『大当たり』とかあるのか疑問だな…」


イライラし始めた亜里沙は、何度もレバーを引き続ける。けれども、何も起きない。


「こんな玄人向けのガチャする人いないと思うけど。本当何考えてるの?ムカつくな!」


その後も、亜里沙はレバーを引き続け、ついに70回を超えた。


「これって確変というよりチャンスタイム?何も起きなさすぎなんだけど…これで75連目ね。」


再びレバーを引くが、何も起こらず、亜里沙は再度レバーを引く。


「次が77連目、ゾロ目がチャンスだったりするし、ここは気合を入れてレバーを引いてやる!」


気合を入れて引いたレバー。しかし、シーンとした静寂が続き、亜里沙は深いため息をついた。


はぁ〜駄目かと思っていると、突然世界がブラックアウトした。「えっ?こんな時にエラー?」と焦っていると数秒後、世界はレインボーに輝き、ガチャマシーンが振動し始め、キュインキュインと音を立てた。前方に「スーパーラッキー」と表示される。


「何これ、脳汁が出るやつじゃん…!」


興奮しながらも、亜里沙は携帯に手をかざすように指示される。言われた通りに手をかざすと、再びブラックアウトし、意識を失った。


しばらく気を失っていた亜里沙は、風の音で目を覚ました。目を開けると、見渡す限りの草原が広がっている。


「え?何これ、星運町でもないし…って、どこだろう?あー徹夜でゲームして色々と動いたから活動限界で意識失っちゃったかな?前なら3日ぐらい徹夜できたんだけどな…それより今何時だろ?携帯はっと…」


携帯を探すと、見慣れないデバイスがポケットに入っていた。


「え、ちょっと待って…携帯はどこに行った?なにこれ、デバイス?携帯は?これが景品なの…?」


亜里沙は焦りながら、ポケットを探った。携帯はなく新たなデバイスだけであった。


「うーん、まだちょっと頭がボーッとしてるけど、とりあえず歩こう…どこに行くんだろ、ここから…とりあえずお金と車の鍵もあるしどこかで食事を食べよう」そういうと街を目指して歩き初めた、まだ自分の置かれた現状を理解してないままで。

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