運命への道
亜里沙はアルティアとの激しい戦いで、自身の力不足を痛感していた。それでも諦めずに戦い続けたが、徐々に追い詰められていく、そんな様子をただただ見守る事しかできないイフとセレナは倒れかけてる亜里沙を見つめて
イフ「亜里沙、今、あんなに追い込まれているのに…私たち、どうしても手を出せないの?」
セレナ「うーん…確かに、あの子が手を出すなって言ってる以上、何かあった時に私たちが動くってわけにはいかないよね。でも、見てられないよ、あんなに苦しんでるのに。」
イフ「わかってる…でも、亜里沙はあんな強い意志で戦っているんだよ。私たちが今、あえて手を出したら、逆に彼女の意志を無駄にしてしまう気がする。」
セレナ「そうだね。でも、私たちができるのはただ見守ることだけなのかな?」
イフ「…でも、もし亜里沙が本当に無理そうになったら、その時は…私たちも覚悟を決めないとね。」
セレナ「うん、それまで耐えよう。」
亜里沙「くそっ…!このままじゃダメだ…!何か…何か方法はないの…!?」
亜里沙が焦りを感じ始めたその時、デバイスから軽快な通知音が鳴り響いた。
亜里沙「ん?何かお知らせかな…?」
亜里沙はデバイスを確認すると、目に飛び込んできたのは「新モード追加」の文字だった。
亜里沙「新モード…?もしかして、これで状況を打開できるかも!」
亜里沙は藁にもすがる思いで、新モードの説明を読み始めた。「フルパワーモード…?全ての能力が向上…?冗談じゃない!こんなの試すしかないじゃない!」
説明を読み終えるや否や、亜里沙は迷わずこのモードを起動した。「今度こそ…!あたしがアルティアに勝つんだ!」
亜里沙の体から眩い光が溢れ出し、彼女の動きは目に見えないほどに加速した。アルティアに肉薄するや否や、怒涛の攻撃を仕掛ける。
「今よ…!あたしの力、受けてみなさい!」
亜里沙の拳がアルティアの体に炸裂する。ついに、アルティアに一撃を与えることに成功した。
しかし、アルティアは涼しい顔で呟く。「悪くないわね。でも…まだまだ」
アルティアの言葉と同時に、亜里沙の体に強烈な一撃が叩き込まれる。「ぐっ…!」
亜里沙は吹き飛ばされ、辛うじて体勢を立て直す。フルパワーモードは確かに凄まじい力を持つが、アルティアにはまだまだ及ばない。
「亜里沙、無理しないで…!」
セレナは心配そうに亜里沙を見つめ、思わず口を開く。しかし、その顔には焦りと不安がにじんでいた。アルティアの攻撃があまりにも強力で、亜里沙が苦しむ姿が辛すぎる。
「でも、亜里沙は…あんなに頑張ってる。私たちがどうこう言っても、あの子には自分のやり方があるんだから…」
イフの言葉も虚しく響く。アルティアの強さは常識を超えていた。見守ることしかできない自分たちの無力さに、セレナは胸が締め付けられる。
「でも、あれじゃ…」
セレナが言葉を続ける前に、イフが静かに言った。
「今は見守るしかない。亜里沙に任せよう。」
その瞬間、亜里沙の姿が再び見えた。フルパワーモードを発動させたはずなのに、アルティアには全く歯が立っていない。それどころか、亜里沙はあっさりと吹き飛ばされ、再び立ち上がることができずにいる。
「こんなことをしても、無駄なんじゃ…」
セレナが目を伏せた。アルティアの強さに、勝てる気がしなかった。
「くそっ…!やっぱりダメか…!」
亜里沙が絶望しかけたその時、デバイスから警告音が鳴り響いた。「Warning!Warning!エネルギー過負荷…!緊急回避システム作動!無敵モードに突入します!」
亜里沙の体は光に包まれ、アルティアの攻撃を完全に遮断する。しかし、無敵モードの恩恵も束の間。「強制ログアウトまで残り60秒」というアナウンスが冷酷に告げる。
一撃必殺のパンチと強制ログアウト
「60秒…!この間に何とかしなきゃ!」
亜里沙は無敵時間を利用し、渾身の力を込めた一撃必殺のパンチを繰り出す。「くらえ…!必殺の一撃!」
拳はアルティアの顔面に炸裂…するはずだったが、アルティアは寸でのところでガードしていた。「甘いわね」
しかし、亜里沙の拳はガードごとアルティアを吹き飛ばした。かなりの衝撃だったらしく、アルティアはよろめきながら後方へ飛んでいく。
亜里沙はアルティアが吹き飛んだのを確認した瞬間、意識が途絶えた。「強制ログアウト…」
フィールドが解除され、亜里沙は意識を失い、その場に倒れ伏した。
戦いを見守っていたイフとセレナは、亜里沙の姿を見て顔を曇らせた。
「亜里沙…!」
セレナは駆け寄ろうとするが、イフがそれを制止する。「待ちなさい、セレナ。今はまだ…」
しかし、亜里沙が倒れてしまったのを見て、イフは焦りを隠せない。「…やっぱり、行くわよ!」
イフはセレナと共に、亜里沙の元へと駆け寄った。
「亜里沙、大丈夫?……ダメか、意識がない……回復させようにも、私、吸血鬼だしな〜……ごめんね、回復させられなくて……」
セレナは涙ぐみながら亜里沙の顔を覗き込んでいた。
「泣いてる場合じゃないよ。どこかで休ませないと……冒険者ギルドでいいかな?」
そう言いながらイフが辺りを見回していると、アルティアがゆっくりと戻ってきた。
「そいつは生きてるか?」
亜里沙を見つめながらアルティアが問いかける。
「死んでないよ……って、あんた、よく無事だったね? あんな一撃を喰らってさ」
セレナが睨みつけるように言うと、アルティアは軽く肩をすくめて答えた。
「あ〜あれ? 咄嗟にガードしたから大丈夫だった。モロに受けてたら危なかったかも……。ま、私は別の世界に行くことにするよ。そいつが目覚めたら、『結構楽しかった』と伝えてほしい。もう会うことはないだろうけどさ。じゃあ、生きてたらまた会おうね」
そう言って亜里沙の手を握った瞬間、アルティアの全身にぞくりとした感覚が走る。
(なんだ? 今の感覚は……何かあるのか?)
疑問を抱きつつも、アルティアは冒険者ギルドへと歩き出した。その時——
「あらあら、だいぶ弱ってるわね〜」
妙に明るい声が耳に届いた。振り向くと、そこにはガイドが立っていた。
(こんな状況なのに、あの明るいトーン? 心配しているようで、楽しんでいる感じ……何か引っかかる……)
違和感を覚えつつも、アルティアはギルド内へと足を踏み入れる。
「大丈夫ですか〜? とりあえずギルド内で休ませましょ〜」
ガイドがそう言うと、亜里沙は光に包まれ、次の瞬間にはギルド内のベッドの上に横たわっていた。
「なんでもできるんですね」
イフが驚いたように呟く。
「ええ、人ができることは全てできますよ」
ガイドはさらりと言ってのけると、通信機を取り出して応答を始める。
「ちょっとすみません」
そう言い残し、ガイドは姿を消した。
しばらくの間、亜里沙を寝かせていると、再びガイドが現れ、神妙な面持ちで告げた。
「今、上から連絡がありました。亜里沙さんたち『フェイトエッジ』のメンバーは、冒険者ギルドの会員権を剥奪され、追放となります」
「待ってください、急すぎませんか? 何も違反行為はしてませんが」
イフが抗議する。
「いや〜、剥奪理由に『やる気がない』『ルール違反がある』『ギルド内でいざこざを起こしている』……あと、『反乱分子の疑いがある』とのことで、剥奪が決定したそうです。でも、安心してください。次の世界には送りますよ。ここで行き詰まったら、あなたたちはどこにも行けませんから」
ガイドがさらりと言うと、ベッドの上の亜里沙がようやく目を覚ました。
「あれ……みんなどうしたの?」
「ちょっと早いけど、次の世界に行くよ」
イフがそう言う。
「事情は後で話すから、とりあえず行こう」
そう言うと、ガイドが「どこに行きますか?」と尋ねる。
「ヴィスティーがいる世界がいい」
セレナが答えると、ガイドは「分かりました」とだけ言い、さっさと異世界転送を開始する。
しかし——
転送が完了した後、イフだけがその場に残されていた。
「あなたは難しいのね。あとは頑張ってね♪」
ガイドが微笑みながらそう言い残し、姿を消した。
そして、しばらくしてから、イフは亜里沙たちの元へと合流する。
「どうして急に剥奪されたんだろ? 何かしたっけ?」
「追放されても、ヴィスティーに会えば大丈夫だから」
そう言いながら、亜里沙たちはヴィスティーがいる街へと向かって歩き出した。




