亜里沙対アルティア
アルティアを見送ったあと亜里沙の方を向き「ごめんなさいね、驚かせちゃったね。でも、これからはそうも言ってられなくなるかも。あなたたちはもう、普通に冒険してどうこうって状況ではなくなるから。」
エリスは少し気まずそうに少し微笑んだ。その言葉に亜里沙は驚き、目を見開いて問いかけた。
「えっ?それってどういう意味ですか?」
エリスは深く息をつき、一瞬冷静にこちらを見ているガイドに視線を一瞬向けると遠くを見つめるようにして言った。
「ふふふ、全ては次の世界でヴィスティーを探して会ったらわかると思うよ。だから、それまでは……まあ、なんだったのあの人、ぐらいの気持ちでいてくれたらいいからね。」
その言葉にはどこか寂しげな響きがあり、エリスはうっすらと笑ったが、その表情にはどこか悲しみが混じっていた。亜里沙はその笑顔に少し戸惑いを感じつつも、心の中で何かが引っかかっているのを感じた。
エリスはその後、ふと視線を変えて、セレナに向けて言った。
「それから、セレナ。もし亜里沙が困った時は、しっかりと守ってあげてね。大切な仲間なんだから。」
セレナは眉をひそめ、少し驚いたようにエリスを見つめた。
「は?なんであんたにそんなこと言われなきゃいけないの?私に酷いことしたくせに。」
エリスは少し笑って、肩をすくめた。
「あー、あれはそうしないとやられると思ったからついね。本当にごめんね。でも久しぶりに会えてよかったよ。」
「いや、初対面だけど?」
セレナが呆れたように言うと、エリスは軽く笑った。その時、亜里沙がふと思い出したように言った。
「でも、アルティアはどうするの?さっきの雷神、あんなにあっさり倒してしまうなんて、あれって本当に普通の雷神だったの?」
エリスはその質問に答えながら、やや微笑んで言った。
「ほらほら、落ち着いて亜里沙。アルティアは強いでしょ?」
セレナはすかさず反応した。
「いやいや、なんで仲間でもないあんたがそんなこと言うのよ!」
「まあ、そこはさっき戦ったから強さはわかってるわけで。でも、アルティアだって、それだけの理由じゃないってわかるでしょ?」
その会話の最中、イフが静かに立ち尽くしていることに、エリスは気づいて少しだけ目を向けた。
「え?あれ?イフどうしたの?」
イフは少し冷たく言った。
「私には何も言わないんだなって思って。」
エリスは少し悩んだ後、優しげに答えた。
「あー、ごめんね。イフのことはあまり知らないのよ。捕食者で異形の存在ってこと以外はね。でも本質を知られるのは、まずいでしょ?だからあえて言わないの。」
イフは少し顔をしかめながら、無言でうなずいた。その雰囲気に、エリスは少しだけ気まずくなりながらも、話題を変えることにした。「ねえアルティアのあとを追った方がいいんじゃないの?雷神倒しに行ったんだし私達も行った方が」と言うと亜里沙も「そうだよね雷神倒しに行かないとねどうせクエストにもあるだろうし」と同調した。しかしエリスは「アルティアのあとを追う?もうその必要はないと思うよ」と言うと雷鳴が止み空が静かに晴れ渡り、気持ちの良い風が吹き始めた。まるで、これからの未来に向かっての一歩を象徴するかのように。
「ほらね、もう終わったみたいよ。」エリスは軽く笑いながら言った。
亜里沙はその空を見上げ、しばらく黙って考え込んでいた。
「えっ?もう雷神倒したの?まだ行って少ししか経ってないよね?タイムアタックでもしてるの?Sランククリアを目指してるの?それにしても、どんだけ強いのアルティアって。さっき言ってた通り、すぐに雷神を倒しちゃったよね。雷神ってそんなに弱いの?」
エリスは少し笑みを浮かべ、やっと亜里沙の質問に答えた。
「ちょっと亜里沙落ち着いて、別に雷神が弱いってことはないけど、アルティアの力がそれを上回っているだけだよ。」
エリスは少し微笑んで、ふっとため息をついた後、エリスは少し微笑み、肩を軽くすくめた。
「まあ、そんな感じで。じゃあ、私もそろそろ行くね。」
言いながらも、その表情にはどこか寂しさが滲んでいた。エリスは亜里沙たちに向けて最後の言葉を残すように言った。
「みんな、これから先は簡単じゃないかもしれないけど、頑張ってね。私はしばらく別のことを片付けに行くから。」
その言葉には、別れの重さと共に、亜里沙が感じるような不安や寂しさも込められていた。明るく微笑んでいたエリスは、少し涙ぐみながら、「じゃあまたね」と言うとゆっくりとその場を後にした。
その姿を見送る亜里沙は、何故か胸にぽっかりと穴が開いたような感覚に襲われた。心のどこかでエリスの言葉が響いていたけれど、それをどう受け止めていいのかわからない。
「えっ?なんで泣いてたんだろう?」亜里沙はキョトンとした表情で言ったが、その目には小さな涙が浮かんでいた。
「確か、ヴィスティーさんを探せって言ってたよね?アルティアにも声をかけてみようか、一緒に来ないか?」亜里沙は、言ってみたもののどこか遠くを見つめているような視線だった。
セレナは少し考え込みながら、「うーん、一緒に来るようなタイプじゃないと思うけど、このメンバーで行けばいいんじゃない?」と答える。
イフも冷たく、「セレナの言う通り、多分一緒には来ないよ」と言い放った。
それでも亜里沙は諦めきれない。「でも、仲間になってくれたら心強いじゃん。私、今かなり弱くなってるし、強い仲間が必要なんだよ!」
彼女の声には、少し焦りが見え始めていた。それは、能力がうまく発動できなくなったり、システムが使えない自分に対する不安と、周りと自分のギャップに対する焦燥感が滲み出ていた。
セレナは冷たく言った。「そんな弱いって言ってる奴と仲間になるわけないじゃん、諦めて。」
亜里沙はその言葉に一瞬凍りつくも、すぐにふてくされたように肩をすくめた。「えっ、ショック〜。」と落ち込みながらも、まだどこか希望を捨てきれないように思えた。
その時、アルティアが戻ってきた。その存在感が、亜里沙に少しの安心を与えるかのようだった。
亜里沙は、アルティアに近づきながらにっこりと笑顔を浮かべて言った。
「ねぇ、アルティア、次の世界、良かったら一緒に行かない? あなたの力、すごいと思ってるし、きっと役立つよ。」
アルティアは亜里沙の言葉に冷ややかな目を向け、言葉を選んだ。
「行くのはいいけど…仲間になれってことじゃないよね?」
亜里沙は少し驚いたように目を瞬き、「えっ? うん、仲間に誘ってるんだよ?」と明るく答えると、アルティアの顔には鋭い不快感が浮かんだ。
「なら、断る。」とアルティアは即答した。「私は自分が認めた奴か、自分より強い奴としか仲間にはならない。お前はどちらでもない。それに、最近のお前、弱くなったと思わないか? 周りに頼りすぎて、何も自分でやらなくなってるだろ?」
亜里沙はその言葉に胸を打たれた。思わず言い返そうとしたが、アルティアの言葉は続いた。
「そういう奴が大っ嫌いなんだよ。」と淡々と言った。
「な、何それ…私だってハンデがある戦い方してるんだから仕方ないじゃん!」亜里沙は歯を食いしばって叫んだ。「生身だと弱いし…」
「じゃあ、あたしに勝てるわけがないんだからさっさと去れ。」アルティアは冷たく言い放った。
その言葉に亜里沙はイラっとした。これ以上言わせるつもりはなかった。彼女は周りの目を気にせず、デバイスを取り出し、操作を始めた。
「うるさい!」と叫びながら、亜里沙はデバイスを操作しアディントログインの音声が流れ、頭上に「AAAレベル1」と表示される。
周りの仲間たちはその姿に驚き、止めようとしたが、亜里沙は手を振って止める。
「みんな悪いけど、手を出さないで! これは、弱い私の意地だから!」
アルティアは一瞬、その決意に少しだけ興味を示すような目をして言った。「ほぅ…レベル1なのに面白いな。良いだろう、あたしはアルティア。この挑戦、受けてやる!」
アルティアが構えを取ると、亜里沙はそれに応じて力強く立ち上がった。
「私は亜里沙! どんな事になっても、あなたに認めさせてみせる!」
その時、戦闘が始まる。亜里沙の決意が、力に変わり、アルティアの鋭い眼差しが戦闘の火花を散らす。
亜里沙が「ガチャ引くか」とモード系のガチャを選択し回そうとすると、アルティアは腕を組んで強者の余裕か静かに言った。
「 ……いいだろう、待ってやる」
その言葉に亜里沙はニヤリと笑い、勢いよくガチャを回す。
──2D格闘モード、発動!
画面にそう表示された瞬間、視界が一変した。ドット調の背景に、キャラクターのような姿になった自分とアルティアが向かい合う。
「……なんか懐かしい感じになった!」
「ふざけてるのか?」
アルティアは呆れたように言うが、亜里沙は拳を握りしめる。
「違う、これで勝つ!」
「これでうまくいけばいいけど…。」
亜里沙は少し不安を感じつつも、戦闘が始まるとすぐにアルティアに向かって突っ込んだ。しかし、動きが重く、いつもより思うように体が動かない。脳内で技の入力をしようとするが、体がうまく反応せず、技が出ず通常攻撃が出たりする。
画面上の体力ゲージは順調に減っていく。
「こんな時に限って…!」と亜里沙は焦り、再び攻撃を仕掛けようとするが、タイミングが合わず、空振りしてしまう。
アルティアは冷静に亜里沙の攻撃を受け流し、ほんのわずかな隙間を見逃さずに反撃を決める。亜里沙が攻撃しようとするたびに、アルティアはスムーズにステップを踏んでかわす。技の入力をミスしたり、思った通りに攻撃が繋がらなかったりする亜里沙は、焦りながら何度も繰り返し攻撃を仕掛けるが、アルティアの冷徹なカウンターに何度も倒される。
亜里沙は技ゲージがたまらないことに気づく。体力ゲージは半分以上減っており、攻撃も決まらないため技ゲージはまったくたまらない。
「なんでこんなにゲージがたまらないんだ…!」亜里沙は頭の中で動きながら考えを巡らせるが、焦りすぎて頭でコマンドなどを組み合わせがうまくいかない。特に、アルティアの素早い反応に対して、どうしても亜里沙は手を出すタイミングがズレてしまう。
「どうして…こんなに違うんだ…!」
亜里沙は技を出そうとして不発になる事が増える。体力ゲージが減るたびに、どんどん焦りが増していく。それでも必死に立て直そうと、必殺技を出すタイミングを待っているが、ゲージは一向にたまらない。
「できるはずなのに…こんなにうまくいかないなんて…。」
アルティアの余裕のある動きと、その速さに亜里沙は次第に自分の限界を感じ始める。技を繰り出すたびに、失敗が続き、結局アルティアの無駄のない動きに完全に圧倒される。
アルティアは亜里沙の攻撃を何度もかわし、その隙間を狙って連続攻撃を決める。ゲージがたまらない亜里沙の動きに余裕を持って反応し、無駄なくダメージを与える。
亜里沙の体力ゲージが残りわずかとなり、技ゲージが未だにほとんどたまらないことが、亜里沙をさらに追い込む。
「これじゃ…ダメだ、こんなことじゃ…。」亜里沙は、自分の未熟さに悔しさを感じながらも、目の前の戦闘に必死に集中しようとする。
アルティアが再び亜里沙を圧倒する。亜里沙が必死に技を繰り出しても、まったく当たらず、全く隙が無い。
「お前、まだまだだな。」アルティアは冷静に言い、亜里沙を一撃で倒す。
倒れた亜里沙は、体力ゲージが尽きる瞬間、冷静になった自分を感じる。アルティアWINとフィールドに表示される。戦闘後、彼女はただ息をつきながら、戦闘の結果に悔しさと自己嫌悪を感じていた。
(なんで…こんなにも簡単に負けてしまうんだろう。)
「こんな戦い方じゃ、もうダメだ…。どうして、こんなにうまくいかないんだろう。」
その心の中で、亜里沙は自分が何をしているのか、何を目指しているのか、わからなくなってきていた。
でも負けた理由はわかっていた。操作がうまくいかなかった。技を出すタイミングを何度も逃した。アルティアのようにスムーズに戦えなかったからだ。
だが、それが全てではない。亜里沙は内心、何かが足りないと感じていた。それは、まだ解決できることだ。
「…もう一度だけ。次は絶対に。」
亜里沙は必死に次の戦闘に備えている自分を感じながら、立ち上がった。彼女はアルティアに向かって再度挑戦しようとする。
アルティアは亜里沙の意気込みを見て、少しだけ驚いた様子で眉をひそめる。だが、すぐに無言で姿勢を整え、亜里沙に対して戦闘態勢に入る。
「まだ戦うつもりか…?」
亜里沙はうなずく。その目は、今度こそ勝つという意志に満ちていた。
「絶対に…次は、勝つ。」




