表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ログインガチャ:選ばれた運命、進むべき道  作者: 紅月ヨルカ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/32

新たな旅立ち

この世界に光を取り戻してから、一日が経過していた。


闇の侵食が消え去り、世界はまばゆい光に包まれていた。

灰色に沈んでいた大地には緑が戻り、空を覆っていた黒雲はどこかへと消えていた。建物の影には暖かな陽射しが差し込み、石畳は金色の光を反射している。


静寂の中で、小鳥のさえずりが戻ってきた。木々がそよ風に揺れ、人々のざわめきがどこからか聞こえてくる。


まるで世界が、ようやく本来の姿を取り戻したかのように―


「…ふふっ、明るいねぇ。」

イフが柔らかく微笑みながら、空を見上げる。


「うん。これが、この世界の本当の姿なんだね。」

亜里沙は光に包まれた町を眺めながら、深く息を吐いた。


「ふーん……意外と、悪くないじゃない。」

「何が?」

「この景色よ。まあ、私には関係ないけどね。」


イフは肩をすくめながら言うが、その声はどこか穏やかだった。


「ふふ、意外と気に入ってるんでしょ?」

「さあ、どうかしら?」


光を浴びた町の広場では、人々がようやく自由を取り戻し、互いに笑顔を交わしていた。闇に閉ざされていた時間を埋めるように、子どもたちは駆け回り、店主たちは屋台を開き始めていた。


「…ここに住んでた人たち、すごく嬉しそう。」


亜里沙の言葉に、イフはふっと笑う。


「そりゃあ、そうでしょうね。長いこと閉じ込められてたんだから。」


「うん。でも、これでやっと…」


ふと、亜里沙は言葉を止めた。


(私、今”やっと平和になった”って言おうとしたけど…本当にそうなのかな?)


「ねえ、亜里沙。」


イフがふいに真面目な声で言う。


「ん?」


「この世界、どれくらい持つと思う?」


「え…?」


「闇がなくなった世界ってね、案外脆いのよ。ほら、光って、闇があるからこそ輝くものでしょう?」


「それって…また誰かがこの世界を狙うってこと?」


イフは、どこか含みのある笑みを浮かべる。


「かもね。でも、そんなこと知ったこっちゃないわ。私はただ、今を楽しめればそれでいいもの。」


「……」


亜里沙は空を見上げた。

さっきまで見えなかった太陽が、今は雲一つない空の中心で堂々と輝いている。


(この光が、どれくらい続くのか…私はまだ、知らない。)


だけど――


「…今は、これでいいよね。」


「そうね。今はね。」


町は活気を取り戻し、人々は笑顔を交わし合っている。

この瞬間だけは、確かに平和だった。

ギルドに入り亜里沙とイフは、すっかり静かになったギルドの食堂に向かった。今まであんなに人で賑わっていたのに、今はまるで嘘のように閑散としている。


「今まであんなに人がいたのに、嘘みたいに少なくなっちゃったね。」


亜里沙がつぶやくと、イフはこくりと頷く。


「そうだね。ここだともうやることもないから、さっさと次の世界に行ったんだよ。あとは、観光なのか分からないけど、外に出て行った人もいるし。」


「私たちはどうする?」とイフが問いかける。


「うーん……とりあえずセレナに会って、お別れしてこようかな。ほら、私ってクエストとかこなしても全然レベル上がらないし、メインが終わったら次かなって思って。」


亜里沙が笑いながら答えた、そのとき。


ギルドの扉が開き、アルティアが入ってきた。まっすぐ食堂の方へ向かうと、樽酒を注文し、豪快に席へ座る。素手で蓋を叩き割ると、一気に飲み干し、満足げに息をついた。


それから、亜里沙たちの方へ歩いてくる。


「よう、お二人さん。まだいたんだね。」


ご機嫌な様子で言いながら、椅子を引いて座る。


「もうこの世界も堪能したし、そろそろ別の世界に行こうと思ってるんだけど、二人はどうするんだ?」


「もう飽きたの? それって、世界をひと通り見てきたってこと?」


亜里沙が尋ねると、アルティアは「うーん」と考える素振りを見せてから、にやりと笑った。


「実質、この世界のトップを倒した時点で満足したからね~。あと、回復した住民たちから話を聞いたんだけど、吸血鬼が来る前の侵略者はめちゃくちゃだったらしいよ。」


「へぇ~、興味ないって言ってたのに、そういう話はしっかり聞くんだ?」


亜里沙がからかうように言うと、アルティアは笑いながら肩をすくめた。


「まあ、あの吸血鬼がどうやってボスになったのか気になったしな。」


そう言うと、住民から聞いた話を語り始めた。


「侵略者は4人で行動してたらしい。家には勝手に上がり込んで、物を奪ったり、金を巻き上げたりしてたみたいだね。強力な力で街や村を制圧し、逆らう者は容赦なく消していったらしいよ。強力な魔法で吹き飛ばすか、モンスターを召喚して見せしめに殺させたりしてね。恐怖で支配していったってわけ。」


「……それで?」


「そして、いよいよ城に辿り着いて、王を手にかけた時に――あの吸血鬼がやって来て、侵略者を倒したらしい。でも、その後に闇の世界が広がって、瘴気に包まれたんだってさ。」


「なるほどね。住民からしたら、セレナの支配が始まったように見えるわけだ……。本当は違っても、誤解を解くのは難しいよね。」


「まあ、あたしには関係ないことだけどね。もう別の世界に行くつもりだし。もしまた会いたかったら、ギルドのガイドにでも聞いてみな!」


そう言って、アルティアは満面の笑みで手を振ると、そのままギルドのガイドの元へ向かっていった。


「さて……イフ、私たちはセレナのところに行こうか?」


「うん、まだ用事があるんだね。……私はちょっと歩いてきてもいい?」


「別行動しても大丈夫?」


「うん、出発の時には戻るから。」


「わかった。じゃあまた後でね。」


そうして、亜里沙とイフは別行動を取ることになり、亜里沙はセレナのもとへ向かった。

亜里沙達は光の世界を眺めながら城に近づくと、城の前にデカいサングラスを掛けた女が立っていた。


(うわ、デカいサングラス〜)


見た瞬間、そう思ったが、その人物がセレナだと気づいた瞬間——


「うわセレナじゃん、デカいサングラス〜」


思わず、思ったことをそのまま口にしてしまった。


その声を聞いたセレナはゆっくり振り向き、「あー、亜里沙じゃん」と軽く片手を上げて近づいてくる。


近くで見ると、普段の雰囲気と違ってちょっとした”変装”みたいに見えた。

亜里沙は思わず、「外に出て大丈夫なの? どうしてサングラスなんか付けてるの?」と聞いた。


セレナは少し笑いながら、サングラスをずらして赤い瞳をチラッと見せる。

以前よりも少し柔らかい光を帯びている気がした。


「あーこれ? 別に光には耐性あるけど、直接浴びると目眩とか起こしそうだから予防でね」


そう言うと、セレナは肩をすくめながら、サングラスを軽く押し上げる。

まるで「ちょっとおしゃれしてみた」くらいの軽いノリだった。

「それにしても大きいね。よく見たらコウモリの形になってるし……よっぽどコウモリが好きなんだね〜」

そう言いながら、亜里沙はセレナのサングラスを軽く触った。すると、ほんの少し動いた気がした。


「えっ? サングラスが動いた!」


驚く亜里沙に、セレナはキョトンとした顔で返す。


「ん? そりゃ動くよ、コウモリだし。何言ってるの?」


「いやいや、なんか私がおかしいみたいな空気出してるけど、普通はコウモリをサングラスにしないからね?」


思わずツッコむと、セレナはクスクスと笑った。


「まあ、普通はコウモリと一緒に暮らさないしね〜。人にはそれぞれのスタイルがあるからさ」


そう言って肩をすくめた後、真剣な表情になり、本題に入った。


「それで……私も亜里沙と一緒に旅するからね。王子も光が戻った時に見つかったみたいだし、私も侵略者を倒したとはいえ、その後の闇については恨まれてもおかしくないしさ。素直に王子に返した方が、きっと上手くいくと思うんだ。だから、亜里沙の旅に同行させてほしい。よろしく……」


「もちろんだよ! こちらこそよろしくお願いします!」


亜里沙は嬉しそうに言った。正直なところ、心細かったのだ。イフは戦いに参加しないし、自分ひとりでどうすればいいか不安だった。


「そっか、良かった〜。それと、仲間になったついでにお願いがあるんだけど……次の世界は、アルティアが行った所に行ってくれない? 正直、負けたまま引き下がれないんだよね……。それに、一度距離が開くと、もう会えなくなるかもしれないし。その代わり、もうワガママ言わないから、お願い!」


「大丈夫だよ! 私もそのつもりだったし、目的地は一緒だね」


「おぉ、話が早い! 物分かりのいい子で助かるよ〜」


セレナは満足そうに笑いながら、亜里沙の後についてギルドへと向かった。




ギルドに入ると、中は閑散としていた。さっきまでいたアルティアの姿も、すでになかった。


受付の横にあるガイドのカウンターに向かい、亜里沙は尋ねる。


「すみません、アルティアさんはもう次の世界に行きましたか?」


「ええ、ついさっき出発しましたよ。亜里沙さんたちも行きますか?」


「はい、できればアルティアさんと同じ世界をお願いします」


「なるほど。まぁ、中級者向けの世界ですし、問題ないですね。それで、そちらの方もご一緒ですか?」


「はい! チームメンバーです」


「了解しました。では、手続きを進めますね。ゲートを開くので、入ってください。では、エンジョイ♪」


ガイドが軽い調子でそう言うと、目の前に転送ゲートが開かれた。


「よし、行こう!」


亜里沙はゲートへ向かうが、ふと何かを思い出し、入り口の方を振り返った。


「あ、イフを忘れるところだった……」


視線の先には、イフの姿があった。しかし、どこか不機嫌そうに見える。


「お腹空いてるから、食べたら合流するね」


「……またか」


呆れつつも、亜里沙は笑いながら手を振った。


「わかった! またあとでね〜!」


セレナも軽く手を振り、2人はゲートの中へと入っていく。




その頃、ギルドの片隅でイフは1人、静かに呟いた。


「……もう見るところ見たし、亜里沙たちも行ったし、問題ないね」


そう言うと、目の前の食事を見つめ、にやりと笑う。


「いただきます」




一方その頃——


亜里沙とセレナは、次の世界へと降り立っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ