12.最終話
「あぁ、遅れちゃう!」
昨日、早く寝れば良かった。つい、エッセイの本がテンポ良すぎて最後まで読んでしまった。
「塩大福も美味しかったな」
スーパーの物産展で売られていて二つ購入して一気に食べてしまった。一緒に淹れた濃いお茶とも相性がバツグンだったし。
「修も好きそう」
まだやっていたら帰りに買うか。
「って、不味い!出なきゃ!」
季節は12月。師走と書くだけあってバタバタと忙しい仕事も年末になり冬休みをむかえた。
『14時着便で帰るわ』
帰れるか分からないと言っていた彼からメールが来て。数日間だけど、何を食べよう。どこも混んでいるかなとか、色々とここ数日、私の頭の中は大忙しである。
「あ、こっちかな」
そして、空港迄会いに行く事にした。
「凛」
冬休みシーズンなだけあって人で溢れているなか、会えるのかなと少し不安になれば、名を呼ばれた。
「お疲れ」
なんか、うまい言葉も出てこずで。
「おう。こっちは、やっぱ寒いな〜」
少し焼けた感じだけど、他は全く変わっていない。
「空港の中でも結構お店あるけど食べたい物はあるの?」
「魚。とにかく新鮮なやつ」
時差があるから、此方は朝で向こうは夜に毎日のように話をしていたから、予想より寂しくなかった。
「あ、丼がある。いい?」
「いいよ」
「よし!あっちらしい」
修が、カバンとは反対の手で私の手を握り引いて誘導してくれる。まぁ、単に人が多いからだろうけど。
でもさ。
「触れられるの、なんか、やっぱいいね」
修が本物がいるって実感できる。
「なんか言った?」
「特には」
伝えるのは、なんか恥ずかしい。
「年明けとか、どうする?天気悪くなきゃ出かけよう。色々調べないとな」
修も同じような事を考えていたようで。
なんか、些細な事が楽しい。
「あ、帰りに甘いの買おうかな」
「いいねぇ」
今の私、テンションが高いと自分でも分かる。でも、私だけじゃなくて、修も、かなり機嫌がいい。
「また、面白い本を何冊か見つけたから」
「それは、読まないとだな」
好みが合うから、修も気に入るだろう。
「あ、でも」
「でも、何?」
ふいに身を寄せてきて。
『夜は、読む暇ないかも。色々と』
「つ、」
含んだ言い方に、変な声がでちゃった!
「楽しいな」
「楽しくない!」
暫く手を繋いだまま、争いは続いたのだっだ。
〜End〜




