価値観の違い
ほんの少しだけ余談とあとがき。
イラストレーターってこんなやつでも上手いんだよなって話。ちょっと闇かも?
身ばれ怖くないのって? どうでもいいかな。
私が二十歳くらいの頃。絵を本格的に描き始めて二年。筆に重さを感じながらも少しずつ描いていた。そんな時期、私はとあるバイトをしていた。
そこは同い年も多く、先輩も年齢が近い人ばかりだった。まだまだ下手くそな私は自分のSNSアカウントを秘密にしていた。教えてしまうかどうか少し悩んだが一応やめておいた。
バイト仲間との仲はよく、珍しくそのバイトは長く続いた。会社が無くなってしまったが為に続けられなかったがいずれはやめていただろう。
そんなバイト先で同じ歳の一人の男がいた。彼はイラストレーターの大学生だった。目が見えないマッシュ。私と違って身長は高い。ぐぬぬ。
社交的人格な私は彼とある程度仲良くなっていた。お互いアカウントは秘密にしている。ただ彼の絵が上手く、pixivコンテストでも入賞するレベルでフォロワーも多いことを他のバイト仲間達から聞いていた。
彼の両親共に絵を描いて生活しているらしく、彼自身絵は才能だと鼻高々に抜かしていた。身内に絵を描いている人間がいないと成功しないとそう言うのだ。
私自身のアカウントは教えなかったが自分の絵をバイト仲間に見せたりしていた。もちろん彼にもだ。アカウントがバレないようオリジナル。それにフォロワーも三桁にも満たない状態ならバレることはないだろうと思っていた。
――だが私は知っていた。彼の言動、誘導的な会話から自身のアカウントがバレていると。彼はかたくなに私にだけは絵もアカウントも見せなかった。
会話内容から察するに誕生日で絞った。さらに会話から二次創作イラストを探したりしたのだろう。もしかしたら電話番号も可能性の一つかも知れない。
私が彼を不快に思う部分はいくつかある。
あの男のようにたくさん自慢をしてくるのだ。絵のこともそうだがフォロワーの女の子の絵を上手くしてあげたとか私がたまに見せるオリジナルの絵を指摘したりとかだ。だがそれだけならまだいい。
あの男のようにと言ったのは――こんなことを自慢し始めたからだ。
「中学生食ったんだよね。というかよく食うけど。処女でさー」
バイトを休む理由も処女が食いたいから。彼は処女中だった。ファンの若い中学生や高校生の女の子と会って腰を振るのが大好きらしい。
まぁあの男の方は小学生も抱いていたが……
――あぁこいつもか。知らないんだな。自分にとって価値あるものが他人にとって価値があるとは限らないのだと。他人にとっても価値があると思ってる。自慢になっていると思っているんだ。
他人を抱く? ふざけるな気持ち悪い。もちろんそんなこと口には出さない。そんな人格では無い。にこにこと話を聞いてやるのだ。父の話を聞くように。
どうして私の周りはこんなやつばかりなのか。どうでもいいことを羨ましいだろと自慢されても対応に困る。死んでしまいたいほどこの世界に興味がないのに。
だが一番辛かったのはそこじゃない。裏で自分の絵が笑われていたことを知っていたからだ。特にこの同い年の男に。たかだか先に描いて恵まれた環境にいただけのくせに。
別に見られたっていい。黙って隠れてバカにしていたことが許せない。
最後の打ち上げ。私はアカウントを知っていることを打ち明けられた。
「知ってるよ。お前自分で口滑らしてたじゃん」
「えっ、ほんとに?」
知ってる。知ってるさ。みんなが俺のアカウントを知っているのは。
今は他人の絵が上手かろうとどうでもいいが、描き始めたあの頃は同じ歳の人間が上手くてさらには私の絵を稚拙だと笑うのが苦しかった。
ちなみに現在私は二次元にしか興味が湧かない悲しき性欲モンスターです。ものが三次元でも画面の中なら二次元なのでいけます。
リアル三次元は……面倒かな。母親を思い出して吐き気がするし。薄い布団越しではあったものの唇にキスされたり、頬やいろんなとこにキスしてくるから。ウザ絡みが激しいし。
人に触られるのが嫌いだが激しいスキンシップをやめてくれない。一人暮らしをしたい理由のひとつはこれだ。母のまるでペットへ向けるようなスキンシップが嫌いだ。
じゃあ三次元に興味はないのかと問われるとないわけじゃない。ただ希望はないかな。他人と触れあうなんてこと、私が出来るとは思えない。
彼女なんてもっての外。趣味嗜好話し方が変わるコミカルで面倒な人間を好きになってくれるとは思えない。第一疲れると思う。お互いに。
もし相手にとって一番嫌いな人間が主人格となったら? そのときは良くてもずっとは続けられないだろう。人間の精神力には限界がある。人は変わってしまう。
けど私は一生童貞。孤独を約束された男して生きるよ。うぇーん。
――――とまぁこんなお話でした。
こうして描いていると客も家族もあの男も悪く感じるかも知れませんが悪いところばかりではないということをここに明記しておきます。
しっかりと親をしている時も当然ありました。ほったらかしが多くとも親として飯を食わせただけ十分とも思います。宗教に関しては一生許せませんが借金で家計が火の車だったのもありますし、父にとって心のよりどころであったのもまた事実です。
まぁ……両親は自分達が言ったことを覚えていないでしょうけど。
受けた言葉と放った言葉の重みは違いますから。
そういえば私の書いている小説のキャラが似たような経験をしていますがこれは自分を主人公にしよう的な考えではなくリアリティが出るのでは? と思い試してみたのですが無駄なリアリティだったかも知れません。
それに私は私を主人公にすることはできません。どれが私ですか。
――さてっ! ここら辺でお開きにしましょう。ある程度のカットを挟んでしまっていますがこれ以上長くなるとみなさんきっと寝てしまうので。
では……現実はクソ二次元は至高かわいいは正義という言葉を残してまた別の作品でお会いしましょう。