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蚊らくり彼女  作者: ようへい
四章 片想う
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File03・いざ反撃へ

 やはりというか、優吏は仲谷家に捕らわれているようだった。


 ある一室に軟禁されているらしく、では何故連絡してこれたかというと、「手練手管を用いて端末を拝借した」というざっくりした説明がされた。

 経緯や状況をゆっくり説明する余裕はないらしく、それからは要件だけが淡々と送られてきた。


 依頼人の山本も優吏と同じように仲谷家に捕らわれていること。優吏は行動が制限されているため俺と太陽に動いてほしいこと。

 また仲谷の件については国家機密といえるレベルの情報が絡んでいるらしく、作戦の決行にはそれ相応の覚悟が必要ということ。

 そして、決行日は八月二十二日にしてほしいということ──


 それらの情報が届けられた後、「これからまたしばらくは連絡できない」と付け加えられ、優吏からのメッセージは途絶えた。


「優吏って、僕が考えていた以上にタフかもしれない」


 太陽が呆れるように言った。


「これからさらに探りを入れるつもりだから凄いよな。『情報だらけの場所に私を軟禁したことを後悔させる』……なんて言ってるし」


 そう言う俺は俺でもちろん呆れている。

 太陽がやれやれと両手を広げ、天井を仰いだ。


「余裕すら感じさせるよねぇ。捕まってるっていうのにさ」

「蒸し返すつもりはないけどさ、やっぱりあいつには白馬の王子様~なんてのは必要ないんじゃないか?」

「……う~ん、言い返しづらい……」


 ──俺たちはその日、事務所で夜通し作業をした。妙にハイテンションだった。

 優吏への心配と不安にとことん追い詰められ、ずっと温厚だった親友と初めて喧嘩をした。そんなタイミングで張本人から連絡がきたのだから、変なテンションになるのも致し方なしである。


 まあ作業といっても優吏から送られた資料の確認と把握、状況のまとめなんかで、具体的な作戦の立案は後日とした。

 優吏が指定した期日まで十日余り時間が残されている。ひとまずは優吏の無事も分かったことだし、焦っても仕方がない。


 優吏から送られてきた資料には、八月二十二日に行われるレセプションパーティに関する情報がある。対外的には仲谷家主催のパーティとなっているが、流鏑馬志信がホストとして催されるイベントのようだ。


 当日はさまざまな関係者が流鏑馬に帯同する。ポイントはその翌日に、流鏑馬がイギリスに渡航する予定があることだ。

 その目的までは分からないが、山本も同じ便の航空券を購入しているらしい──

 八月二十二日、パーティは空港近くにある大手ホテルで行われる。おそらくは山本もそのホテルに滞在させるつもりだろう。


 そしてもう一つ、重要な事実がある。優吏もそのホテルに連れていかれるというのだ。

 流鏑馬から帯同を命じられたらしく、理由を尋ねると「見せたいものがある」と言われたそうだ。その"見せたいもの"というのが何なのかはまったく予想がつかないが……。ともあれ、八月二十二日は優吏と山本を同時に救出する最大のチャンスとなった。


 俺たちは事務所に集まっては作戦を立て、それを具体的なものに仕上げていった。

 戻ってくるか分からない仲間をただ待つだけの先日までとは違い、俺も太陽も息を吹き返したように生き生きとしていた。


 相手は有力財界人という仲谷家の人間、そして政治家。さらには国家機密レベルの情報が絡むという仲谷椛の秘密──

 俺のような探偵を名乗っているだけの一介の高校生が立ち向かう相手じゃないのは明らかだ。けれど俺たちは必ず仲間と依頼主を助けるつもりだ。


 片想い成仏委員会・探偵事務局をなめるなよ。

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