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蚊らくり彼女  作者: ようへい
一章 片想い成仏委員会
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プロローグ

 片想いは世界の災いだ。


 ひっそり想いを寄せているだとか、恋の成就のため努力しているだとか、そんなふうに一喜一憂するくらいならまだいい。けれど一人の相手にご執心するあまり、他人を巻き込んで不幸に飛び込むような人がいる。

 本人は心底悩んでいると思う。単純に批判できるものではない。──でも、事実としてシンプルに愚かだと思わないか?


 もちろんすべての恋愛を否定するつもりはない。恋愛が人生そのものを豊かにすることだって知っている。けれどそもそも、恋とか愛とかいうのは人類における生殖機能だ。つまりは子孫繁栄のシステムだ。それなのに現実は非効率的な恋愛ばかりではないか。

 好きな人をどうしても諦めきれなくて、どうにもならないのに足掻いて、やっぱりどうにもならなくて、それでも諦められなくて、しまいには相手を、自分を、その周りの人まで、傷つけてしまう。

 そんなことになるならさっさと忘れて次の交尾対象を見つけたらいいのに。生殖機能なのだからそれくらいシンプルでいいじゃないか。


 吊り橋理論を知っているか。人は吊り橋の上で出会った相手に恋愛感情を抱くことがあるという。不安定な足場に対する恐怖を、これは恋愛感情かもしれない、と脳が錯覚するわけだ。有名な心理的メカニズムで偉い学者さんが実証もしている。そんな錯覚に人生を狂わされてどうする。

 恋愛感情なんて脳の機能の一つに過ぎない。ホモ・サピエンスの生殖機能で、子孫繁栄を効率よくするシステムだ。


 ……とはいえ、そんな簡単に割り切れたら苦労しない、という大方の意見も理解できる。

 だからあなたが苦しんでいるのなら。俺はその苦しみを取り除いてあげたい。埋もれた理性を引っ張り出して、沁みついた依存を消し去って、余計な煩悩を空の彼方に放って、憐れなその感情が成仏できるよう祈りもする。

 繰り返すが、恋愛が人生そのものを豊かにすると知っている。ただ、もしあなたの恋があなたを苦しめているのなら、教えてあげたい。


 ──その恋物語が真っ赤な偽物だってことを。

 あなただって本当は目を覚ましたいだろ?


片想い成仏委員会・探偵事務局局長 小湊(こみなと)(しん)

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