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怪物のお茶会においで  作者: 路明(ロア)
Festa di tè 7 カオスな朝食の時間を

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24/54

Fai una colazione caotica. カオスな朝食の時間を

 朝起きると、マルガリータは真っ直ぐに屋敷の奥の厨房へと向かった。

 修道院長の言いつけで怪物(モストロ)の屋敷に滞在することになってしまったが、ただの居候という形はせめて回避したい。

 皿か野菜洗いを手伝おうと思ったが、厨房内を見回したところすでに済んでしまったようだ。

 ミネストローネと肉料理と焼きたてのパンの香りが漂う。

 仮面を付けた死体の使用人が、皿を棚から出し作業テーブルの上に重ねて置く。

 もう朝食の作業は終えたとか。どれだけ早起きなのか。

「えと、モナ・アンジェリカ」

 彼女を作った魔女と同じ名がつけられてるとカルロが言っていた。

「これ運ぶんですか? わたしやります」

 修道服の(そで)をまくる。

 死体の使用人は無言でうなずいた。仕草が穏やかなところにホッとする。

 彼女とは、きのう厨房の位置を確認したさいに一度鉢合わせしている。

 (ひる)んだが、挨拶をしてみるとまともな人だということが分かった。

 少なくとも怪物(モストロ)の男性陣よりはずっと常識的なようだ。

 スプーンやフォークを皿に乗せリビングに運ぶ。

 リビングの猫脚テーブルの上にマルガリータは皿を並べた。

 すでにカーテンが開けられている大きな窓からは、柔らかい朝陽が射し華やかな部屋を照らしている。

「並べ方はこんな風でいいのかしら」

 入室したモナ・アンジェリカに問いかけた。彼女が無言でうなずく。

「お食事は女中部屋かどこかで? わたし、そちらでご一緒してもよろしいでしょうか」

 死体と一緒に食事ということに忌避感がなくもない。

 だが、(はやぶさ)の弟の前で平気で鶏料理を食べるファウストと、その目の前で平然とマナーよく食事をするカルロ、蜂蜜とカスタードクリームに埋もれた料理を嬉しそうに頬張るレオナルドと、カオス過ぎる男性陣と一緒に食事をするくらいならこの物静かな女性の方がいい。

「彼女は食事はしないよ、ガリー」

 後ろから、ヴェールをつけた頭を両手でそっと掴まれる。

 振り向くと、カルロがいた。

「しないって?」

「少しでも塩気が身体に入ると機能停止しちゃうから、人間の食べ物はまず駄目。血液の代わりに動力源になる液体を流してあるから大丈夫なんだってさ」

「は?」

 マルガリータはぽかんとした。

「えと、なに? ……古代の魔術の話を聞いてるみたい」

「超古代の技術だよ」

 カルロが品良く椅子を引いて席に座る。

「超古代……?」

 旧約聖書の時代を言っているのかしらとマルガリータは首を傾げた。

「修道服なの? 昨日渡した服は?」

 カルロが問う。

 昨日この屋敷に到着してすぐに部屋をあてがわれ、ワンピースを何着か渡された。だがそんな普通の女性の服を着ていたら、彼らに囲われてでもいるみたいではないか。

「修道女だもの。修道服でなにが悪いの」

「僕はどちらでもいいけど、兄さんはごちゃごちゃ言うんじゃないかな。朝から辛気臭いとか」

 カルロがテーブルに(ひじ)をつく。

「修道女がお好きなんじゃないの?」

「修道女を引っかけるっていうノリが好きなんだと思う」

 ノリ……。

 マルガリータは思いきり顔を歪めた。

「ノリなんてもので清らかな修道女を(もてあそ)ぶなんて……!」

「うん。だから普通の服に着替えて来た方が安全だよ」

 ……着替えて来ようか。そうマルガリータは思った。




 リビングの扉が開き、大柄な金髪の男性が入室する。

「うわ。朝から辛気くさ」

 マルガリータの修道服姿を見て、ファウストは顔を(しか)めた。

「だから言ったじゃないか。普通の格好しておいで」

 カルロがそう言う。

 ファウストの言いそうな台詞をぴたりと当てたことに、マルガリータは今さらながら感心してしまった。

「こいつに渡したのマリア・ロレイナが着てた服だろ?」

 言いながらファウストが席に着く。

「え……」

 マルガリータは目を丸くした。カルロの方を見る。

 大事に取っていたのだろうか。案外一途な人たちなのかなと思う。

「それもあったけど、全部じゃないよ」

 紅茶を口にしながらカルロが答える。

「二十年前にここに住んだ女の子と、七十年前に仲良くなった姫君と、百年前に一緒に住んだご令嬢のものもあるよ」

「は……?」

 マルガリータは目を丸くした。

「ま、お前が着てもマリア・ロレイナほど映えないけどな」

 運ばれて来た鶏料理をファウストが雑なマナーで頬張る。

 料理にかけられた濃いソースの香りが漂った。

「今はもう(ばばあ)になったみたいだけどな」

 もごもごと料理を食みながらファウストが続ける。

「修道院長をそんな風に言うなんて」

 マルガリータは眉を寄せた。

「あれは俺の女だ。どう言おうが俺の勝手だ」

「なにその傲慢な台詞。というか相手は修道院長よ。破廉恥(はれんち)も大概に……」

「両手に銃を持って役人たちに立ち向かうとか、相変わらずの子だったよ」

 カルロが微笑む。ミネストローネを品良くスプーンですくった。

「あんなガサツな女、そこらの男が相手にできるか」

 もごもごとファウストが鶏料理を食む。

「ガリーとよく似てるよね」

 「えっ」とマルガリータは再び目を丸くした。

 ファウストが顔を上げ、こちらを見る。

「似てねえ。マリア・ロレイナの胸はデカい」

 マルガリータはつい顔を(しか)めた。





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