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光と共に  作者: 藤咲梗花
序章 その日々が、光だった。
18/24

4話 王族(6)




 聖くんを見れば聖くんはうなずいて。あたしは聖くんが用意してくれた、はしの練習ができる子供のトレーニング用のはしあなに指を通した。


 光陽王国こうひおうこく王都おうとにやってくる前から練習していたけど、まだまだれない様子ようす親子丼おやこどん鶏肉とりにくを取って口にふくむ。



「おいしい……! おいしいです」


「なら良かった」


 聖くんはそう言って自分のはしを手に取った。するとレイちゃんが口をひらく。



「……アメリア、一応いちおういっておくけど敬語けいご外していいんだぞ?」


けいご(・・・)……?」


 あたしは言葉の意味がわからずり返す。



丁寧ていねいにしゃべんなくていいぞってことだよ。おいしいなら、おいしいですじゃなくて、おいしいよとかでいいんだぞ」


 そのレイちゃんの言葉に聖くんが説明する。



王族おうぞくだかられてないんでしょ。満瑠みちるだってだれにでも敬語じゃん」


「は? 王族おうぞく?」


「言わなかった? アメリアは魔族まぞくひめだけど」


「魔族の姫……! いや、魔族に追われてる時点で魔族に近い種族しゅぞくなのは予想してたけど、魔族の姫とかきいてねえぞ!」


「姫だったら何か悪いの」


「いやわるいわ! 何度でもいうけどおまえはだれに対してもが高いんだよ!」


「何。満瑠みちるみたいに100さい以上年下に敬語使けいごつかえって言うの。年上はうやまうべきでしょ」


「それはそうだけどな! 立場たちばがあるだろ!」


光輝みつきが許してるんだから別にいいでしょ」


陛下へいかが心広いだけだわ!」


 あたしは会話かいわ内容ないよう理解りかいしていなかったけど、光輝みつきというのは光陽王国こうひおうこくの国王のことだった。あたしはというと、会話を聞きながら一生懸命いっしょうけんめいれないはし夕飯ゆうはんを食べている。


 聖くんはレイちゃんの言葉を全然ぜんぜん気にしてない様子で味噌汁みそしるに口をつけた。そんな聖くんに対して、ったく。聖はこれだからな……! と不満ふまんげなレイちゃん。



「きよさんと、えっと……レイちゃん、はなかよくないんですか?」


 子供のあたしは空気というモノを読まずに疑問ぎもんをただ口にする。レイちゃんの動きだけが止まって、聖くんはごはんを食べていて。



「……べつにふつうだな。なかよくもなく、べつにわるくもなく」


 そうレイちゃんが話せば、聖くんも答える。



べつわるくない。いつもこうだけど」


大体だいたい原因げんいんおまえのせいだわ」


 聖くんはレイちゃんのその言葉を聞き流してご飯を食べ続けている。



「ケンカしてたのでわるいのかなって思いました」


 そうあたしが話せばレイちゃんは考える。



(子どもから見たら言い合いとかはケンカに見えるのか)


 レイちゃんは口をひらく。



「アレはただの言い合いだから。ケンカじゃない」


「? ケンカじゃないんですか?」


 あたしはレイちゃんの言葉がに落ちなくて不思議ふしぎそうな顔をする。



「あー説明せつめいするってなるとムズいな」


 そうつぶやいて考えようとするレイちゃんに向かって、そんなことどうでもいいからレイはめし食べて。と聖くんが口にした。



「……そうするわ」


 レイちゃんはそう口にしてどんぶりを手にした。



「ねえ」


「? はい」


 聖くんがあたしの方を見て言うから、あたしは返事をする。



「レイがレイちゃんなら、俺も聖くんが良いんだけど」


「きよ……くん、ですか?」


「そう。そうんでよ」


「きよさんはイヤですか?」


我慢がまんしてただけ。聖さんは他人行儀たにんぎょうぎでヤダ」


「たにんぎょうぎ?」


 あたしが言葉がむずかしくてに落ちないとレイちゃんが説明してくれる。



なかよくないみたいでヤダって言いたいんだよ」


 あたしはレイちゃんの説明になんとなく聖くんの言った言葉の意味がわかる。



「きよ、くん……」


「なに?」


「きよくんってよぶ(・・)のは……なかよしなんですか?」


「そうだけど? レイみたいに聖でもいいけどね。──でも、聖は呼びにくいでしょ? 俺年上(としうえ)だし」


 あたしはその言葉にうなずく。



「聖くんってぶのヤダ?」


 あたしは聖くんの言葉に首を横にる。



「きよくんと私は……なかよし?」


「俺とあんたは仲良しだよ」


「きよくんと私はなかよし……きよくんってよぶ(・・)のはなかよし……」


 あたしは口を動かして難しそうな顔で言われた言葉を整理せいりする。あたしのつぶやきに聖くんはうなずく。そして聖くんが言った。



「だから聖くんってんで」


「……きよくん」


 あたしがそうこぼすと、うん。って聖くんは言う。聖くんの反応はんのうにあたしは言うんだ。



「なら、私とずっとなかよくしてくれますか」


「そんなの当たり前じゃん」


 あたしはその言葉にうれしくなる。



「よかったな、アメリア」


 レイちゃんの言葉に、あたしはうなずいて。そうして、食事の時間が過ぎていったんだ。




 ◇◇◇




 玉座ぎょくざけられた比較的ひかくてき大きい掛け時計どけいが20時数分(すうふん)きざむ。


 夕食を終えた王の元へ、報告書ほうこくしょやら資料しりょうやらを持ってやって来る臣下達しんかたち


 そのような中に、無礼ぶれいを知らないさいたる男、佐倉聖さくら きよあらわれる。部屋の入り口にたたず番人ばんにんむかえ入れず、勝手かってに入って来た所を見るにノックもせずに入ったのだろう。


 玉座ぎょくざの方へ歩いて来る姿すがたに、王はうれしそうな表情ひょうじょうで立ち上がった。


 いつものごとくなんです、おうよ。アラサー男性だんせいがそのようかおをしたところでだれとくいたしませんよ。と思った言葉はむねうちとどめる。



「聖様……! もどられたというのは本当だったのですね!」


 そのような王にすかさずいさめる言葉をはなつのは、側近そっきんである私だ。



「王よ! 何度も申し上げますが、いかに佐倉様さくらさまと言えども貴方あなた一国いっこくの王、立場たちばをお考えなさい。貴方様あなたさまも、ここが王のだとわかっているならノックをされませい」


礼離れいりはいつも同じことを言うね? 聖様きよさまぼくの親も同然どうぜんなんだから良いんだよ?」


 そう同じ主張しゅちょうを話す王。実際じっさい不老不死ふろうふしである佐倉聖は、王が子供だったころ王太子おうたいしで有らせられた父君ちちぎみくした王の父親代ちちおやがわりだったのはたしかで、それはいまも変わらない。だが、それはそれだ。佐倉聖は太上王だいじょうおうでも無いし、王族おうぞくでも無いのだから。



「ですが、貴方は王! お立場を考えて下さい」


「まあまあ。そんなにおこらなくても良いと思うよ? それで、聖様は帰りの挨拶あいさつに来てくれたのですか?」


 王はいつも通り私をなだめる。そして佐倉聖に向き直るとたずねた。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です。 前回に引き続き、団らんがメインの会で、聖君に発言に対し、レイちゃんが苦言を呈して、「レイちゃん頑張れ」と応援していました。 特殊な環境に身をおいているから、というの…
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