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光と共に  作者: 藤咲梗花
序章 その日々が、光だった。
17/24

4話 王族(5)

 



「俺と入るわけにいかないんだから当たり前でしょ」


 聖くんは夕飯ゆうはん支度したくをする手をめてレイちゃんにそう答える。聖くんの顔はまゆをひそめたまま不満ふまんそうだ。レイちゃんはその顔を見て言う。



めてないわ。そんな顔すんなって」


 おれがいる時くらい風呂ふろに入れてやろうって思って来ただけだからな。そう話すレイちゃん。



「ってわけで、夕飯ゆうめしたのむわ」


 レイちゃんはそう続けた。



「はあ? めしくらい食べてくればいいでしょ」


 聖くんは意味解いみわかんないとでも言うようにそう反応はんのうする。



「まだ5時半(ごじはん)だぞ?」


 レイちゃんが時計どけい視線しせんをやってそう答える。聖くんはさらに言う。



「だから、食べ終わってから来ればよかったでしょ」


「いったん帰れっていうのか?」


「…………」


 レイちゃんの言葉に聖くんはだまむ。その様子を見てレイちゃんは玄関げんかんくつぐと家に上がった。そのままレイちゃんは玄関げんかんから見て右側みぎがわのリビングに行き、ソファにこしかける。


 ちなみに玄関から見て左はダイニングで、ダイニングテーブルやダイニングチェアが置かれていて。ダイニングの横にキッチンがあるという配置はいちだった。


 聖くんはだまったまま不機嫌ふきげんそうに作業さぎょう再開さいかいする。あたしはそれを見て何も言わずに途中とちゅうだったトマトを切った。



「聖……子どもに気をつかわせるのはどうかと思うわ。いつもそうなのか? そのうちきらわれてもしらねぇぞ」


うるさいんだけど」


 後ろをふり返ってレイちゃんにしかめっつらを向けると聖くんはそう言った。



「気を遣わせてるのは事実だろ。なあアメリア。こわいよな」


 レイちゃんがそうあたしに同意どういもとめる。



「えっと……」


 あたしの反応はんのうを見て、レイもこまらせてるのに何言ってるの。と言う聖くん。



「アメリアをこまらせてる自覚じかくあるならやめろよな。おれらはおまえのそんな態度たいどなんてれてるけど、アメリアはまだ小さいんだぞ」


 レイちゃんはそう話す。



「……」


 無言むごん不服ふふくそうな顔になる聖くん。



毎度まいど毎度のことだけど、おまえってホント、不満ふまんな時とかだけ表情豊ひょうじょうゆたかだよな。わらうことなんてほぼないのにさ」


 そう口にするレイちゃんに、うるさい。とこぼして聖くんはキッチンに向き直った。


 レイちゃんはそんな聖くんを見て、まゆを八の字にして苦笑交くしょうまじりだ。


 子供こどものあたしは聖くんとレイちゃんはなかわるいのかなと思った。そうやって言い合えるのは仲がいからだと、おさないあたしにはわからなかったんだ。








 夕食ゆうしょくができる。かおりがキッチンの大きいフライパンから香った。聖くんがりつけていく。


 子供(よう)のダイニングチェアにすわるあたしの目の前に、2つの大きなどんぶりと、小さなどんぶりが置かれる。


 ごはんの上に鶏肉とりにくたまごという親子丼おやこどんだった。



「おいしそうです……!」


 あたしは感嘆かんたんの声をらす。



「いいにおいだな」


 レイちゃんもダイニングにやって来てそう言う。



「レイ、味噌汁みそしる


「はいよ」


 レイちゃんは味噌汁みそしるをよそる聖くんのもとへ行き、よそり終わったおわんを受け取ってダイニングテーブルの上にはこんだ。


 聖くんとレイちゃんがせきに着く。あたしのとなりにレイちゃん。前に聖くん。そして2人は手を合わせて「いただきます」と口にする。


 あたしは通訳つうやくされなかったその言葉に、え……? と困惑こんわくする。目を見開みひらいて動作どうさまってしまうと、聖くんがどうかしたの。と声をかけてくる。



「いま、通訳の魔法まほう使ってたのに言葉がわからなかったんです」


「ああ、もしかして『いただきます』か?」


 レイちゃんはそう口にした。



「いただきます?」


 あたしは不思議ふしぎそうにその聞こえた言葉をぎこちなくり返す。



「おまじないだよ。めしを作ってくれた人への感謝かんしゃや、おれらが食べるために犠牲ぎせいになってくれた生き物への感謝をめてそう言うんだ」


 な、聖。そう言って説明せつめいしてくれるレイちゃん。



とりとか、あんたも魔獣まじゅうとか食べるでしょ? そのいのちに、ありがとうって意味をめて、こうやって手を合わせて『いただきます』って言うの」


 聖くんは両手りょうてを合わせてそう話す。



「あんたもここでらすんだからやったほうがいいかもね。……できる?」


 そう聖くんに言われて、あたしはこ、こうですか……? と両手を合わせてみる。



「そう。それで『いただきます』って言うの」


「い、いただ、き、ます」


 あたしがれない言葉に一生懸命いっしょうけんめい言うと、レイちゃんは笑顔えがおになって言う。



「そうそう。はじめてのわりには上手うまいじゃん」


「俺のセリフ取らないでくれる?」


 聖くんがレイちゃんに言う。そして聖くんが目の前にすわるあたしを見て口にする。



大丈夫だいじょうぶ上手じょうずだったしれていけばもっと上手うまくなる」


 そう言われてホッとするあたし。レイちゃんが、さ、食べるぞ。めしめちまう。と口にしてはしを手に取った。



 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れさまです。 今回は食卓の回でしたね。 こういう何気ない日常風景というのは、物語においてもまた登場人物達においても必要なことではないかと思います。 落ち着ける所がある、という…
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