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女神様から強い武器が貰えたと思ったら何とネギでした。

「毛が黒くなったね。まさか、それだけってことはないんでしょう?」

「当たり前だろ。俺はシロとは違って女にだって優しくねぇから覚悟しろよ」

 口調が変わっている。それにシロ? こいつまさか多重人格、いや多重魔物格なのか。

「シロってのはさっきまで私が話していた魔物? それじゃ、あなたは一体何なの?」

「シロからはクロと呼ばれている。シロとクロ。俺達は二人で魔王様から生み出されし魔物、オセロなんだ」

「なるほどね。それじゃ、あなたの力がどんなものか見せてもらいましょうか」


 出来れば、マジカルキャノンを使って早めに決着をつけたいところではあるが、相手がどんな能力を使うか読めない以上、迂闊に使うことは出来ない。

 オセロとの距離は五メートルほどか。最大速でオセロに接近し、斬撃をお見舞いしようと考えた。


「どうした、来ないのか? ならば……」

「ロゼ・スモーク」

 先手必勝。そう考えた私は魔法でピンク色の煙を手から吐き出し、オセロに浴びせる。

 この煙自体には全く有毒性は無い。主に目くらましに使う。

「なんだぁ!? この煙は」

 意表を突いた隙に真横からオセロに斬りかかる。刃がオセロの右腕に喰い込んでいった。

 精一杯、刀を振るも何と刀身が折れてしまった。とんでもなく頑丈な腕である。

「イテェじゃねえか、この!」


 顔面にオセロの拳が迫り来る。咄嗟に頭を下げて、避けると凄まじい風圧が吹き荒れるのを感じた。ふと振り返ると、近くにいた何人かの人間は態勢を崩しているのが見えた。

 恐怖を感じた私は本能的にオセロから距離を取る。

 こんなのを喰らったら最悪死んでしまってもおかしくはない。

 しかも、刀が折れてしまった。だが、それでも負けるわけにはいかない。ジグザグに動いて、オセロに接近する。


「喰らえ!」

 オセロの脳天に思いっきり蹴りを入れてやった。しかし、オセロは顔色ひとつ変えない。

「中々、威勢がいいじゃねぇか。魔法少女」

「つ……!」

 私の脚から鈍い痛みを感じた。攻撃したつもりが自分の方がダメージを負うとはなんたる不覚か。

「オラァ!」


 後ろに下がり、オセロのパンチを避けたが、風圧により自分の身体が数メートル吹き飛ぶ。

 シロの能力が高速移動なのに対し、クロの能力は頑丈な身体と馬鹿力ってところか。

 だが、弱点が無いわけではない。


「どうした、魔法少女。もう終わりか? 俺の力に恐れをなしたか?」

「笑わせないで。何を勘違いしているのか知らないけど勝つのは私だよ。刀が折れたのは想定外だったけど、昨日身につけた新しい魔法を試させてもらうから」




 それは昨日の夜九時頃、私が部屋でOmaeTubeを視聴していると、ミルフィーが話しかけてきた。

「感じる……咲から新しい魔法の力を感じるよ!」

「ちょっと、ミルフィー。今良いところだから静かにしといてくれる?」


 ちなみに私が視聴しているのは某有名実況者が最新サバイバルホラーゲームをプレイしている動画であった。

 私は怖いのが苦手なため、自分でホラーゲームをプレイすることはできないが観るのは好きなのである。こういう人はきっと私以外にもいることだろう。


「動画なんて後でいいでしょ! 新しい魔法、試してみてよ」

「えぇ〜!? 面倒くさいなぁ」

 どうせ新しい魔法たって大した魔法じゃないだろう。せいぜい、どこかの部位がほんのちょっとだけ強くなるくらいじゃないだろうか。

「つべこべ言わずさっさとやる! いきなり実戦でやろうってなってもできないんだからね」

「分かったよ。全く……」

 私は精神を集中させ、魔法を使うことにした。魔法自体は変身しなくても使うことができる。

 新しい魔法が発動したのか部屋の床に大きな水色の魔法陣が出現する。しかし、何も起こらない。

「そ、その魔法は! 咲、その魔法陣の中に何かを入れてみて」

「何かって言われても……」

 ふと、机の上に置いてあるシャープペンシルが目に止まった。これは百円ショップ、タイソーで購入した何の変哲も無いシャープペンシルである。


 私はこれを魔法陣の中に投下してみることにした。すると、魔法陣の中から葉っぱで出来た輪っかを被り、白いドレスのような服を纏った女性が現れた。


「あなたが落としたのはハーゲンダッツですか? それともショートケーキですか?」

 あー、なるほどね。完全に理解した。これはあれだ。金の斧みたいな魔法だ。

 魔法陣の中に物を落とすと女神が現れ、どちらを落としたのか尋ねてくる。そして、正直に答えると自分が落としたものと女神が持っているものを貰えるってやつだな。

 しかし、シャーペンを落としたのにどうしてハーゲンダッツとショートケーキなのだろうか。全く意味が分からない。

「ほら、咲。何を落としたのか答えないと!」

「私が落としたのは何の変哲もないシャーペンです」

 正直に答えると女神はニッコリと微笑んだ。

「あなたは正直ですね。あなたにはこちらの岩手銘菓かもめの玉子を与えましょう」

「あ、ありがとうございます……」


 女神からかもめの玉子を受け取った。かもめの玉子とは黄味餡を玉子状にカステラ生地で焼き上げ、全体をホワイトチョコで包んだ岩手県内でも有名なお菓子である。

 女神はそのまま魔法陣の中に戻っていくと、魔法陣は瞬く間に消えていった。


「新しい魔法、成功したみたいだね! ちなみにこの魔法は一度発動すると、しばらく使えないから注意するんだよ」

「うん、分かった……けど、この魔法全く意味が分からないんだけど。どうしてシャーペン落としたのにかもめの玉子が渡されるの?」

「そんなの僕にも分からないよ。魔法とは解明できない物だからね!」

「ふーん、そういうもんかぁ……」

 私はかもめの玉子を食べることにした。口の中に放り込むと、ホワイトチョコの甘い味が広がり、齧ると柔らかいカステラの感触と黄味餡の美味しさにとても幸せな気分になる。

「咲! それ、美味しいの?」

「うん、とっても。やっぱりお菓子といったらかもめの玉子だね」

「それは良かった。あと、さっきの魔法は武器召喚の魔法と併用するのがオススメだよ。取り出した武器をさっきの魔法で強い武器と交換してもらえばいいよ」

「なるほど。次の戦いで試してみるよ」




 大きく息を吸い込んで精神を研ぎ澄ます。早速、私は新しい魔法を使うことにした。

「それじゃ、いくよ。『生贄の泉』!」

 地面に水色の魔法陣が発生し、そこへ折れてしまった日本刀を入れる。案の定、女神が魔法陣の中から出てきた。

 女神は右手にロケットランチャー、左手にマシンガンライフルを持っている。おいおい、何だよその武器。バ○オハザードかよ。

「魔法陣から出てきたあいつは魔法少女の味方か? おもしれぇ。相手してやんぜ!」

 オセロは女神に殴りかかった。やばい、武器を貰う前に女神がやられてしまう。

 しかし、女神はマシンガンライフルをオセロに向けると容赦無く発砲した。

「ワットザファック」


 女神様、随分と口が悪いようで。銃弾は幸い(?)にもオセロに被弾せず全て地面に当たったが、当のオセロはビビったのかその場で立ち尽くしていた。


「魔法少女咲。あなたが落としたのはこのRPG–7ですか? それともSVLK–14Sですか?」

 ふむ、どっちかどっちか分からんな。そう思いつつも正直に答えることにした。

 きっと、とんでもなく強い武器が貰えることだろう。

「私が落としたのは折れてしまった日本刀です!」

「あなたは正直ですね。では……」

 女神は一度魔法陣の中に戻ると、再び出てきた。さぁ、一体何が貰えるんだ!?

 次の瞬間、私はとんでもないものを見た。女神が持っていたものそれは――

「あなたにはこちらを授けます。魔法少女サキ、ご武運を祈ります。では」


 私は女神からネギを授かった。ネギ、それは岩手県内のスーパーであればどこでも売られているであろう野菜である。

 豆知識であるが、緑色の部分はバナナの皮の百倍滑りやすい。


「ふ、ふ……ふっざけんなーーー!」

 私は怒りのあまり公衆の面前で叫んでしまった。なんだこれは。あんまりやないかい! 

 女神様から強い武器が貰えたと思ったら何とネギでした。

 あれ、なんかこれ小説家になろうの作品とかにありそうな題名じゃない? いや、無いか。

「な、何ということでしょう! 突如、現れた女神。そこで授けられた武器は何とネギでした!」

 めんけぇテレビのアナウンサーがご丁寧にも状況を説明してくれた。これも何かなろう作品にありそうな題名だね。いや、無いか。

「あははは! どうした、魔法少女。ここぞとばかりに現れた女神。だが、渡してきたのはただのネギだったってか?」

「どいつもこいつもなろう作品にありそうな題名ばかり言いやがって……」

 私が悪態をついていると、ミルフィーがトントンと私の肩を叩いてきた。一体、どうしたというのだろうか。

「咲。落ち込むことはないよ。この武器はね。別名、ドンパ……」

「いいよ、もう。それ以上は言わないで。それじゃ、オセロ。戦いましょうか」

「お、そうだな」

 気を取り直して戦闘を再開することにした。とりあえずオセロの懐に入り、顔面目掛けてド○パッチソードを振った。

「ぐわああああああ!」


 何ということでしょう。日本刀でも通用しなかったのにオセロは悲鳴を上げながら思いっきり吹っ飛んでいった。

 お、恐るべし、ド○パッチソード。私は遠くへ飛ばされたオセロにトドメを刺すべく、奴を追い掛けた。

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