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オセロとリバース

「何ですか、あなたは? 魔法少女では無いようですが」

「私の名前はバーニング・プリンス。岩手を守る正義の人間だ。さぁ、魔物よ。覚悟するがいい!」

「ほう、一体どうするというのでしょうか?」

「闇の業火に焼かれて死ぬが良い! 『ファイア・プロージョン』!」

 オセロが立っていた場所に強烈な爆発が起こる。周囲の人たちは好奇の目でその光景を見ていた。

「な、何ということでしょう! 突如として現れた正義のヒーロー、バーニング・プリンスが魔物を爆発によって倒してしまいました!」

 アナウンサーが興奮冷めやらぬ様子で実況する。これはやったか……やったのか?

 バーニング・プリンスはカメラに堂々と近づいてきた。

「岩手県のみんな、魔物は無事倒した! 安心していいぞ。あっはははー!」

 カメラに向かって愉快そうに話すバーニング・プリンスであったが、ミルフィーは私にこう耳打ちしてきた。

「咲、魔物はまだ生きているよ」

「一体、何を勝ち誇ってるんですか?」

「何……ぐはぁ!?」


 バーニング・プリンスが振り向くと、オセロに殴り飛ばされた。口から血を流していてとても痛そうだな。

 オセロはカメラに向かって話し出した。


「魔法少女。早く出てきなさい! 本当にこの石割桜を私のこの鋭い爪でズダズダに切り裂いてしまいますよ!」

 確かにオセロの爪は長く鋭いため、頑張れば樹を斬れそうな感じがする。

「咲。行ってきな」

 出来ればカメラに姿を映したくはないがそうも言っていられないか。

「うん。分かったよ」

 盛岡地方裁判所の敷地内に足を踏み入れる。私の存在に気づいた人間は一斉に視線を私に向けた。

「き、君は……魔法少女サキ」

「バーニング・プリンス。大丈夫?」

 バーニング・プリンスは立ち上がった。頭でも打っておかしくなったのか突然、「ふはははは!」と笑い出してきた為、私はドン引きしてしまった。

「勿の論! 私ならこのくらいチャッラヘッチャラさ! さぁ、魔法少女。昨日のように共に戦おうではないか」

「あなたが魔法少女ですか……ふん、実際に見ると大したこと無さそうですね」

「調子に乗んなよ、このニャンコ野郎。お前なんか秒殺してやるから覚悟しな」

 私は武器召喚の魔法を使って戦おうとした。すると、何を思ったかバーニング・プリンスは私の肩にポンと手を置いてきた。

「バーニング・プリンス……?」

「魔法少女サキ! 一体、何だその言葉遣いは!」

「えぇ……」

 何を急にキレてやがるんだ、この変態魔術師は。早く魔物を倒して、帰って寝たいんだけど。というか今まさに眠いんだけど。

「女性は清く正しくカ◯タックじゃなければならないだろう!」

「何だカ◯タックって! いちいちネタが古いんだよ! いや、カ◯タックが何なのか本当に分からないけど。今、まさに戦おうとしてるんだからちょっと黙っててもらえる?」

「か、カ◯タックをご存知でない!? そ、そんなバカな……」


 ショックを受け、何やらブツブツ呟いているバーニング・プリンスのことをほっとき、武器召喚の魔法を発動した。ピンク色の魔法陣から武器を取り出す。

 こい、Sランク武器! バズーカとかだったら最高である。しかし、出てきたのはバズーカでは無かった。


「日本刀か……結構いいじゃん」

 日本刀――それは漫画やライトノベルなどで大活躍する強力な武器だ。

 切れ味が良く、中学時代に剣道部だった私とも相性が良いAランク級の武器である。ちなみにハリセンはDランクだ。

「ふん、そのようなので私に勝つつもりですか」

「まぁ、そのつもりだよ」

 オセロに向かって踏み込み、間合いに入る。鞘から刀身を抜き、思いっきり振り向く。

 しかし、オセロは後ろ向きのまま走って避けた。

「なかなか良い太刀筋ですね。額の毛が少しだけ斬られてしまいました」

「やっぱり速いね、あなた」


 今日は筋肉痛も無くかなり絶好調なのだが、オセロの移動速度はとてつもなく速かった。

 斬るのは少々難しそう。ならば……私は身を屈め、さっきよりも強く地面を蹴る。

 刃を真っ直ぐ、オセロの身体に狙いを定めて突き出した。


「おっと、これは危ない」

 オセロは身体を反転させ、日本刀の突きを避ける。私は手首を捻り、刀を横に振った。

 しかし、オセロは高く跳躍すると、私の背後に着地した。

「この……」

 後ろを振り向く間も無く、自分の頭から強い衝撃と痛みを感じた。気づけば私の身体は宙に舞っている。

 どうやらオセロに蹴られてしまったようだ。

「危ない、魔法少女サキ!」

 バーニング・プリンスが私の身体をキャッチし、抱きかかえてくれた。

「あ、ありがとう……もう大丈夫だから降ろしてくれる?」

「うむ、分かった」


 オセロは余裕そうにこちらを見つめ、柔和な笑みを浮かべていた。あいつは自分が負けるなんてことは微塵にも考えていないだろう。

 付け入るとしたらきっとそこにチャンスがある。マジカルキャノンを使うべきか……いや、万が一避けられたら、また筋肉痛に襲われてしまう。まだ使うべきタイミングではない。


「ねぇ、バーニング・プリンス。まだ魔法は使える?」

「え? あぁ、まだ使えるが……」

 悔しいが私一人じゃオセロに攻撃を当てるのは困難である。ここはバーニング・プリンスと協力してオセロの隙を作るのが最善手だろう。

「協力して、バーニング・プリンス。あなたにはひたすらオセロを攻撃して隙を作って欲しいの」

「なるほど、隙が出来たところに魔法少女サキが強烈な一撃を叩き込むという訳だな!」

 オセロは退屈そうに欠伸をしている。その余裕そうな態度、これから私達がぶっ潰してやる。

「お二人とも、作戦会議は終わりましたか?」

「うむ! では、行くぞ。『バーニング・フルフレイム』!」


 両手から熱い炎を放出する。案の定、オセロは走って炎から遠ざかった。しばらくの間、バーニング・プリンスは炎を出し続け、オセロは逃げ続けた。

 いくら素早いオセロでもいずれはバテる時が来るはず。


「ええい、鬱陶しい! 良い加減、チンケな炎を吐き出すのはおやめなさい」

 オセロが今までよりも速く移動した。バーニング・プリンスの背後に移動し、鋭い爪で背中を攻撃しようとしていた。

「そう来ると思った!」


 オセロは確かに速いが、攻撃パターンが引っ掻くことくらいしかない。ならば、またバカのひとつ覚えのように背後に回り、攻撃してくると読んでいたのである。

 日本刀でオセロの右脚を斬りつける。オセロは一瞬、顔をしかめた後、後ろに下がっていった。

 タイミングは完璧だと思ったのだが、そこまで大きなダメージを入れることは出来なかった。

 だが、右脚を負傷したからさっきのような素早い動きは困難になったはずだ。


「皆さん! ついに魔法少女とバーニング・プリンスが魔物にダメージを与えました。このまま勝利なるか!?」

 めんけぇテレビのアナウンサーは戦況が大きく変わったことを報道した。後はマジカルキャノンを当てれば勝利となるだろう。

「さぁ、オセロ。こっからは私達のターンだけどいいよね? 答えは聞いてあげないけども」

「ふ、ふふふふ……確かに少々あなた方を舐めておりました。それは認めましょう。ですが、私の能力がただ素早く動けるだけとでも思いですか?」

「な、何だって?」


 まさか、まだ何か隠し持っている魔法でもあるのか? だが、こっちは二対一。有利なのはこっちだ。

 そう思い、バーニング・プリンスに視線を送ると、なぜか彼はしゃがみ込んで頭を抱えていた。


「ちょ、ちょっと……バーニング・プリンス。どうしたの?」

「すまない……魔法を使いすぎて頭が痛くなった」

 魔法は使いすぎると副作用で体調が悪くなる。マジカルキャノン発射直後に筋肉痛に苛まれるのも副作用のせいである。

 ここからは実質一人でオセロと戦わなければならない。気を引き締めていかねば。

「おやおや、相方さんは具合を悪くしましたか。では、私の力を見せましょうか。『リバース』」


 オセロの身体から何やら黒いオーラのようなものが出たかと思うと、白い毛並みが見る見るうちに黒色へと変化した。

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