初めてのライブ
「今度Svivalのライブがあるんだって!」
緑が丸くて大きな目を一層大きくして楽しそうに、みずきにそう告げた。
「え?そうなの?絶対行きたいね!行こうよ、行こうよ。」
みずきは嬉しくて目を輝かせて緑をライブに誘った。
「なんだか2人が一緒にいるとまるでアイドルみたいだね」
近くに居た真面目な岡田さんが嬉しそうに話に入ってきた。
みずきは照れて目を細めてはにかみながら
「そんな事ないよ、三沢さんは可愛いけどね」
と答えた。
女優になる事が夢のみずきは嬉しくてくすぐったい気持ちになった。
ライブの日は夏休みの部活の無い日だった。
みずきはヒカリのビジュアルじゃなく、
歌詞も大好きだった。
「君を好きな気持ち」という曲の、
「友達以上恋人未満の恋でも好きだよ
心で繋がっていたいんだ」
という歌詞が気に入っていた。
あんなにかっこよくて純粋な人はいないと信じていた。
Svivalはこの曲で人気を集めていた。
渋谷のハチ公前で緑と会ったみずきと緑は
「今日何を歌うのかな?」
「どんな格好かな?」
などと盛り上がりながら会場へと向かい、
ホールの2階の前の方の席に座った。
ブザーの音とともに幕が上がり、
2人の姿が現れた。
会場は熱気に包まれ、黄色い声が上がった。
そして、音楽にみずきは身を任せた。
ギターを弾くヒカリの姿は何処か孤独感が漂っていた。曲のせいでそう感じたのかもしれない。
2人はライブの後、そのテンションのまま、
出待ちをする事にした。
駅とは反対側に向かう女の子達の流れに乗って、
2人は長いロープが張られた最後のほうの、最前列になんとか位置を取れた。
夏の夜独特の解放感を感じる空気のなか、
少しくらい家に帰るのが遅くなってもいいかなという気持ちがみずきにはあった。