よびかた
今日も送迎バスで、ひよりと隣同士に座る。
本来ひよりの隣は競争率が高いのだが、最近は対策としてゆきと同時に乗るようになったので、今はゆき専用の場所になっていた
「ねーゆきちゃん」
「なに?」
「あのね……」
どうしたんだろう、改まって。
「ゆっきーってよんでも、いい?」
呼び方の変更の打診だった。
ゆきには似合わず元気なニックネームだが、ひよりが言うとしっくりくる。
「いいよ」
許可を出すと、いつもの笑顔になる。
「わたしいがいによばせちゃだめだよっ!」
なぜ釘を打つ必要があるのか。
◇◇◇
「えへへ〜! ゆっきー!」
「...…」
「ゆっきー!」
「..….なに」
「ゆっきーっ!」
「うん……」
バスを降りてから、ずっとこの調子だ。
特別な呼び方が、また一層仲を深めたのだ。
「そうだっ! ゆっきーもわたしのよびかたかえてみて!」
ひよりの、呼び方……。
ひよひよとかひよりんとか、咄嗟に思いつくものはあっても、それをゆきが呼ぶには元気さが足りない。
そして、ゆきは名前を考えるのはあまり得意ではないようで、
「ひよりは...ひよりだから.....」
考えた末、やっぱり思いつかないと結論が出た。
「えへへ〜! そっか〜!」
しかし、ひよりが嬉しそうだから、いっか。
「これからもよろしくね!ゆっきー!」




