表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゆきちゃん  作者: たけお
小学校編
21/23

席替え

 ひよりと登校して、道中でかおりやみなに会って、教室前で別れた。


 学校生活はここから始まる。


 今日のチャレンジはずばり、みんなに挨拶をすること。挨拶は会話の始まりであり、友情関係の始まりなのだ。たぶん。


 作戦はバッチリ立ててきた、さあ、あとは扉を開けるだけ!


「開ける……だけ……」


「早く入りなさいよ」


 ビックリした。後ろに立たないでよ……忍かな?


 いやー、すまないすまない。と、言いながら振り返った。


 その子は、髪は黒色まま黒色で、その艶のある長い髪は綺麗に切り揃えられていて、真っ直ぐ腰のあたりまで伸びている。


 まるで天使のようだとは、よく言ったものだ。て、あれ? 何か既視感が。


 その子は、私の顔を念入りに見ると、驚いた顔をして言った。


「なんであなたがここに居るのよ……」


 やっぱり、知り合いだったみたいだ。


「どこかでお会いしましたっけ?」


 わざと白々しく言ってみた。


「正月、私のベッド」


 つい手をポンと叩いて感嘆の声を上げた。その子と想像していた子の顔を徐々にリンクして、それが本当だということを思わせた。


 私は顔を見られないように隠した。嫌な笑いが口から漏れ出ていたことには気が付かなかった。


「どうしたの? 何か怖いのだけれど……」


 その子は怪訝な顔をして、不安そうに私を見ていた。


「そんな事ないよ。これからも、ヨロシク、ね?」


 不安そうに顔を歪ませながらも、ええ、と返事した。


 友達が増えたところで、私たちは教室に入った。

 挨拶作戦は……また今度にしよう。代わりと言ってはなんだけれども、隣人の魔王様に挨拶をしておいた。


「ああ、おはよう、眷属よ」


 魔王様は今日も相変わらず怪しい格好をしていた。私の隣にいる子を視認すると、僅かに顔を引き攣らせた。それを不思議に思ったけど、気にしないようにして、友達を紹介した。


「この子はお嬢様、千人に一人のツッコミのキレる物語の要なの。仲良くしてあげて?」


「ぶはっ」


 突然くしゃみをした。


「クックックッ……なるほど、そういうことか」


 納得がいったという風にひとしきりに頷いたあとに、魔王様は私の肩に手を置いて私に、その功績を讃えよう! と言った。


「ドユコト?」


 言っている意味がよくわからず、首を傾げながらそう聞き返すと、表情を改めて親指をピンと立てて、白い歯を光らせながらキメ顔で、よくやった! と言った。


 説明を求めて、お嬢様の方を見ると、遠い目で窓越しに空を見上げていた。


 全く様子がおかしい人達、これから忙しくなりそうだと、そう思った。


 定刻にさとちゃん先生が来て、朝の会が始まった。今日の連絡事項をさらっと流して、朝の会をさっさと終わらせた。


 魔王様との会話もそこそこに授業が始まった。


「今日は席替えをしま〜す!」


「なんと?」


 魔王様との突然の別れ、そして、新たな友達を作るチャンスでもある。

 突然の別れは悲しいけれど、これも社会に揉まれるということだと、お父さんならきっというだろう。せめて、別れの挨拶をしておこう。


「魔王様」


 心の整理をしてから、声を掛けた。


 どうお別れしよう、直前になってそう迷い始めてしまった。


 魔王様は、私の表情の変化に気づくと、優しく笑いかけてくれた。


 その瞳の溢れそうな水に気付いてないみたいで、それがなんだかおかしくてつい笑ってしまった。


「またいつか会おうね!」


 ついにダムが決壊した。


「今世の別れでもないのに、なに感涙の流れになってるのよ」


 揃って、間抜けな声で確かに〜と言った。


 その後、なんとも言えない空気に包まれながらしばらくすると、席替えが始まった。

 席替えのやり方は単純で、出席番号順にクジを引いて席を決めるという方法だった。


「魔王様はどの席だったの?」


 私がそう聞くと、待ってましたと言わんばかりに目を輝かせて踏ん反り返った。


「窓際、一番後ろ!」


「うわぁ」


 お嬢様が間髪を入れずにドン引きした声を上げた。それを不思議に思いつつも、よくわからないまま祝福しておいた。


「お嬢様はどうだったの?」


 お嬢様は顔を伏せて、聞こえるか聞こえないかぐらいの大きさで何か言葉を濁した。


 少したって、何かを決心したという風に顔を思い切りあげて、こう言った。


「コイツの前の席よ」


 なるほど?


「窓際辺に行けたら喜ぶべきじゃないの?」


「普通はね」


 二人の関係性がますますややこしく感じた。


「冬木さん、次」


「はーい」


 あっという間に私の番が来た。


 くじの箱は、お店でよく見るような手を突っ込むタイプのものだった。さりげなく中を覗いてみたけど、くじの中身はわからなくなっていた。


 一つ息を吐いて、くじを引いた。


 くじの紙と一緒に目を開けると、そこにはーー。




 ◇◇◇




 全員がくじを引いたら、次は先生の号令で一斉に移動を開始した。机ごと移動するタイプで、場はすぐに混雑した。


 みんながようやく落ち着いたところで、私は隣の人に挨拶をした。


「来ちゃった」


「仕組んだわね?」


 そう返したお隣さんの容姿は、まるで天使のように儚く美しい、美少女であった。


 やっぱりデジャヴ。


「席が変わってもよろしくな、眷属よ」


「うん!」


 そんなこんなで賑やかに談笑しながら、初席替えは都合良く終わった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ