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聖女の父  作者: 舞花
3/5

3話

魔術師長が鑑定した結果。

娘は魅了持ちだと判明した。

王家からの要請は、即刻娘を王城へあげること。

聖女の発現を公表することの2点だった。


数世代現れていない聖女について、僅かばかり国民の中に不安があった。

それが娘の様に類いまれなる美しさを持つ者が聖女となれば、国民は歓喜に沸くだろう。

また神殿ではなく、王族と共にある聖女を国民に見せることで、求心力を高めようという思惑も感じられた。


王城へ上げるもう一つの理由として上げられたのが、妻の血筋。

王家の血筋に魅了の力は通じない。

聖女の血を持つ者には、抵抗出来る加護がある。


だが、妻は聖女の血筋に連なる者では無かった。濃い血を避けるため、王家の血が入っていない家から迎えた女性だった。

私は妻を愛している。

婚約者として初めて会ったその日から心を奪われ、彼女を唯一と定めた。

王家の血がないことを喜んだあの日。

それが今、妻と娘を引き裂こうとしている。


神官による忌まわしい事件以降、

娘は私と妻がいないと眠れなくなっていた。

夜になると悪い人がくる。

優しかった人達が、悪い人になる。


まだ幼い娘にとって、大人は皆同じだ。

誰が善い人で悪い人なのか、分かる筈もない。しかも普段自分の世話をしてくれていた者達から裏切られた。

信じろという方がどうかしている。


そして、娘は私と息子以外の男性を受け入れなくなった。

昔から娘を可愛がっていた家令でさえも。



娘の事件を聞き、領地から戻ってくれた父と、妻、同じく学園から戻ってきた息子、私の片腕である家令を集め、私は密かに考えていた事を話した。


それは、ある意味王家への謀反となるかも知れない、娘を守るための唯一と思われる道。

そして、私達と現在の王家の関係故に出来る話だった。


私の父は現在の王である陛下の叔父。

臣下に下る際、私の母である公爵家の令嬢と恋に落ち、王弟を婿として迎えていた。

まだ子の無い陛下にとって、臣下に下ったといえ王位に限りなく近い私の父と、従兄弟である私、息子は王家のスペアとして無碍に出来ない相手だった。


父に動いて貰い、未だ健在で在られる前王に許しを得た。

それを盾にして、王よりいくつかの制約を受けつつも、娘を王城に上げ無い事、並びに暫くの間、聖女の公表を遅らせる許しを得た。


その結果、妻と娘は別れて暮らす事を余儀なくされた。

妻が娘の魅了に掛かった場合、公爵家にどの様な影響があるか分からないという理由に、無いと思いつつ頷かさずを得なかった。


また魅了の力を無闇に発動させない為、またその存在を秘匿する為、限られた者だけが娘と関わる事も決まった。

王家の血の入った家から数人の娘と夫人達が集められ、侍女もしくは家庭教師として我が娘の世話に当たる事になった。

娘は罪を犯した訳ではない。

せめて、公爵家の娘として出来る限りの事はするつもりだった。


娘の為に庭のある別棟を用意した。

同じ敷地内ながらも、その別棟だけ独立して建てられていた。本邸からもある程度の距離があり、恐らく何かの事情の為に使われていたのだろう。周りを背の高い木々が囲んでいるため、本邸からも見えず、迷路の様な庭園を抜けなければ辿り着けない。


そこに娘が移る日…

娘と妻はお互いに泣き崩れた。

これから娘と妻が触れあう事は許されない。

その姿を見ることもままならなくなる。

侍女に抱かれ離れていく娘に、妻は必死に腕を伸ばす。私のせいでごめんなさいと、その声はいつまでもその場に響いていた。


そして最後の条件が、娘が16歳になった際に、王家へ輿入れする事だった。

聖女を隠匿し続けることは出来ない。

しかし聖女として神殿へ上げることは、到底許容出来ない。

それに対する王家の回答がこれだった。

娘の相手として、誰を想定しているのか…


だが、その最後の条件が、私達の切り札だった。


何も知らない娘を連れて、王都外れの一軒家へと向かう。

向かった先には、既にある人物が待っていた。

前王の従兄弟の息子であり、我が家の次に王家に近いが、王位には少し遠い公爵家の当主とその息子。

その息子は女児と見まごうばかりの秀麗な容姿をしており、娘は直ぐにその手を取り遊び始めた。


娘にとって、初めて出会う同じ年頃の子ども。

私達の予想通り、二人は急速に仲良くなっていった。

そして…予定通り、娘とその息子が真に心を許し合ったタイミングを見計らい、今日で会うのは最後だと告げる。


泣いて嫌がる娘に、私はそっと囁きかける。


「私の事を大好きになってと言ってごらん」


―そうしたらきっと、また会えるから。

蛇足かと思いつつ、目をしっかり見て、心を込めて言うんだよと付け加える。


娘は私の言う通り、大好きな相手にその想いを告げる。

忘れないでと泣く娘を抱き抱え、必要なものをしっかりと目にした私は、そのまま我が家へと向かった。

いつか見た、娘を崇めるような呆けた顔を目に焼き付けて。


妻は、今まで娘にかかりきりで全く関わらなかった茶会や夜会に、積極的に出る様になった。

いつまでも若さを保つ可憐な容姿。筆頭公爵家夫人という立場に関わらず、下位貴族にも傲らず、決して人の悪口を言わない清廉な性格。

妻の周りには朗らかな笑い声が溢れ、魑魅魍魎うごめく社交界で、急速にその立ち位置を強固にしていった。


一目も二目も置かれる存在になった妻は、王妃の話し相手として、しばしば王宮に上がる様になった。手土産に、王妃お気に入りの茶葉を携えて。


数回飲んだだけでは、ただ美味しいだけのそのお茶は、繰り返し飲むことで手放せない程癖になる。

王妃お気に入りとの評判を聞きつけた夫人がたから所望されても、王妃専用だとにっこり微笑めば、夫人方は諦め、王妃はますますそのお茶を欲しがる。

例外は側妃方だけ。

王妃と同じものはお渡し出来ないとの断りを入れつつ、実は効能は同じで味の違う茶葉を渡した。

王妃も側妃方も、気づけば妻の用意する茶葉に夢中になっていた。


学園を首席で卒業した息子は、王宮に上がり、宰相補佐として私の仕事を手伝っている。

学園で知り合った息子の友人達も、殆どが王宮に上がり、財務、政務、騎士団、魔術師と、それぞれの部署で優秀な働きを見せている。

彼らは事あるごとに息子へ相談し、息子はその信頼を裏切らない対応を見せていた。

彼らの瞳には、息子への心酔の色が浮かんでいた。日々頭角を表す彼らが、息子を裏切ることは決してないだろう。


その息子が、ある日かなり歳の離れた少年を我が家へ連れてきた。


読んで頂きありがとうございます。

予約投稿したのに、されてませんでした( ̄▽ ̄;)

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