妖怪が出た3
登場人物
段下:旅館のオーナー
三木:旅館の執事
中尾:T大学超常現象研究会1年生 男
植松:T大学超常現象研究会2年生 女
白石:T大学超常現象研究会2年生 女
灰谷:T大学超常現象研究会3年生 女
ロバート:T大学超常現象研究会3年生 男
五島:T大学超常現象研究会4年生 男 風呂場で妖怪と遭遇 曽山のよき理解者
曽山:T大学超常現象研究会4年生 男 風呂場で妖怪と遭遇 研究会のリーダー
2か所のポイントを巡り、旅館に戻ってくると振り子時計がボーンと17:30の鐘を知らせた。
「それでは皆様、夕食は18:00からになりますので、少々お待ちくださいませ。」
段下は挨拶をすると厨房へと戻っていった。あとをついて歩いていた三木も深々と頭を下げると段下の後を追い厨房へとそそくさと入っていった。研究会のメンバーは一度ロビーに集まったが、少し話すと一度解散した。ロビーのソファーでくつろぐもの、部屋に戻るもの、散り散りになってロビーには静かな時間が流れた。
18:00が近くなるとまたロビーに人が集まり始めた。
結局、五島がずっとロビーで雑誌や新聞を読んで過ごしたほかは全員一度部屋に戻ったようだ。17:50。部屋に戻った中で最初にロビーに現れたのは植松だった。
「いい香りがしますね!」
厨房から漂う食事の香りに、満面の笑みで植松は五島に話しかけた。
五島は読んでいた新聞を降ろすと、植松の顔を見て、そうだな。と答えた。
「植松は何か嫌いなものあるの?」
また新聞を開きながら今度は五島が問いかける。
「いえ、私は食べ物ならなんでも!!食べるの大好きです。」
てへっと舌を出しながら植松が話したが、今度は五島は新聞を見ている。
「五島さんは嫌いなものがあるんですか?」
「んーおれは実は香り強いやつ苦手でさ。けっこうハーブの香りがするから、もし無理なのあったら食べてもらえる?」
五島は話しながらまた新聞を降ろした。今度は降ろすとその新聞をたたみ本棚にしまった。
「もちろんです!ただ、量が多くて食べきれなかったら他の方にお願いします。」
「そしたらおれ食べます!!おれ痩せの大食いなんすよ。」
植松の後ろには部屋から降りてきた中尾が立っていた。
「いいなぁ。」
ため息交じりに植松が反応する。
「食べるのは好きだけど太るからねぇ。」
いうほど植松も太っては見えないが女性にとってはデリケートな部分なのだろう。
「いやいや、植松さん痩せてるじゃないっすか!これより痩せたらちょっと健康的にどうかと思いますよ。」
「私、脱いだらすごいのよ。残念ながらお腹周りだけ。」
また、階段の方から声が聞こえる。
「そろそろ時間ですかね?」
植松がそう言い時計を見るともうすぐ55分というところだ。
階段の方に目をやると、曽山と白石が話しながら降りてくる。白石の方が少し興奮気味で曽山が何か諫めているように見える。白石は美希の幽霊に会えなかったことにおかんむりのようだ。
「あ。植松。灰谷を起こしてきてくれないか?」
やや小走りに曽山が駆け寄って話しかけた。
「それ、私に言えばよかったじゃないですか。」
後ろから白石がかみつく。白石は不機嫌だ。
「いくら灰谷でもその機嫌で起こされたら可哀想でしょ。」
五島が曽山に助け舟を出すと今度は矛先が五島に向いた。白石は何も言わずにキッと五島の方をにらむ。五島は慌てて片付けた新聞を手に取り広げた。中尾はその様子を見て笑ったが、白石の視線を感じて慌てて携帯を出した。
「圏外でしょ?なに慌ててんのよ。」
白石に先手を打たれ、そうでした。と中尾は絡まれる覚悟を決めて顔を上げた。白石と中尾がぎゃあぎゃあと賑やかにというか一方的に捲し立てる声が厨房まで響いたのか、中から三木が出てきた。
「皆さまお揃いですか?お食事にされますかな?」
誰にともなく話しかけたが、曽山が
「そうですね。まだ数人来てないのですが、直、揃いますので、お願いします。」
と答えた。三木は頷くと、食堂のドアを開けた。洋風の大きなシャンデリアがまず目を引く食堂は、昔ながらの、ぼんやりとしたオレンジ色の明かりに照らされていた。本来は4人掛けのテーブル4卓なのだろう。部屋の中央に集めてくっつけた正方形の大きなテーブルの中央に蝋燭が煌々と灯っている。銀色の刺繍が施された赤基調のテーブルクロスも雰囲気があって年代物の実に良い品だと思われる。
「おおお!!かっこいい部屋っすね!!!」
中尾はまるで中学生か高校生のように喜んだ。他の面々も中尾より落ち着いた態度だが感嘆の表情を隠せない。
「お部屋もお掃除の行き届いた洋風の過ごしやすいお部屋だったのよね。この雰囲気好きだわ。」
白石のご機嫌斜めも吹き飛んだようで、目をキラキラさせながらテーブルの周りをぐるっと回りながら部屋を眺めた。
テーブルを飾る銀食器や白い陶磁器のお皿も輝いて見える。しばらくみんな立っていたが、奥側の席に五島が座った。
「おぉ。素晴らしい部屋だね。」
食堂の入り口にはロバートソンが立っていた。ロバートソンも白石と同じように部屋をぐるっと回った。途中、ん?と小さく不思議そうな声を上げたが、それ以外では立ち止まることなくするすると回ると、五島が座った席の角を挟んで隣の席を選び座った。それを見ると曽山が五島の隣に座り、白石は曽山の隣を一席空けて座った。みんなが座ったので中尾は意味深に白石が空けた席に座った。ロバートソンがニヤッと笑ったが、特に気に留めるものもなく灰谷と植松を待った。二人がなかなか降りてこないので、しんと静まり返った空気に気を利かせたのか曽山が
「しかしロバートはいつも時間ぴったりだよな。」
と話しかけた。
「まぁ洋館の自部屋からエントランスまでですからね。成人男性が分速80mで歩くことを考えれば2分前に部屋を出ればぴったりには着くでしょう、だれでも。」
何を当然のことを、と若干のどや顔で少し早口にロバートソンが言う。
「私なんかやっぱりちょっと心配で少し早めに部屋を出ちゃいます。きっと由美もそうですよ。というか由美の方が絶対心配性で早く部屋を出ると思いますけど、ね、曽山さん。」
白石が会話を曽山に戻す。
「あー、植松はそうだな。いつも10分前行動とかそういう印象だな。」
「おれなんか時計確認するのが面倒くさいから、先にそこについて何をして待ってるかの方を考えちゃうけどね。」
今日も新聞と雑誌を読み漁っていた五島。ロバートソンが口を開いて何か言おうとした瞬間、金切り声の悲鳴が鳴り響いた。とっさに立ち上がった曽山の椅子が音を立てて後方に倒れたが、曽山は気に留めることもなく部屋を駆け出した。エントランスの階段を駆け上がると、階段を上った正面の窓の前で灰谷が腰を抜かしたように座り込んでいた。灰谷の横に寄り添うように植松も座っている。
「よ、妖怪!」
灰谷の言葉に、普通ならこここそ天然発揮と馬鹿にされるところだが、この集団は駆け付けた全員が目の色を変えた。
「どこ!?」
「どんなやつ!」
異口同音に二種類の質問が飛び交う。
「そこの窓から下に見えたの。包丁みたいなの持ってるやつ。」
ロバートソンが灰谷の横をひらりと飛び越えて窓を覗き込んだ。
「んー見えねーな。」
首をきょろきょろさせて窓の外を眺めながら呟くと、外を見るのをやめつまらなそうな表情で後方のみんなの方を振り向いた。
「今は、いないね。」
「そうか。でも灰谷が見たということは期待大だね。灰谷、大丈夫?立てる?」
曽山がさりげなく灰谷に手を伸ばす。灰谷は曽山が出した手に両手でガシッとつかまりがくがくと足を震わせながら立った。
「すごい目つきだったわ。見たな!!って感じの。妖怪の目から何か出たんじゃないかと思うくらいの。…私、悪いけど肝試しパス。呪い殺されそう。」
灰谷のあまりのおびえ方に、誰かがごくりと唾をのむ音が聞こえた。
「妖怪って本当にいるのね。白石ちゃんには悪いけど、私、半信半疑ちょっと面白半分なところがあったわ。でも認識を改める。あんな目つき。とても人間にはできないわ。」
灰谷は曽山の手を借りて何とか立ち上がった。だがそのまま歩ける様子ではなく、曽山はそのまま肩を貸す形で灰谷を支えた。
「とりあえず食堂に戻ろうか。」
曽山が言うと、みんなその場を離れ食堂へと階段を降り始めた。白石が名残惜しそうに何度か窓の方を振り返ったが、妖怪が見えた様子はなかった。
食堂に戻るまでローバトソンはああでもないこうでもないとぶつぶつ何かつぶやいていた。あの窓から妖怪が見えるという現象やすごい目つきでにらまれたように感じる現象を科学的に実証できないか考えているのだろう。曽山が灰谷を支えていた都合、さっき中尾が座った席には灰谷が座った。
「皆様、お揃いのようですね。大丈夫でしたか?」
三木が厨房から顔を出すと、心配そうにテーブルを覗き込んだ。
「えぇ、大丈夫です。彼女が妖怪を見たらしく、悲鳴を上げたのでみんなで駆け付けた次第でした。」
曽山が灰谷を示しながら答える。
「そうでしたか!幽霊が出なかったので残念そうにされていたのが、気になっていたのです。妖怪の方は皆様の前に姿を現してくれたようで何よりです。では、温かいスープからお運びしますので、怖い思いをされた方も心身共に温めていただければ幸いです。」
いつものように三木が案内口調で喋ると厨房へと下がっていき、すぐに台座に7人分のスープを乗せて戻ってきた。ゴロゴロと大きめの台座を転がしながらテーブルの周りをまわると全員の前にスープを置き、オマール海老のポテトポタージュでございます。と説明をしてまた下がっていった。その後、サーモンのマリネとオニオンサラダ、自家製フランスパンと木イチゴのジャム、白身魚のムニエル、仔牛のステーキ、ゆずのジェラードとコーヒー、と食事が続いた。食事の内容にメンバーは驚きの声を上げた。学生サークルが利用できる金額の旅館の料理を明らかに逸したフルコースにメンバー一同、美味い!美味い!と大満足だった。食事を配膳するたびに、三木さんがソースや素材の説明を事細かにしてくれた。その途中でロバートソンが三木にこんなことを訪ねた。
「三木さん、あれはオーナーですか?」
ロバートソンが指さした方向には調理師免許証が額に入れて飾ってあった。
「はい、左様でございます。」
「オーナー、段下さんのお名前は何と読むのでしょう?気になってしまって。」
灰谷と曽山の間後方の壁に欠けられた調理師免許を見るため、一部のメンバーは振り返って壁の方を見た。
段下 多能太
確かに、読みが分からない。
「あぁ。段下様の下の名前はたのうた。だんげたのうた。と読みます。段下様はご自分のお名前を、俗にいうキラキラネームでこの年齢では珍しいから、とあまりお好きではないようですが、私は、多くの才能に恵まれて欲しいという親御様の気持ちがストレートに表れていると思います。」
「あぁ、そう読むのですか。ユニークなお名前ですね!ありがとうございます。」
ロバートソンが何やら満足げににこにこしながらお礼を言った。
食事を食べ終わると19:00を少し回ったところだった。皆満足して少し談笑していたが、すぐに話題は肝試しのことになった。既に灰谷が妖怪を見たことで期待の大きい肝試しになったが、まだ少し時間が早いということで一旦休憩しようということになった。21:00まで自由行動という話になったが、せっかくの温泉旅館だしということもあり、多くのメンバーは温泉を楽しむという結論に至ったようだ。
まだそこまで気温が上がってこないゴールデンウィークという季節と山奥という土地柄、昼間降っていた雨も相まって、夜間の気温はだいぶ低かった。そんな季節の露天風呂はモクモクと湯気が立ち上がりまるで霧がかかっているようだ。温泉の奥には山に緑が生い茂り、闇夜に黒く溶け込んでいた。曽山が温泉に入ると、すでに誰かが浸かっていた。
「おー、曽山!めっちゃいい湯だぞ。」
「五島か?早いな。」
五島の方からは脱衣所から漏れる光で曽山が良く見えたようだが、曽山の方からは湯気と光の加減で誰が入っているのかはわからなかった。話しかけてくれたおかげで、声と、何より自分を呼び捨てで呼ぶのは五島しかいないので、すぐに相手が誰だかわかった。
「今日は、というか、毎回、ありがとな、運転。」
五島は温泉の湯を手ですくいながら近づいてきた曽山に言った。
「お前もホント免許取ったほうがいいぞ。就職しちゃったら免許取りに行く暇なんかないだろう。」
「うーん、まぁそうだよなぁ。でもおれ、運転って不安なんだよな。事故でも起こしそうでさ。」
「意外だな。お前がそんなことを考えてたとは。免許取るとあらゆる単位での移動からめんどくささが格段に減るぞ。」
「んー。そうかぁ?じゃあ考えるかな。」
そう言うと五島は気だるそうに腕を大きく伸ばし、そのあと頭をぼりぼりと掻いた。
「運転、疲れないのか?」
「疲れるっていう人もいるけど俺はそんなでもないな。そこまで長距離の運転はしたことがないからわからないけど。」
そうかぁ。とつぶやきながら五島はもう一度伸びをした。
「お!?」
曽山が何かに気付き後ろを振り返った。突然振り返った曽山に五島はのんびりと問いかける。
「どうした?」
「いや、今何か音がしなかったか?ガサゴソって。」
「んー。聞こえなかったが、妖怪か?出たか?」
五島は楽しそうに立ち上がった。
「どっちから音がしたんだ?」
「たぶん、後ろだと思ったんだが、その柵の向こう側って森なのかな。」
後方には半分に割った竹を並べて地面に突き刺した低めの柵が立っている。そこまで高くない柵なので頑張れば超えられそうだ。タヌキなどあまり大きくない獣をよけるためのものなのかもしれない。柵に向かって五島がお湯の中を歩いていく。
「向こうが森かは分からないけど、特に音は聞こえないな。ホントに聞こえたのか?」
五島が曽山の方を振り返って問いかける。
「うーん、空耳だったかな。でも確かに藪をかき分けるような感じの葉っぱの音がしたんだけどな。」
その時。ガサッ!という確かな音がして五島が左を見た。
「うわぁっっ!」
バシャン!と大きな音を立てて、五島が温泉の湯の中に転んだ。勢いあまって潜ってしまったが、バシャァ!!ともっと大きな音を立てて勢いよく五島の顔がお湯から飛び出した。
「出た!!!」
五島に言われるまでもなく、最初の五島のリアクションを見て、五島と向かい合う形で話をしていた曽山も右側を見た。そこには唐傘を深めにかぶり、藁のようなものを羽織って弓矢を構えた何者かが温泉の淵の岩の上に立っていた。慌てふためいた五島とは対照的に曽山は冷静に尋ねた。
「妖怪の類か?」
いや。妖怪かもしれないモノに答えを要求する問いかけをした時点で本質的には冷静ではなかったのかもしれない。ただ、冷静に見える雰囲気は十分に取り繕っていた。曽山は静かに立ち上がると現れた何者かの方へ一歩踏み出した。五島はびしょびしょに濡れた髪を拭い、曽山と唐傘をかぶった何かを交互に見ていた。もう一歩曽山が歩み寄ろうとすると低くとても聞き取りにくい声のようなものが響いた。
「去れ。」
さすがの曽山もその異質な声に驚きを隠せなかった。
「本当にいるのか。妖怪か。」
もう一度呼びかけたが、返事はない。曽山がもう一歩歩み寄ると妖怪は背中に右手を回した。さらに曽山が一歩寄ると妖怪は素早く背中からその右手を前に出した。手には矢が握られていた。
「曽山!」
五島が叫んだ。曽山は妖怪から目を離さない。
「それ以上寄るな。危ないって!」
五島がもう一度叫んだが、
「いや、これはチャンスだ。俺は、知りたい。」
そう言うと、曽山はもう一歩歩こうとした。すると妖怪は弓を構え矢を引いた。
「指は5本ないんだな。人型のようだが、その手は人の者には見えん。」
曽山は妖怪に対して言い放つと、もう一歩歩いた。
ヒュン!!!
高い風切り音が鳴り響き、矢が放たれた。トン。と音を立て矢は曽山の後方の壁に突き刺さった。
「去れ。人間よ。次はない。」
また低い音が響くと妖怪は淵の岩から山の方へ消えていった。曽山が驚き固まっていた時間は数秒だった。お湯をかき分け温泉の淵まで進んだ。
「お、おい、曽山!」
五島が後ろから呼びかけたが、その時には曽山は温泉の淵についてそこから山側を覗き込んでいた。
「五島。来いよ。恐らく安全だ。」
曽山が呼びかけ、五島が恐る恐る曽山の方へ寄った。曽山は目線を五島の方にやることはなかったが、五島が近づいてくるのを感じると山の方を指さした。
「あそこにいる。おれがこの淵に来た時から動いていない。恐らく向こうもこっちを見てるんだ。でもこの距離じゃ、多分矢は届かない。」
五島が覗き込んだ景色は想像を絶した。温泉の淵から先は断崖絶壁というわけではないが、かなりの傾斜になっていた。少なくとも自分が歩くのだとしたら、1分そこらではどう考えてもたどり着けないところに妖怪は立っていた。
「もし、ホントにお前がここからあれを見つけてから動いてないのだとしたら…あれは、人間じゃない。」
五島がボソッと言った。
「凄いものを見た。白石が聞いたらさぞ羨ましがるだろう。」
曽山もボソッと言った。曽山の方は言うや否や身を翻し、バシャバシャと温泉の湯をかき分けて壁の方へ歩いた。そして、立ちすくんで動かなくなった。
「ちょっと曽山ぁ。呼んどいて置いていくなよ。」
五島も振り返り曽山を追いかけた。が、その時、曽山は五島とすれ違いまた温泉の淵へと猛スピードで歩み寄った。
「いない。」
曽山がつぶやいた。
「曽山、どうしたんだよ。」
五島が曽山に問いかけた。曽山は振り返ると、
「いや、今の間に妖怪はどっかに行ってしまったみたいだ。それより、五島、気づかないのか?」
そう言いながら壁を指さした。
「矢がない。」
五島は慌てて壁の方を振り返った。確かに矢はどこにもなかった。ゆっくりと壁に近寄るとだいたいこの辺に刺さったと記憶している辺りを探った。そこには確かに穴が残っていた。
「穴はあるぞ。」
五島が曽山の方を振り返って言った。
「信じられない。なんなんだこれは。」
そう言うと曽山は座り込み温泉に肩まで浸かった。五島も曽山に倣って、もう一度湯に浸かった。