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完結

赤い霧で見辛くなった視界の中、不死者が大剣を振るう。


俺はナイフで滑らすように右手の大剣をいなすと、大剣が床を叩いた。

間髪入れずにもう一本の大剣が俺の右上から迫る。

それを後方に飛んで躱す。左手の大剣は石床に深く刺さり止まった。


俺の瞳に不死者の顔が映る。

不死者は表情筋が無いくせに、勝ち誇った顔で笑った。

石床に刺さった大剣を離し、一歩大きく踏み込むと右手の大剣を両手で強引に持ち上げ空中にいる俺を捉えた。

大剣は俺の身体を深々と切り裂き、その勢いで何度も硬い床に叩きつけられ転がった。


不死者は徐に歩き警戒すること無く接近する。

俺の身体全体を包んでいるマントを大剣で捲り死に様を視認する。


「なんだこれは‼︎」


ーー中には真っ二つになった丸太。


赤い瞳が驚愕し光る!


『もらったぁぁぁぁ!』


蜘蛛男の鏃を外し、天井を目一杯蹴り敵目掛け急降下。


短剣にファイアを付与し不死者の頭を狙う。

周囲を見回す不死者の頭に深々と突き刺さる短剣。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁ」

髑髏の口が大きく開き絶叫する。


「早くくたばりやがれ!」


不死者は肩に乗っている俺を振り落とそうと身体を揺らしながら、大剣を頭上に振って斬りかかる。

俺は短剣を抜くことを諦め宙返りして逃げた。


ーー急に周囲を覆っていた赤い霧が晴れた。


それと共に身体が軽くなるのを感じる。



『……ですよ』


不意に頭にノイズが走る。


『士郎は使えないですね』


『アタシが上司に内緒ですごい力与えてやったのに死んじゃうなんて』


『はー、全く骨折り損じゃないですか…』


俺に聞こえてないと思っての罵詈雑言。


『アーテ、聞こえてるぞ!』


『し、士郎さん無事だったんですね。心配してましたよ』


『そうは思えないけどな!』


「ガシャンッ‼︎」


不死者は頭から短剣を抜いて床へ投げ捨てた。


『で、たおしたんですか?』


『まだだ』


『ドルクルビンの弱点は胸にある赤いコアだって言ったじゃないですか!何してたんですか!』


『途中で聞こえなくなったんだよ!』


ーー弱点が分かったのはでかい。


今は服で見えないがコアは心臓の辺りにでもあるのだろう。

ドルクルビンはがむしゃらに大剣を振るって攻め立ててくる。


俺は躱しながら道具箱から爆弾を取りライターで着火。

そしてタイミングを見計らってドルクルビンの足元に投げた。


「どぉぉぉーーーん」


煙が広がり視界が遮られる。


『やったのか⁉︎』

凝視するが敵の動きが見えない。


「‼︎」


煙の中から大剣が一本飛んでくる。

横っ飛びで躱すが左足に激痛が走る。


「うがぁぁぁ、いてぇぇぇ」


激痛で絶叫する俺。そして転がる左脚。


不死者の服はボロボロで赤い球体が鳩尾の辺りにあるのが見える。


『くそぉ!やっぱりダメだったか……』

必死に逃げようと四つん這いになり顔を上げる。


眼前には椅子に座ったまま動かない女。


『十分良くやったわ。もう諦めなさい……。死は終わりでないわ……』

女の甘い囁きが風に乗って耳につく。


「幻聴が聞こえてくるようじゃ、本当にヤバいな」


俺は彼女の前にヘタリ込み、振り返ってドルクルビンと対面する。

不死者は勝ち誇ったのかゆっくりと近づいてくる。

髑髏はトドメとばかりに大剣を振り上げた。


俺も真似して右腕を振り上げる。


不死者より早く俺は敵目掛け腕を大きく振った。


『ガチャン‼︎』


ーー大剣が地面に落ちた。


不死者は左手で胸のあたりを触る。


「な、なんだとぉぉぉぉ」

絶叫する髑髏。


真っ赤な球体に深々と黒剣が刺さっている。

黒剣の柄には鋼糸が巻き付き、その鋼糸が俺の右腕の蜘蛛男と繋がっている。


「死ぬのかぁぁ、俺がぁぁぁ」


真っ赤な球体に罅が走り、真っ黒に変色し砕けた。

不死者は跪き倒れ、そして魔剣の中に吸い込まれた。


『大丈夫ですか⁉︎士郎さん』


『大丈夫じゃないよ。足が切断されたんだぞ』


ーーあれ、変だな血が出てないぞ?


『大丈夫ですよ。しっかりくっつきますから。まず脚を拾ってください』


落ちてる魔剣を拾って杖代わりにして、脚を拾って切断面を合わせる。


『おぉぉ、動く、動くぞ!』

一瞬で脚がくっ付き元に戻った。


『治ったなら、急いでください!時間がないですよ』


『全く少しは休ませろよ……』


『終わったら好きなだけ休めますから、頑張ってください』


『はあ〜、わかったよ……』


俺は魔剣の鞘と短剣を拾って屋敷を後にした。

外に出ると東の空が紅色に染まっている。

朝日を背に俺は駆け足でトロエの丘に向かった。



トロエの丘に着いたが誰もいない。

ーーあれ、間に合わなかったのだろうか。


「お〜〜〜い、アーテどこだ〜〜?」

周囲を見回しながら大声で叫ぶ。


『そんな大きな声を出さなくても聞こえますよ。アタシは異世界には行けないので、いつも通り声のみの登場です』

頭の中に自称女神の声が響く。


『じゃぁ、どうやって魔剣を渡すんだよ?』


『何言ってるんですか?その魔剣を使ってやって貰いたい依頼が有りますから、そのまま持っててください』


『これで終わりじゃないのかよ!』

『こんな簡単な依頼で、あの報酬な訳ないじゃないですか!少しは頭使ってくださいよ〜』

アーテは呆れた声で溜息をついた。


『そんな話聞いてないぞ!』


『言ってませんから‼︎』

悪いびれも無く言い切った。


『じゃぁ、次の依頼はですね……』

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