骨でも早いんです
不死者ドルクルビンの瞳が赤々と輝き一歩前に踏み出した。
「返り討ちにしてくれるわぁぁ‼︎」
突然現れた魔法陣から二つの大剣が顕現しそれを手に取る。
不死者は豪速で駆け俺に迫る。
『は、速いぞ‼︎』
「死ねぇぇぇ!」
ドルクルビンは右手に持った大剣を素早く振り下ろす。
予想外の速度に不意をつかれた俺はサイドステップでギリギリかわす。
不死者の大剣が激突した石床が粉砕される。
不死者は誘導ミサイルのように、俺の動きに合わせ身体を寄せてくる。
そして重量のある大剣を軽々振って攻め立てる。
それをギリギリでかわし、借りた短剣【リジル】を腰から抜く。
『くそぉぉ。なんて動きだ。これだと女に近づけないじゃないか……』
早く自分の間合いに持ち込まないとジリ貧だ。
不死者は両手を器用に使い大剣を振り回している。
『右、右、後ろ』とサイドステップとバックステップを併用して漸く間合いを調整すると、素早く突進しドルクルビンの懐に素早く潜り込んで横っ腹を斬った。
しかし手応えは無い。
たぶん、骨と骨の間を斬ったのだ。
不死者の服だけが綺麗に斬れている。
間合いを気にしたドルクルビンは両手の大剣を大袈裟に振るって後ろに下がった。
「なかなかやるじゃ無いか。敬意を評して貴様の名前を聞いてやろう」
『骨に直接短剣を当てるしかないか……』
ドルクルビンの言葉を無視して戦術を考える。
「おい、貴様!名前はなんて言うんだ!」
俺に無視され激怒するドルグルビン。
「静かにしろよ!こっちも色々考えてんだよ!」
売り言葉に買い言葉と言うべきか俺も大声で反論する。
「……‼︎」
不死者は口を大きく開け固まった。
『しかし、どうなってんだ?スケルトンのくせになぜこんなに運動性能が高いんだ⁉︎』
筋肉も無いくせに、どうしてあんな脚力と腕力が出せるのか、不思議でならない。
ここにアーテがいたら「ここは異世界ですから、なんら不思議じゃないですよ」とか根拠のない台詞を吐くに違いない。
『士郎さん聞こえますか〜〜』
いきなり女神の呑気な声が頭に響く。
『なんで頭にアーテの声が聞こえるんだ⁉︎』
『なんでって士郎さんの頭に直接語りかけているからですよ!』
さも当然というようにアーテは解説する。
「知るか‼︎」と愚痴りつつ眼前の敵に動きに集中する。
『で、調子はどうですか?上手くいってますか』
『いや、全然駄目だ。今交戦中だ』
『えぇぇ、何やってんですか。盗んで来いって言ったはずですよ。なに命令違反してるん……』
頭全体にアーテの説教する声が響く。
そんな声を遮るように俺は続けた。
『しょうがないだろう、敵に見つかったんだから!』
『ドジですね。まったく……。あと三時間しかないんですけど間に合うんですか?』
深い溜息をつく自称女神。
「溜息つきたいのはこっちの方だよ」と思いながら、ドルクルビンの攻撃を短剣でいなす。
『間に合うか微妙なところだ。なんせ敵が強すぎてな』
『どういう相手なんですか。士郎さんなら大抵の敵には苦戦しないと思うんですけど。貴方より 強い人なんて異世界で200人もいないんですよ』
「それって結構いるんじゃないか」と突っ込みたかったが、不死者の苛烈な攻撃を回避することに集中したため言えなかった。
『自分でドルクルビンと名乗ってたぞ。そいつ』
『ん‼︎それって第五魔王アルマロスの配下の【聖人ドルクルビン】じゃないですかね。士郎さん奴の額を見てください。神聖教皇会の紋章が見えませんか?』
ドルクルビンの攻撃をかわしつつ額を見る。
確かに何か見える。
それは某ドイツ高級車のエンブレムに似ている。
『なんか丸いよくわからない紋章が見える』
『間違い無いですね。聖人ドルクルビンです。彼は士郎さんより実力は下ですよ。なんてったって彼は配下の中で最弱、そして魔人のくせに神聖教皇会を崇拝していたことで仲間から馬鹿にされている悲しい男なのです。ただし魔力を吸う特殊スキルがあるみたいなので気をつけてくださいね』
ドルクルビンの攻撃をかわし、敵との距離を大きくとった。
『そんなに詳しいなら弱点とかわからないのか?』
『わかりますよ、えーとですね……」
何時迄も逃げ回る俺に業を煮やしたドルクルビンは瞳を一層輝かせ口を大きく開けた。
不死者の目や口から出る霧で空気が赤く淀む。
何故か身体が少し重くなったように感じた。
『弱点は、ドルクルビンの……』までアーテが言うと声が途切れた。




