侵入したけど、何か忘れてた
監視をやめソファーに座り、道具箱から【満腹亭】で買った物を出す。
え〜〜と、火薬に紙筒セット、苦無、そして蜘蛛男、丸太、etc。
『おもちゃの兵隊のマーチ』が頭の中に流れ出す。
その曲を口遊みながら火薬と紙筒等で工作する。
これはアーテの机にあった【実録 パイン兵士】を熟読して得た知識。
「てってれ〜〜ん。手投げ爆弾〜‼︎」
調子に乗って猫型機械人形をパクってしまった。
イカンイカン気をつけねば……。
気を取り直して、手にした爆弾を道具箱にしまい苦無と蜘蛛男を装備する。
野営の時に使う薪にするために買った大きな丸太に、苦無を投げる。
『ズン、ズン』という音を立て丸太に深く刺さる。
初めての投擲だというのに狙ったところに見事刺さった。
『これは【THE 影の集団】を熟読したおかげだろう……』
「我は影なり、影は我なり!」
自然と名台詞が口をつく。
次に蜘蛛男を使う。
両手の手袋に魔力を込め鋼糸の付いた鏃を天井に飛ばす。
鋼糸を手で持って引くが鏃は抜けそうにない。
魔力を込め巻ように念じると、音もなく鋼糸が巻かれ俺を宙吊りにした。
「俺の体重を支えれるんだな。これは便利だ」
試しに左手の鏃を外すように念じると、鏃が音もなく外れ左手首に戻った。
念じ方で色々調整できるみたいだ。
さて、左手の鏃を下に見える丸太に飛ばす。
鏃が丸太に刺さる前に、手首を器用に振ると鋼糸が丸太にグルグルと絡まった。
そのまま鋼糸を引くと丸太に少しめり込む。
「これで丸太は切断できないか……。残念だ」
試しに左手にさらに魔力を流して引いてみる。
すると鋼糸が直径30cmの丸太をあっさりと切断した。
「魔力量によって威力が変わると……。
俺の少ない魔力でも使えるのはありがたい」
蜘蛛男の使い方もわかったし、右手の鏃を外し床に降りた。
部屋の時計は既に深夜一時を回っていた。
再度ヘグニム邸を見る。
やはり今も二階の窓だけに照明が灯っている。
館の主が就寝した後に忍びこもうと思ったが、これ以上は待てない。
アーテとは今日の朝七時の約束だ。
町から丘までは急いでも一時間はかかる。
よって魔剣の回収には長くても四時間しか使えない。
これ以上待つと魔剣を探索する時間が削られてしまう。
『しょうがない今から忍び込もう』
運のいいことに勝手口には今も守衛がいない。
不法侵入した屋敷に施錠し、ヘグニムの屋敷を囲む高い塀の前まで移動する。
『たしかこの辺りだったはず』
勝手口近くであろう塀の前に来た。
塀に耳を当て、勝手口周辺の気配を探る。
足音も聞こえないし、人の気配も感じない。
「トオゥ」
軽く助走して3mはある塀を飛び越え敷地内に入った。
足元は草地で草の高さも短く刈り揃えられている。
そんな草地を忍び足で進み勝手口を目指した。
勝手口の扉を盗賊スキルで開錠する。
音を立てないよう扉を開け室内の様子をうかがう。
室内は真っ暗で人の気配もない。
中に侵入するとそこは台所で調理器具や食器が整理されキッチリ棚に並べられている。
綺麗過ぎる台所は生活感を全く感じさせなかった。
台所と廊下を繋ぐ出入り口に移動する。
『さて、どこに魔剣がしまってあるのか……。あ、あれ⁉︎』
ふと大事なことに気がついた。
魔剣の特徴を聞いていなかった‼︎
『何という失態!』
俺は頭を抱え跪く。
『こうなったら仕方ない。ヘグニム本人を脅して魔剣を頂こう』
俺は計画を窃盗から強盗へ切り替えた。
軽犯罪者から重犯罪者へと登りたくない階段を確実に登ろうとしている。
強盗となれば話しは早い。二階にいるであろうヘグニムを捕まえればいいからだ。
俺は注意深く周囲を確認し階段を探す。
階段はすぐに見つかり、ささっと二階へ上がった。
階段を上がると正面に朱色で唐草模様が施された大きな二枚扉が現れる。
『あぁぁ……、うぐぅぅ』
扉の一枚が開きっぱなしで、そこから女性の叫声がする。
耳をそばだてると「やめてください」とか「許してください」と言う女性の声が聞こえる。
『ドキィッ』と俺の心音が跳ね上がる。
俺は良からぬ期待を抱きながら、扉の陰に隠れこっそり部屋の中を伺った。




