2 0-1 30-15 とあるテレビ局での会話と全仏オープンジュニア三回戦
東京 某所 某テレビ局
「局長、一大事です!」
「どうした? そんなにも慌てて」
「営業から聞いてきたのですけど、今週だけで加入者数が十万近くも増えました!」
「ぶっ! な、なにが起こったんだ!?」
「庭野ですよ! 庭野環希!」
「ま、まさか、全仏オープンジュニアをオンデマンドで放送しただけで?」
「そのまさかなんですよ!」
「信じられん……」
「自分も最初はその数字に耳を疑いましたが、まぎれもない事実です」
「しかし、今日はまだ水曜日だぞ? ローラン・ギャロスだってジュニアは、今日が三回戦のはずだろう」
「だから、庭野環希の一回戦と二回戦の試合だけで、加入者が十万人も増えたんですよ」
「しかし、いくら庭野環希がテニスで強くて多少なりとも有名だったとしても、まだジュニア選手だぞ? お前だったら、テニスのジュニアの試合に、わざわざお金を払ってまでして、見たいと思うか?」
「庭野環希の動画投稿サイトのチャンネル登録者数は九十万人を越えています。動画サイトのファンの中でお金を払ってでも、庭野環希の試合を見たいという層が流れて来たのでしょう」
「それじゃあ、なんだ? 今週増えた加入者ってのは、ほぼ全員が庭野環希の動画サイトからの横滑りということなのか?」
「そうなりますね」
「庭野まどかはこうなることを知っていたから、ジュニアの試合を放送するように要望したのか?」
「ズムズムに新規に加入してまで、全仏オープンでの庭野環希の試合を見たいというファンが、それだけ大勢いたということでしょう」
「もう既に一定数以上の顧客が付いていたということか。しかしまるで、時限式のインサイダーだな」
「ですが、庭野環希の活躍に頼るような、こんな不確定な要素が満載では、インサイダーには当たらないのでは?」
「当て嵌めるのは無理な注文なのは知ってるよ。ただ今までの俺達の努力を、たった三日でいとも簡単に超えて行くだなんて、愚痴の一つでも言いたくもなるもんなんだよ」
「加入者数は、ここ近年ずっと頭打ちでしたからね」
「ここ二年に限って言えば、僅かながらも減少だよ」
「株価も低迷していましたもんね」
「だからこそ、庭野まどかが我が社の株を買い漁れたんだろうよ」
「そういえば、庭野まどかは今年に入ってから、我が社の株を買い進めていましたね」
「ああ、それで権利落ち後に更に分厚く買い増しして、今では個人の筆頭株主だよ」
「全体でも四番目の株主様ですよ」
「個人でも銭を持っている人は持っているんだねえ」
「取締役にも成れる規模の株主ですからね」
「役員にしろとか言われないだけマシだと思っておこうか」
「ポストが減ったら、局長が取締役に成り損ねかねませんもんね」
「お前、クビにされたいのか……?」
「局長、それってパワハラですよ」
「ジョークでんがな。しかしこの調子なら、今まで届かなかった加入者数400万の大台も夢ではなくなりそうだな」
「まさに神様仏様庭野様って感じですけど、それも庭野環希が活躍してこそですがね」
「このまま順調に行ってくれと、神様にでもお願いしてみるか」
※※※※※※
やってきました、全仏オープンジュニア、ローラン・ギャロス三回戦!
三回戦の相手はランキング15位に位置する、アメリカのキャロライン・オルブライト選手です。
最近のアメリカのテニス界では、ジュニア選手で頭角を現してくるのは、黒人系のアメリカ人の方が多い気がするのですけど、まだまだ白人系のジュニア選手も頑張っています。
つまり、キャロラインちゃんは金髪ねーちゃんということですね。
ぐへへへへ、ねーちゃんええチチしてまんなぁ。
キャロラインちゃんは、そんな感じのおっぱいの持ち主ですね。
まあ、巨乳の持ち主だからといって、私が手心を加えるなどはあり得ないのですがね。
今世の私の性別は女性なのだから、おっぱいを見ても残念ながら興奮しないんだよね。
だからといって、男に目が行くのかといえば、いまの所はそれもないしなぁ。
うーむ…… まあ、いまここで悩んでも仕方ないか。
それにしても、あれだけおっぱいが大きいと、ラケットを振り回すときに胸が邪魔にならないのかな?
あと、おっぱいを支えている筋が伸びてしまいそうな気がしますね。
年を取ったら、垂れ乳になりそうな感じがして怖いのですけど……
私も気を付けねばいけませんね。
垂れるのが怖いから、私はCぐらいまででいいや。
まあ、まだそんな心配をする年ではないけどさ。
それはさておき、試合が始まるのだから集中しなければ。
まず最初は、私のサーブから試合開始です!
私のセンターへのサーブに対して、相手はバックハンドでレシーブしたけど、ラケットに当てるのが精一杯だったのでコントロールも出来ずに、ボールはネットに突き刺さってしまいました。
いわゆる、ネットにこんにちは!ってヤツですね。
「15ラブ」
次のサーブは角度を付けて、ワイドに逃げるサーブを入れる。相手は一歩も動けずにエースを決める。これで、30ラブ。
「30ラブ」
お次は相手のボディを狙ってファーストサーブを打ち込みます。相手は多少窮屈になりながらもリターンを返してきたけど、返球が甘い。
私はサーブを打つのと同時に前へと駆け出していたので、ボレーを相手のアドコートのサイドライン際に叩き付けた。これで、40ラブ。
「40ラブ」
最後はサウスポーにスイッチして、これまたサイドラインを狙って、ズドン!
あそこはキャロラインちゃんにとってみれば、完全に届かない場所ですので動けないのは仕方ないでしょうね。
「ゲーム、ニワノ」
淡々とラブゲームでキープさせて頂きました。
おかしい、ラリーが続かなかったよ。
最近、私のゲームではラリーが続かないことが多い気がするなぁ。
まあ、楽して勝てるならそれに越したことはないのだから、ラリーが続かなかったとしても、それはそれで別に構わないのですがね。
第二ゲームは相手のサービスゲームになります。
ファーストサーブはネットに当たってフォルト。相手が入れてきたセカンドサーブをバックハンドの逆クロスで、相手のデュースサイドにリターンを返す。
「ラブ15」
ものの見事に逆クロスのリターンエースが決まりました。
バックハンドの逆クロスなんて面倒で窮屈そうなレシーブをする選手は少ないから、キャロラインちゃんは意表を突かれたでしょうね。
次にアドサイドから打ってきた相手のサーブを、私はフォアハンドで少し捏ねるように打ち返す。
リターンされたボールは相手のデュースサイドへ。
キャロラインちゃんもフォアハンドで、ストレートに私のアドサイドにリターンを返してきた。
私はバックハンドで今度は素直にクロスのリターンを返しました。
まあ、素直とは言っても、ベースラインに深くサイドラインと交わる角っこの辺りを狙ったのですがね。
振られたキャロラインちゃんはボールには追いついたけど、リターンを返せなかった。これで、ラブ30。
「ラブ30」
次のサーブは私のセンターライン側にきたのを、私はバックハンドと見せかけて左フォアハンドでスライスを相手のデュースサイドに返した。
相手もフォアでなんとかレシーブしたけど、リターンされたボールは私のチャンスボールにしかならなかった。
アドに打つと見せかけて、デュースのサイドライン寄りにボールを叩き付ける。これで、ラブ40。
ブレイクチャンスは三回ありますので、私ならば十中八九はブレイクに成功するでしょうね。
「ラブ40」
ここで、キャロラインちゃんのサーブの質が変わったみたいで、センターに速いサーブを打ち込んできました。
余裕を噛ましていた私はコンマ一秒反応が遅れたので、一歩動いたところで諦めてこのボールは見送りました。
「15-40」
次のサーブもセンターにきたけど、今度は見逃さないよ! 私はバックハンドで相手のアドサイドにリターンを返した。
相手もバックでレシーブして、私のアドサイドへクロスのリターンを入れた。
私も同じくバックのクロスでリターンを返す。ただし、今度はベースラインではなくサイドライン寄りに角度を付けて。
キャロラインちゃんもレシーブしてボールを返してきたけど、そのボールは大きくサイドアウトしてしまった。
「ゲーム、ニワノ」
よっしゃ、ブレイクに成功です!
さて、ここからどうやって試合を運んでいこうかな?