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2 0-1 15-15 ドサ廻りは辛いよ


『ガビーはオッフェンバッハとベルリンで、280ポイントを二つゲットだね!』


『そうなれば最高ではあるけど、そんなことを簡単に言えるのはタマぐらいのものだよ』



 でも私でも、まだG1大会に優勝したことないんだけどね。



『ウィンブルドンの前哨戦はどうするの?』


『ノッティンガムはパスして、ベルリンの後に一週休んで、ローハンプトンには登録しているよ』


『ノッティンガムは微妙に交通の便が悪そうな位置にあるよね』



 ちなみに、ローハンプトンはロンドン郊外にあって、ウィンブルドンの隣近所ともいえる場所にあります。

 だから、ウィンブルドンへの移動は実質的にはないといってもよい便利な場所でしょう。



『試合会場が空港とかから遠いとウンザリするよね』


『その気持ちは分かるよ』



 知らない外国で長時間に渡って車とかに乗っていると、これからドコに行くのだろうって不安が出てくるんだよね。

 逆に空港から一時間以内の場所とかだったら、ホッとするんだよね。


 前世でも、治安があまり良くないとか噂されている国にドサ廻りで行くときとかは、空港から遠い街だとおっかなびっくり行ってた記憶がありますね。

 アフリカのフューチャーズやチャレンジャーに行ったことのある日本人選手は、まさしくチャレンジャーだと思ったよ。


 前世の私は怖くて、アフリカはサハラ砂漠より南には行ったことがなかったんですよね。

 エジプトとチュニジアにモロッコまでは行ったけど、それでも精神的に疲れた記憶がありましたし。


 本当にドサ廻りは辛かったよ……


 まあ、今世での私には麻生さんが一緒だから、麻生さんにお任せしているのですがね。


 それでもアフリカでの試合は、ごめんこうむるでござる!



『だよねー。タマはウィンブルドンの前哨戦には出ないの?』


『一応、登録はしているけど、学校もあるから一旦は日本に帰ることになるのかな?』



 いくら、山手女学院がテニスの海外遠征を出席扱いにしてくれているとはいっても、授業を受けないと置いてきぼりにされそうになりますしね。

 私は遠征中でも真面目に自習をしているけど、ちゃんとした授業を受けるのも大切なんですよね。



『へー、タマは真面目に学校にも通っているんだ』


『私の場合は、まだ義務教育課程なんだよ』


『そういえば、タマってまだ中学生だったね。強すぎるから忘れていたわ』


『テニスの試合をするのに学校の学年とか、あまり関係ないからね』


『それもそうだね』



 テニスのジュニア選手でジュニアサーキットを廻っている選手の場合は、真面目に学校に通ってない選手が多いのは日本でも海外でも同様ですし、中学生とか高校生とかの括りは忘れそうになるよね。

 真面目に学校に通っていたらサーキットは廻れないのだから、これは仕方のないことなのでしょう。



『もしかしたら、私もローハンプトンには出るかも知れないけどね』


『タマがローハンプトンに出てくるなら、タマと反対の山に入れることを神様に祈っておくよ』


『あはは、私も芝は経験ないから、ガビーもそんなに心配しないでも大丈夫だよ』


『そうだといいんだけど、タマだしなぁ。あ、あたしは自分の所に戻るね。タマ、ご飯一緒に行こうね!』


『ガビーはいつまでパリにいるの?』



 地元のフランス料理でもいいし、ガビーの故郷の味であるスペイン料理も捨てがたいですね! パエリヤって結構好きなんですよね。

 三月のスペイン遠征でパエリヤを食べて気に入りました。その後、虫垂炎で痛い目に遭いましたけど、パエリヤには罪はないですしね。


 もっとも、ガビーに和食を食べさせて反応をみるのも楽しそうではありますけど。


 でも、ガビーは敗退したのだから一度スペインに帰るか、次の大会の開催場所であるオッフェンバッハに移動するはずですので、上手いこと予定を合わせられるかな?



『まだ数日はいるから、またメールするよ。それじゃあ、マタネ!』


『あいよー』



 ん? ガビーは最後、逃げるように去って行ったけど、デジャブ感が。


 あ、なんか悪寒が……

 そういえば、昨日も悪寒がしたら優梨愛ちゃんがいましたね。






「環希が相手にアドバイスなんてするから、あたしが苦戦したじゃないのよ!」


「優梨愛ちゃんもお疲れー」



 優梨愛ちゃんでビンゴでした。



「アンタのせいで余分に疲れたわ」


「優梨愛ちゃん、これは神が与えたもうた試練だったんだよ」


「なにが神の試練だ、ナニが。アンタがペラペラとおしゃべりしただけじゃないのよ」



 てへぺろ♪



「そんなことないよ? これからは優梨愛ちゃんもマークされる立場になるんだから、相手は優梨愛ちゃんを研究してくるんだよ」


「それはそうかも知れないけど、なんか納得がいかない」



 だから、私がガビーにアドバイスとも言えないようなアドバイスをしたのも、優梨愛ちゃんの成長を促すためだったんだよ。

 け、けして、私がおしゃべりだったとかでは、ないんだからね!


 これは、愛のムチ。すなわち、試練なのだから。

 つまり、アイアム無罪。



「テニスとはお互いの長所を潰し合うゲームでもあるんだから、その自分の長所を潰されても何が出来るのかで、勝ち負けが分かれるんだよ」


「それはそうなんだけどさ」



 相手の長所を潰して短所を攻めるともいいますね。



「環希にしては、まともなことを言ってるわね」



 ここで、庭野まどかコーチの登場です。



「でも、ママもそう思うでしょ?」


「テニスの時はコーチと呼びなさい」


「私のコーチは麻生さんだもん」



 ママは優梨愛ちゃんと萌香ちゃんに帯同してサーキットを廻っているのだから、私のコーチングなんてほとんどやってませんし。

 それに、私に対して技術的には教えることはないとか、過去に言われてしまいましたもんね。


 つまり、私はママから育児放棄ならぬ、指導放棄を宣告されてしまっているのですよ。



「百合子じゃなくて、名目上は今でもお母さんがコーチなのよ」


「ママだって、自分のことをお母さんって言ってるじゃん」


「ああいえば、こういう。まったく誰に似たのやら……」



 誰に似たって当然、ママでんがな。


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