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2 0-1 15-0 記憶が飛んだ


 昨日の優梨愛ちゃんのアイアンクローで記憶が飛んでしまっていたみたいです。

 でも、ちゃんと無事にストレートで二回戦のR32を突破して、三回戦のR16へと駒を進めたから良しとしますか。


 この時点でもう既に、今大会では最低でも100ポイントは確定していますので、ニュージーランドのG4大会で獲得した60ポイントとは入れ替わりになります。

 まあ最終的には、この100ポイントで喜んでいるのではなくて、優勝して1000ポイントをげっちゅする予定ではあるのですがね!


 全仏オープンジュニアで優勝すれば、ランキングも一気に六位~八位ぐらいまでジャンプアップすることが出来るのです。

 というか、ジュニアグランドスラムを一つ優勝したとしても、運が悪ければ八位とかなのかよ……


 ジュニアランキングのダブルスの罠に、まんまと引っ掛かっているではありませんか。

 もう少し真面目にダブルスの試合にも出場していた方がよかったかな?


 でも、私が欲しかったのはランキング上位に入ることによる、出場試合数のプラスアルファがメインでしたので、ここまでくればジュニアでのランキングそれ自体には、そんなに拘ってはいないのですがね。

 もちろん、ジュニアグランドスラムのタイトルは欲しいですよ?


 だから、グランドスラムのタイトルを順番に制覇して行くとなると、自ずと自動的にランキングも上がるということですね。

 つまり、私がグランドスラムで優勝するのは既定事項なのだから、私のジュニアランキングの一位は、もう既に確定した未来だったのである!


 うん、これぐらいポジティブでなければ、世界を相手にして戦えないのですよ。


 以上、妄想終わり!


 妄想している間に、優梨愛ちゃんとガビーの試合が終わっていました。






 ※※※※※※






『ふぅ~、やっぱタマが言ったとおり、サトダは粘り強かったよ』


『ガビーは惜しかったね』



 優梨愛ちゃんとガビーとの試合の結果はといいますと……

 6-4、5-7、7-6(8)という結果でした。


 なんとかギリギリのところで、優梨愛ちゃんがガビーに勝利することができたみたいですね。

 試合時間も二時間半を越える大激戦でしたよ。二人ともお疲れさまでした。



『何度か前に釣り出せたりもしたんだけどね』


『前に出たがるのは、優梨愛ちゃんのクセだからね』



 もっとも、前に出てネットプレーをするのは勇気はいるけど、相手のリズムを乱れさせれるし悪いことではないのですがね。

 その分、リスクも高いのがネットプレーともいえます。



『でも最後に負けたのは、やっぱサトダとの地力の差なのかな?』


『地力もあるだろうけど、それよりもここまでくれば、勝つことを諦めない精神力が必要だろうね。あと、ちょっとは運も』



 こんなことがあるから、一概には精神論も馬鹿にはできない気がしますね。

 でも基本的に、精神論は好きではないのですけれども。


 特にテクニカルなことを論理的に説明できない人が、説明を誤魔化す為に精神論を振りかざすのは如何なものかと思います。

 そうならないように、私も気をつけねば。



『マッチポイントを握った時には、勝ったと思ったんだけどなぁ』


『まあ、普通は勝ったと思うよね』



 でも優梨愛ちゃんは、ちょっと普通のジュニア選手とは違ったみたいでして。



『マッチポイントを三回も跳ね返してブレイクするだなんて、サトダはどんだけ精神力が強いのよ。嫌になるわ』


『過去に優梨愛ちゃんは全日本ジュニアで、マッチポイントを五回も跳ね返したこともあるからね』


『五回って、それマジで?』


『うん、マジで』



 五回って、ガビーの誤解じゃないよ。あの時の優梨愛ちゃんはマジで凄かった。

 私も観戦していて、真夏なのに震えがくるぐらいだったからね。


 あの当時の中学一年生で、あの精神力は尊敬に値すると思います。

 あれから、優梨愛ちゃんも更に成長しているのだから、ガビーを相手にしてマッチポイントを三回凌ぐことも、優梨愛ちゃんにとっては造作もないことだったのかも知れません。



『くぐってきた修羅場の数が、あたしとサトダとでは違ったということかぁ』


『まあ、優梨愛ちゃんを鍛えたのは私だけどね』


『サトダの強さの秘密はタマだったのか。なんか納得したわ』


『優梨愛ちゃんは精神的にもタフだからね』



 散々私に虐め抜かれた成果とでもいいましょうか?



『ハードでサトダと対戦したら、今日みたいな接戦すら出来ずに、あたしがあっさりと負けそうな気がするよ』


『確かにガビーがワンランクアップしないと厳しいかもね』


『はっきりと言ってくれちゃって。でも、タマのそういうところ嫌いではないよ』


『言葉は明確に伝えないとね』



 言葉にしなくても通じると思うのは甘えだと思います。



『でも、ハードコートはアメリカやアジアとオセアニアがメインだからなぁ』


『ヨーロッパでは、ハードコートの大会は少ないからね』


『それがネックなんだよね』



 欧州の主戦場はクレーと芝シーズンのみグラスコートだから、ハードコートが少ないのは仕方ないよね。

 逆に日本のメインサーフェイスはハードと砂入り人工芝だから、日本人ジュニア選手はクレーと芝の経験値を積むのに難儀しているのです。だから、お相子さまなのかも知れません。



『これからのガビーの予定はどうなっているの?』


『来週はオッフェンバッハで、再来週がベルリンの予定だよ』


『オッフェンバッハ?』



 地名からしてドイツ系の街の名前であることは分かるのだけど、何処ら辺にある街なのかがイマイチピンときません。



『フランクフルトの隣の街みたい』


『なるほど』



 横浜は知っていたとしても、町田は知らないみたいな感じなのでしょうかね?

 それとも、川崎と狛江の関係が正解かな?



『オッフェンバッハもベルリンもクレーのG1だから、ポイントを稼ぐチャンスではあるんだよね』


『あー、そっか。ランキング上位の選手で気の早い子は、クレーシーズンは全仏オープンで切り上げて、早めにブリテン入りしてグラスコートの練習に時間を充てるのか』



 ウィンブルドン前にグラスコートで戦う前哨戦は、年によって違うけど、一回か二回しかないのですよね。ちなみに、今年は二回あります。

 だから、普段から気軽にグラスコートで練習ができるイギリス人の選手を除いて、どのジュニア選手でも芝での経験というのは不足しがちになるのですよ。


 それを補うため、早めにイギリスに行って芝での戦いに備えるのも、一つの選択肢ではあるんだよね。


 つまり、ガブリエラちゃんが言っている、オッフェンバッハとベルリンのG1大会の面子は、多少落ちるからチャンスというわけですな。

 それでも、G1大会なんだし、その週に欧州で開催される大会では一番グレードも高いのだから、空き巣狙いとまでは言わないけどね!


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