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2 0-1 0-0 おひさー♪


『タマ、久しぶりだね!』


『あ、ガビーじゃん! おひさー』



 優梨愛ちゃんの応援をしたりして、大会会場をウロウロとしていたら、ガビーこと、ガブリエラ・カブレラちゃんが声を掛けてきました。

 スペインで別れてから、約二か月ぶりの再会ですね。



『あはは、一昨日ぶりだけどね』



 まあ、本当は一昨日のうちにレセプションパーティーで会って、一言二言の声は掛けているのですけどね。

 でも、私は優梨愛ちゃんや萌香ちゃんたちと固まってましたし、ガビーもスペインの人たちと固まってましたので、あまりしゃべれなかったのですよ。


 それに、私は食べるのに夢中でしたし。


 ママはいろいろな人たちに引っ張りだこにされてましたけど。こうやって改めて見せつけられると、やっぱりテニス界では庭野まどかって有名人だったんだね。

 ITFやフランスのテニス協会のお偉いさんとかが、わざわざ向こうからママに挨拶にくるぐらいだもんね。



『そういえば、ガビーも初戦突破したんだね。おめでとう!』


『ありがとう。タマは第6シードのワンに余裕で勝っていたわね』


『ミンメイちゃんは調子が悪かったみたいだよ』


『なるほどね。それで、いま時間大丈夫かな? 一昨日はしゃべれなかったし』


『まだ私の試合まで時間はあるから大丈夫だよ』



 私の二回戦も今日あるのだけど、最後から二試合目だから夕方近くになってからの試合なんだよね。



『よかった。タマに聞きたいことがあるのだけど、いいかな?』


『私の知ってることだったら答えるよん♪』


『ユリア・サトダって、どれぐらい強いのかタマは分かる?』



 そういえば、ガビーの二回戦の対戦相手が優梨愛ちゃんでしたね。

 つまり、優梨愛ちゃんも無事に初戦を突破したのです。



『優梨愛ちゃんかー。優梨愛ちゃんも強いことは強いよ』


『それでは答えになってないわよ。もっと具体的に』



 ふーむ、具体的ですか?



『優梨愛ちゃんは、私に一度も勝ったことはないね!』


『その言い方だと、過去に何回も戦っているような言い方だね』


『ITFのサーキットでの対戦はないけど、過去に日本国内のドメスティックな大会で十数回は対戦しているかな?』


『じゅ、十数回も対戦していて、タマは負けてないんだ』


『でも、優梨愛ちゃんのコーチがママだし、私とも四年は一緒に練習しているから、私よりは弱いけど優梨愛ちゃんは粘り強いよ』



 粘り強さに関しては、私よりも優梨愛ちゃんの方に軍配が上がる気がしますね。

 もっとも、私の場合は粘る必要がないともいえるのですがね。



『あたしは50位だけど、サトダは27位なんだし、やっぱ強いよね……』


『あまりガビーの役に立たなくてごめんね?』


『サトダの弱点はないの?』



 優梨愛ちゃんの弱点? 優梨愛ちゃんは粘り強いし精神的にもタフだし、フォアもバックもそつなくこなすしなぁ。

 そう言われてみると、これといった弱点らしい弱点が見当たらないぞ?


 もしかしたら、優梨愛ちゃんってオールラウンダーの気がしてきたぞ。


 あれ? もしかして、優梨愛ちゃんってかなり強いんじゃね?


 でもこれでは、私のコーチング能力に疑問符が付いてしまうよ。

 これはいけません。私の沽券にかかわります。



『あえて言うとすれば、クレーでの経験は優梨愛ちゃんよりもガビーの方が上なんだから、自信を持ってプレーすることかなぁ?』



 思わず精神論を言ってしまったよ。


 でも、精神論とはちょっと違うのかもしれないけど、自己暗示って結構、馬鹿にできないのですよね。


 私はやれば出来る! 私は強い! 私は勝てる! とかさ。


 うん、どこからどう見ても精神論でした。本当にありがとうございました。


 しかし、優梨愛ちゃんとガビーを比較すれば、三月に私がガビーと対戦した時点では、まだ少しガビーの方がクレーでは上の感じがしましたので、二人の対戦はいい勝負になる気がしますね。



『あたしが自信を持ってプレーするのも大事だけど、サトダの弱点を知りたいんだよね』


『うーん、優梨愛ちゃんってドロップショットを打つのは、あまり上手くないかも?』


『そっか。でも、ドロップの対処が下手とかだったのなら、まだ良かったんだけどなー』


『そういえば、釣り出しには引っ掛かりやすいかも? 優梨愛ちゃんを釣り出してから、パッシングでドーンって結構決まった記憶があるよ』



 それと釣り出してから、ロブでおちょくるのも楽しいですよね!



『その、前に釣り出すのが難しいのだけど……』


『そうかな?』



 結構、簡単に釣り出せる気がするけどな?

 ああ見えても、優梨愛ちゃんって見かけによらず、猪突猛進の気があるしね。



『タマだから簡単に釣り出せるんだよ』


『まあ、なんたって私だからね!』


『その自信が羨ましいよ。おっと、そういうことで。また今度メールするから、ご飯でも一緒に食べに行こうよ。じゃあ、マタネ!』



 なんだったんだ? 最後は逃げ出すようにガビーは行ってしまったけど、なにを急いでいたのでしょうかね?


 ん? なにやら悪寒がするのですけど、風邪のひき始めでしょうか?


 だとしたら、不味いですね。テニスはジュニアの選手でもドーピング検査があるんだよね。

 だから、風邪薬を飲むにしても、どれが検査に引っ掛からない大丈夫な薬なのか?とか、一々気を使わなければならないのですよ。






「環希、アンタどっちの味方なのよ!」



 優梨愛ちゃんの声に私が振り向いたら、そこには当然ながら優梨愛ちゃんがいました。

 ……悪寒の理由はコレでしたか。



「優梨愛ちゃん、ギブギブ! 痛い、痛いってばっ!」



 暴力反対!



「さっきの子、ガブレラとかいう子でしょ? あたしが明日対戦する相手じゃないのよ!」


「べつに大したことは喋ってないよ」


「フロントとかフィッシュとか聞こえたわよ」



 アイアンクローを噛まされてしまった。

 これは握力が、50kg以上ありそうなアイアンクローだよ。


 それにしても優梨愛ちゃんの手って、オクターブが楽に届きそうなぐらい大きい気がしますね。


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