2 0-0 全仏オープンジュニア開幕!
ウィンブルドンが終わった時期に全仏オープンテニスを書いてるとはw
やってきました、全仏オープンジュニア、ローラン・ギャロス本選!
え、予選?
予選なんて二試合とも、ダブルベーグルでサクッと終わらせましたけど、それがなにか問題でも?
本選は64ドローだから、決勝まで勝ち進んだ場合には、最大で六試合を戦うことになるのです。
私の場合は余分に予選の二試合を戦っているのですから、最大で八試合をこなさなければ優勝できないのだ。
だから、本選に備えて、省エネ運転は必要なことなんですよ。
本選の強豪選手を相手にして、試合途中でガス欠だなんて、目も当てられないですしね。
ちなみに、優梨愛ちゃんとは、優梨愛ちゃんが順調に勝ち進んだ場合に、QF、準々決勝で対戦することになります。
萌香ちゃんとは、ドローの山が反対だったので、決勝まで当たりません。
萌香ちゃんは決勝まで上がってこれるかな?
ちょっと厳しそうな気がしますね。
それで、私の一回戦の対戦相手は、いきなり第6シードの選手でした。
ジュニア世界ランキング6位で、中国人のMingmei Wang選手です。
漢字で書くと、王明美さんですね。
もう既に、シニアの15K大会などでも優勝の経験がある、将来的にプロでの活躍も確実視されている、有望なジュニア選手が王明美選手ということです。
私はてっきりミンメイって、明命か民命だとばかり思っていたのですけど、アケミさんでした。
そういえば、中国語ではアメリカのことを、美国と書いて"メイグォ"とか呼びますもんね。
なんで日本では米国で、中国では美しい国と書いたり呼んだりするのかは謎ですけど。
それにしても、中国人のテニスプレイヤーで強い選手の名前には、王さんが多い気がするのは、私の気のせいでしょうか?
もしかしたら、王さんの家系はテニスの上手い遺伝子でも持った家系なのかも知れませんね。
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「ズムズムオンデマンドをご覧のみなさん、こんにちは。全仏オープンジュニアの一回戦、注目の庭野環希選手が登場する試合がやってまいりました」
「楽しみですね」
「実況は私、戸田。解説はズムズムテニス解説でお馴染みの、日本テニス強化委員でもある梅林大学テニス部監督の榊原郁夫さんにお願いします。榊原さん、どうぞよろしくお願いします」
「こちらこそよろしく。それにしてもインターネットとはいえ、ジュニアの試合を放送するとは時代も変わりました」
「庭野環希選手の快進撃に触発されて、急遽放送が決まったそうです」
「ジュニアサーキットのデビューから、リタイア以外では負けなしというのは凄いですね」
「庭野選手は出場した八大会中、七大会で優勝ですからねー」
「さすがは、庭野まどかさんの娘さんといったところでしょうか」
「そうですね。さて、解説の榊原さん。試合展開はどう予想しますか?」
「庭野選手には頑張ってもらいたいところですが、この試合はワン選手の方が有利な気がしますね」
「それはまた、なぜでしょうか?」
「経験値の差とでもいいましょうか」
「経験値ですか?」
「はい。デビューから実質負けなしとはいっても、庭野選手はジュニアサーキットにデビューしてから、まだ僅か半年しか経ってません。かたやワン選手は17歳でジュニアでの経験も豊富にあります」
「なるほど。ワン選手は高校三年生の年齢でしたね。それに比べて、庭野選手は中学二年生ですか」
「その通りです。ジュニア時代の四才の差というのは、大人になってからの四才差、それ以上に差があると思います」
「そのワン選手ですが、もう既にシニアの15K大会での優勝の経験もありましたね」
「そう、大会のグレードは低かったとはいえ、プロ相手に優勝しているワン選手の実力は本物です」
「庭野選手には、まだその経験が足りないということですか」
「そうなりますね」
「全仏オープンジュニアに出場している他の日本人選手はどうでしょうか?」
「日本人選手で優勝に近いのは庭野選手ではなく、坂巻選手や松中選手の方が優勝の可能性は高いのではないでしょうか」
「その二人は学年でいったら、ワン選手と同じ高校三年生ですね」
「ジュニアの大会に出場できる一番上の年齢になりますね」
「その年齢の分だけ経験を積んでいるわけですか」
「ええ、経験というのは、何事にも代えがたい貴重な財産だと思います」
「里田優梨愛選手はどうでしょう?」
「里田選手は坂巻選手とのダブルスに期待が持てると思います」
「二人は全豪オープンジュニアのダブルスファイナリストですから、榊原さんのおっしゃるとおり、今回の全仏オープンジュニアでも活躍が期待できそうですね」
「それもありますけど、ローランギャロスにたどり着くまでの、ここまでの過程が順調なのが良いですね」
「そういえば、里田坂巻ペアは、全仏オープンジュニアの前哨戦でもある、イタリアのGA大会で優勝していましたね」
「そうです。この二人に比べると、庭野選手は三月の下旬に虫垂炎で入院して手術までしていますので、どこまで回復しているのか疑問符が付く気がします」
「庭野選手が復帰してから、オーストリアとハンガリーのG2大会を二連続で優勝していても、それでも疑問符は付くのでしょうか?」
「G2大会とジュニアとはいえ、グランドスラムを同列に語ることはできないと思いますよ」
「なるほど、それもそうでしたね」
「ええ、G2とグランドスラムとでは、G1とグランドスラム以外のGA大会が、グレードの差として間にあります」
「グレードが三つも違うということですか?」
「そうなります。いままで庭野選手が優勝した大会の最高のグレードはG2大会までです」
「庭野選手は、ニュージーランドでG4とG3の大会に優勝して、スペイン、オーストリア、ハンガリーでの優勝はG2でしたね」
「それに比べて、坂巻選手にはG1大会での優勝の経験や、ダブルスではGAでの優勝とジュニアグランドスラムでの準優勝の経験があります」
「庭野選手以上に坂巻選手に期待が持てる経験と実績というわけですね」
「そうなりますね。その事実、坂巻選手のジュニアランキングは庭野選手よりも上位である、18位にランクインしているのですから」
「しかし庭野選手には、これまで実質的に無敗という未知の強さがあるような気がしませんか?」
「そうですね。庭野選手に否定的な意見は言いましたけど、庭野選手が若さと勢いで、どこまでワン選手を相手にやれるのか注目はしています」
「さあ、その注目の庭野環希選手の試合開始は、もう間もなくです!」
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「萌香さん、なに見ているんですか? もうすぐ環希の試合が始まりますよ」
「ズムズムオンデマンドだよ」
「そういえば、ジュニアの試合も放送するとか言ってましたね」
「解説のオジサンが、わたしの方がたまきちゃんよりも実力が上とかほざいてて、超ウケるんですけど」
「えっ!? その話マジですか?」
「マジもマジ、大真面目にしたり顔で語っちゃってたわー」
「環希ファンの萌香さんにしてみれば、噴飯ものみたいですね」
「うんうん、おへそでお茶を沸かせるぐらいだよ! オマケにミンメイちゃんよりも弱いだってさ」
「王ミンメイよりも環希が弱いですか? それはないと思いますよ」
「だよねー。こんなんで、強化委員とか笑わせてくれるよねー」
「なんか、その解説の人が憐れに思えてきちゃいますね……」
「このオヤジ、たまきちゃんの本当の実力を解ってないわー」
「まあ、あの子の本当の強さは、対戦したことのある相手じゃないと説明が付かないのかも知れないけど」
「それでも、たまきちゃんの試合を見たことがあるなら、あんなこと普通は言えないと思うけどなぁ」
「環希なら、解説の人の予想もあっさりと覆してみせてくれますよ」
「それもそうだね!」
ITFプロのポイント変更やジュニアの大会の名称変更、G1→J1などは、小説の中の架空時間では来年度から変更する予定です。