1 6-5 40-15 パリといったら?
誤字報告、凄い便利ですね。
報告してくれた方、ありがとうございました。m(_ _)m
「ひぇーっ! こ、怖いぃぃぃ!」
「えー、いい眺めじゃん」
「わたしも大丈夫かな」
どうやら優梨愛ちゃんは、高所恐怖症だったみたいです。
「萌香さんも環希も、よく平気な顔でいられるわ。信じられん」
「優梨愛ちゃん、真下を見ないで遠くを見れば怖くないはずだよ」
ふはははは! まるで人がゴミのようだ!
「なるほど、それもそうか」
「あれが凱旋門か~」
パリにやってきて、無事にママと優梨愛ちゃんと萌香ちゃんとも合流できました。
二人はミラノのGA大会のダブルスで見事に優勝を飾っていました。シングルスは萌香ちゃんがQFで、優梨愛ちゃんはR16で敗退してしまったけど。
でも二人にとってこのダブルスでの優勝は、全仏オープンジュニアでも優勝が期待できる手応えを掴んだ前哨戦だったのではないでしょうか。
前哨戦と本番の両方を連勝した人が少ないというデータは、このさい無視しておきましょう。
それで今週は、全仏オープンジュニアの予選が木曜日から始まるので、月曜日である今日はオフ日としてパリの街を観光しているのです。
まあ、予選から出場するのは私だけなんですがね。
この時点での私たち三人のランキングはといいますと、私が30位で優梨愛ちゃんが27位、萌香ちゃんに至っては18位という高ランクに位置しているのです。
残念、まだ優梨愛ちゃんを追い越せなかったよ!
こうしてみるとジュニアのランキングでは、ダブルスのポイントも馬鹿にできないポイントというのが、良く分かるランキング順位だと思います。
二人はダブルスでポイントを荒稼ぎしているもんね。
たかが、1/4。されど、1/4ということかぁ。
まあ、来週には優梨愛ちゃんだけでなく、萌香ちゃんのランキングもぶち抜いている予定ではあるのですがね!
「思っていたよりも低く感じられるね」
「そりゃあ、高い所から見下ろしているからだよ」
「まあ、石で作られた門にしては高いんじゃないかな?」
凱旋門を見て、優梨愛ちゃんがイマイチな感想を漏らしていますけど、間近で見上げれば、また違った感想になる気がしますね。
「日本では、あんな形をした門だと地震で崩れてしまいそうだよね」
「石造りの建物って日本だと、お城の石垣ぐらいだもんね」
そう、田舎から出てきたパリへのお上りさんよろしく、エッフェル塔に登ってパリの景色を眺めているのです。
まあここでは、私たちは外国人観光客ともいいますけど。
麻生さんがエッフェル塔に入場する優先チケットを事前に手配してくれていたので、入場待ちをする行列を横目に見ながらスルーしてサクサクとエッフェル塔に登ってこれました。
さすがは麻生さんです。出来る秘書は一味違いますね。
「ルーブル美術館はどっちの方向にあるの?」
「ルーブル美術館はセーヌ川の北側にある公園の更に奥にあるアレだね」
「手前のアレは違うの?」
セーヌ川の向こう側って言ってますやん。
優梨愛ちゃんも人の話をちゃんと聞かない子だったんだね。
「アレは軍事博物館だったと思う」
「お城か宮殿じゃなかったんだ」
「もしかしたら、昔はそうだったのかもね。ルーブル美術館は川の向こう側にあるヤツだよ」
「アレか! ルーブル美術館って大きいんだね」
「そうソレ」
大英博物館かルーブル美術館かスミソニアンかって言われるほどだし、収められているブツも多いのでしょうね。
あれ? メトロポリタン美術館が入ってないぞ?
まあいっか。
「シャンゼリゼ通りはドコにあるの?」
「シャンゼリゼ通りは、凱旋門からルーブル美術館の手前のアノ広場までだったはずだよ」
「あー、あの広場か」
「あそこがコンコルド広場だよ」
もっとも、超音速旅客機のコンコルドは展示してませんがね。その代わりに、マリー・アントワネットの地縛霊でも居ついているのかも知れませんが。
でも、わざわざ優梨愛ちゃんに教えて怖がらせることもないので、マリー・アントワネットがギロチンで処刑された広場だとは黙っていましょう。
「へー、環希は詳しいんだね」
まあ、前世ではパリに何回か来たこともあったし、覚えていたのですよ。
もっとも、年々前世の記憶は薄れてきているのですがね。特に人間関係とかが、かなりあやふやな記憶になっている気がします。
「過去に何千人も処刑されて血に塗れている場所ね」
ちょっ!?
「ひぇーっ!!」
「しょ、処刑場でしたか……」
優梨愛ちゃんだけではなくて、萌香ちゃんまでドン引きしてまんがな。
「せっかく、私が黙ってスルーしていたのに」
ママはなにをぶっちゃけてやがりますかね?
「あら、歴史は正しく伝えないと」
「それはそうだけどさ」
でも、もうちょっと言い方ってモノがあると思うんだけどなぁ。
そう、オブラートに包んだ言い方とかがさ。
「環希は知っていたの?」
「観光ガイドにも載っているぐらいには有名だからね」
「そうだったんだ、知らなかったよ」
「昔は処刑を見物するのが庶民の娯楽だったのよ」
一般大衆への見せしめとガス抜きだったのかな?
「娯楽ですか……」
「昔の人は残虐な行為が好きだったのかな?」
「今よりも人の死が身近だったのは確かだろうね」
昔は医療とかも未発達だったから、それはママの言うとおりだろうね。
人の命が軽い時代だったから、ギロチンで処刑されるのを見物するのにも抵抗がなかったのかも知れません。
「優梨愛ちゃん、価値観なんてモノは時代とともに変化するモノなんだよ」
「それはアンタが言うとおりなのかも」
「現代の価値観を当て嵌めるのは無理があるということね」
「わたしは昔に生まれなくて助かったよ~」
「萌香さん、ソレあたしもです」
それは私も二人に同意するよ。文明の利器が無い時代だなんて、現代人には辛すぎる時代だよ。
おもにパソコンやネット環境とかが無いとね。
「そろそろ下に降りましょうか?」
この外気に直接触れる展望台はそんな長居をする場所でもないですし、麻生さんの提案はちょうどいいタイミングだったよ。
「みんな次はドコに行きたい?」
「コーチ、あたしは時間があったらシャンゼリゼ通りを歩いてみたいです」
「あ、それいいかも。わたしも賛成」
む? 優梨愛ちゃんと萌香ちゃんは、シャンゼリゼ通りの散策を希望ですか。
二人ともミーハーだったみたいです。
凱旋門を外から見物してコンコルド広場まで歩いたとしても、小一時間ぐらいしか時間も掛かりませんのでオススメコースではあるよね。
だがしかし、私のオススメ観光スポットは違うのであります!
「私はカタコンベを見に行きたいかな」
「カタコンベ? なにそれ?」
前世でカタコンベを見た時には衝撃を受けたよ。
でも、もう一度見たいという欲求があるのです。おそらく、人を引き寄せるナニかがカタコンベにはあるのですよ。
怖いもの見たさというヤツなのかも知れません。
「人の骨が埋まっている場所だよ」
「げっ!」
「たまきちゃん、それってつまり……」
「集団墓地みたいなモノかな?」
遺骨の一時保管場所とか、納骨堂が正解なのかも知れないけど。
「お墓……」
「つまり、骸骨が一杯お出迎えしてくれるんだよ!」
「い、いやーっ!!」
「好き好んで骸骨を見たいだなんて、環希も趣味が悪い」
なんでやねん。カタコンベええやんけ。
「でも、パリといったら、カタコンベは外せない観光名所なんだよ!」
「骸骨を見てなにが楽しいのか理解に苦しむよ」
まあ、その優梨愛ちゃんの言い分は分かるよ。
カタコンベの魅力は、言葉では説明できないナニかの気がするしね。
「死んでまで、観光客の晒し者になるのは可哀そうな気がしますね」
「麻生さんに同意します」
まあ、それは言えるかもしれませんね。
カタコンベに埋葬された昔の人たちも、まさか観光名所になって観光客が押し寄せてくるとは思ってもいなかっただろうしね。
「カタコンベはお母さんも遠慮しておくわ」
「わたしも遠慮します!」
「あ、あたしもパス!」
みんなして、つれないですね……
「私も遠慮させていただきます」
「麻生さんまで!?」
「カタコンベに行きたいなら、環希一人で行ってらっしゃい」
なんでやねん。カタコンベええやんけ。
それにしても、パリは美術館や博物館に宮殿がやたらと多い気がしますね。
さすがは、歴史のある芸術の都といったところでしょうか。
「それにしても、こうして見渡してみると、パリって高層ビルがないんだね」
「それは景観に配慮しているんじゃないかな」
「景観?」
「パリ自体が観光地だし、芸術の都は建物にも景観が求められるんだよ」
あと、フランス人の美的センスが高層ビルを受け付けないのかも知れませんね。
詳しくは知らん。
「環希が正解ね」
「アンタにしてはやるじゃん」
「あの一つだけ高いビルが景観を邪魔している気もするけどね」
あのビルは、パリの景観全体の調和を乱している、違和感を感じさせるビルだと思います。
「トゥール・モンパルナスですね。あのビルのおかげで、パリでは高層建築に規制が出来たとか」
「百合子は博識だわ」
「結構、有名な話ですよ」
そういうことでしたか。ということは、あのビルが取り壊されたらいいのにとか思っているパリっ子は多そうですね。
「さ、降りるわよ」
「はーい」
「カタコンベは行かないからね」
「時間があったら一人で行くからいいもんねー」
ちなみに、ベルサイユ宮殿はブローニュの森を挟んで反対側なので、今回の観光では行きませんでした。
ベルサイユ宮殿に行けるとしたら、全仏オープンジュニアが終わった後でしょうね。
とりあえず明日まで連続投稿。
次こそはテニスの話に戻ります(汗