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1 6-5 30-15 ハンガリーといったら?

半年以上エタっていて申し訳ありませんでした。m(_ _)m

ウィンブルドンを見て、少しだけモチベーションが出てきたので書いてみたけど、内容が…




 ブダペストの空港へとやってきました。


 ここから全仏オープンが開催されるパリへと、エールフランスで飛び立つのであります。


 しかしなぜか、ハンガリーのテレビ局が取材を続けているんスよ。

 テニスの取材は、さっき終わった気がするのですけど?


 まさか密着取材で、パリまで追いかけてくるなんて事はないよね?



『ニワノ選手はインターネット上で、ピアノの動画をアップして人気を集めていますよね?』


「ええ、そこそこの人気はあるみたいですね」


『そこそこどころの騒ぎではありませんよ!』



 お、おう。アナウンサーのお姉さん興奮し過ぎですってば。



「そうなんですか?」



 私のピアノ動画は、そこそこ人気がある程度で、日本ではそんなに騒がれてはいなかった気がするのですが?

 でも、ハンガリーの人にも知ってもらえているというのは、素直に嬉しいですね!


 人気のあるユーチューバーは、年間で数億、下手したら十億以上稼いでいる人もいるみたいですし、私なんて彼らの足元にも及びません。

 まあ、その人気のあるユーチューバーの上げている動画はピアノ動画ではないけどさ。


 私の場合は、辛うじて、四桁栄一さん程度の収入のはずです。たぶん……

 広告料の振込先がママ名義だから、正確な数字は私にも分からないのですよ。



『動画の再生数が7000万ですよ! 人気アーティストの曲に引けを取らない数字です!』



 あー、お姉さんが興奮している理由がなんとなく分かってしまったよ。



「もしかして、シャルル・ドゴール空港のヤツかな?」


『ええ、ニワノ選手がシャルル・ドゴール空港で弾いた演奏は感動しました!』


「あー、アレでしたか…… アレはフラッシュモブだったからじゃないかなぁ?」



 あの動画は、自然発生したエキストラの人たちがいて、はじめて人気が出た代物だと思います。

 ただ単に、私が普通にピアノを弾いているだけであったのならば、きっと再生数は1/50とか、それ以下とかだったでしょうしね。


 人気アーティストの曲でいったら、再生数が数億とか行きますしね。

 まあ、それでも、ピアノ動画をうpしているユーチューバーの中では、日本でも指折りの人気を誇っていると自画自賛できる再生数でしょうね。






 ※※※※※※






『ここで、ニワノ選手に問題です!』


「クイズですか?」


『はい! クイズです! ハンガリー出身の作曲家といえば?』



 アナウンサーのお姉さんは、相変わらずテンションが高いですね。



「ハンガリーといえば、リストかな?」


『おー! さすがはピアニストでもあるニワノさんです!』



 正直に白状しますと、リストぐらいしか知らないんだけどね。

 それに此処は、リストの名を冠した、リスト・フェレンツ国際空港だし……


 こういうのを、ヤラセとか出来レースって言うのでしょうかね?

 テレビ局の番組制作は、日本も外国もあまり変わらないみたいでした。


 でも、この流れでいったら十中八九、ピアノを弾くことになりそうだなぁ。

 テレビカメラの前で弾くのは、もしかしたら初めての気がしますね。


 あー、そういえば、小学生の時に密着取材があったから、あの時に撮られていたような気もしましたね。

 もっとも、普段からビデオカメラやスマホのカメラの前では演奏しているのだから、テレビカメラでもたいした違いではないのかも知れません。



『おーっと! ここに何故かピアノがありますね!』



 なんという、棒読みでしょうか。



「ええ、ピアノが置いてありますね」



 でも最近では、空港やターミナル駅にピアノを設置して自由に演奏させるのが流行っていますので、ここにピアノがあったとしても何ら不思議でもないのでしたね。

 ここは、ハンガリーの首都の玄関口である国際空港なのですから。



『お約束というヤツですね!』


「あ、あはは……」



 どうやら、やっぱり私に演奏して欲しかったみたいでしたね。



『ニワノさんは、リストの曲は覚えているでしょうか?』


「愛の夢ぐらいしか弾けませんけど、それでも良かったら」



 ラ・カンパネラは、ちょっとオナニーが激しすぎる気がして、弾いていても疲れるんですよね。

 まあ、作曲や作詞にしても小説にしても、創作なんてモノは人に頼まれて作ったモノ以外、多かれ少なかれオナニーの気がしないでもない。


 け、けして、ラ・カンパネラが弾けないわけじゃないんだからね!

 一応は弾けるのですけど、ぶっちゃけ、弾いていても楽しくない!


 なんと言えばいいのかな? 技巧に凝り過ぎて、音が不協和音を奏でているようにしか聴こえない曲とかもあるのですよ。

 玄人が絶賛する音楽が、けして素人にも受けるとは限らないというのを忘れていると思います。


 弾いている一流のピアニストも悪く言えば自分に酔っちゃっていて、百面相をしたり軟体動物のような動きやオーバーなリアクションとかもして、見ているこっちの方が恥ずかしくなる気がしますね。

 まあ、そうでないピアニストもいることはいるのですけど。


 良く言えば自分の世界に入り込んでいる、トリップしているだけなのかもしれません。


 あと、ショパンの幻想即興曲に革命や、ラフマニノフのなんとかも似たようなタイプですね。

 それに、ラフマニノフは暗い曲ばかりの気がするし。ラフマニノフが暗いのは、ロシア人の気質でしょうかね?


 ショパンの革命やエチュードの四番は好きだけど、ムズい。

 これが練習曲だなんて、ショパンは頭のネジが何本か飛んでいると思います。


 私が演奏する場合は、ところどころ誤魔化して弾いちゃいます。

 コンクールやコンテストじゃないんだから、なにもクソ真面目に譜面どおりに弾かなければならないなんて理由はありませんよね?


 私が弾きやすいように弾いて、なにが悪い? 文句あるか?


 だからといって、けして私がクラシックを否定している訳ではないですよ?

 私もクラッシックは好きな人種だと自負していますので。


 でも、私が自分で演奏する場合は、ゆったりとしたメロディを、お淑やかに弾くのが性に合っているのですよ。

 これでも一応は、お嬢様の端くれだからね!


 つまり、バラード系。

 例外はラグタイム。スコット・ジョプリンは神! 異論は認めない!



『愛の夢、いいですね~。是非お願いします!』



 愛の夢でも、三番しか弾けないっス。

 一番と二番はマイナーだから覚えなかったんだよぉぉ!



 ~♪ ~♬ ~ ~♩ ~♫ ~ ~♪




 オクターブがまだちょっとキツイぜ。


 こ、小指が…


 あと5mm小指が長かったら、オクターブがもっと楽になるんだけどなぁ。

 小指の長さが薬指の第一関節まである人が、少し羨ましく思えてしまうよ。



 ~♪ ~♬ ~ ~♩ ~♫ ~ ~♪



 リストの中で好きな曲は、シューベルトの曲をリストが編曲したセレナーデが一番好きかも知れませんね。

 あのゆったりとした流れる感じが、心を穏やかにしてくれる気がしませんか?


 愛の夢から繋いで弾いちゃろ。



 ~♪ ~♬ ~ ~♩ ~♫ ~ ~♪



『おおっ! リスト編曲のシューベルトのセレナーデですね』



 私は笑顔で頷くことで、アナウンサーのお姉さんへの答えとした。


 セレナーデは、フランス映画の挿入歌として合いそうな曲の気がしますね。

 でも、リストだけあって途中で一瞬だけ激しい遊びも入っていたりもしますがね!



 ~♪ ~♬ ~ ~♩ ~♫ ~ ~♪



 セレナーデを弾き終わって、次の曲は一転して明るく楽しく元気の出るような曲にしました。



 ~♪ ~♬ ~ ~♩ ~♫ ~ ~♪



『最後の曲は、ハンガリー狂詩曲の二番に似ていたような気がするけど、誰の曲でしょうか?』


「これは、日本の運動会とかで良く流れる曲ですね」



 そう、私が最後に弾いたのはクシコス・ポストでした!



『運動会?』



 いぐざくとりー!


 てててーてててーてててててっ! てってててっててっててーふーちゃんふーにゃんふーらんぼぼぼ♪


 こんな感じのメロディーですね。



「作曲家はドイツ人みたいですけど、この曲の源流はハンガリー民謡とか聞きました」


『確かに、ヴェルブンコシュやチャールダーシュに似ている曲ではありますね』


「麻生さん、クシコス・ポストのクシコスの綴りってなんだっけ?」


「csikosだと思いますよ」


『なるほど。csikósは、確かにマジャル語ですね』


「ハンガリー語とドイツ語のちゃんぽんだったんですね。それは私も知りませんでした」


『ちゃ、チャンポン?』



 ハンガリー人の通訳さんは、ちゃんぽんをそのまま訳してしまったのかよ。

 まあこれは、ある意味では仕方ないのかも知れません。日本人で英語を喋れる人であっても、英語のスラングとかまでは使いこなせない人が大半ですしね。



「ちゃんぽんとは、二つ以上のモノを合わせるとか、ごちゃ混ぜにする時に使う日本語の俗語になるのかな?」


『なるほど』



 そういえば、運動会つながりでいったら、天国と地獄という曲もありましたね。



 ~♪ ~♬ ~ ~♩ ~♫ ~ ~♪



『この曲もクシコスポストと雰囲気が似ていますね』


「これも日本の運動会でよく流れている曲で、天国と地獄という曲です」


『天国と地獄?』



 あれ? 天国と地獄では通じない? これは邦題だったのかな?

 私は助けを求めるように麻生さんへと視線を向けてみると、打てば響くかのように麻生さんが答えを言ってくれました。



「地獄のオルフェの序曲第三部のことです」


『曲は知らなかったですけど、その題名なら聞いたことがあります』



 麻生さんナイスフォローです! 助かったよ。

 曲名というのは、邦題と海外で知られている正式な名前とが違う場合が多々ありますので注意が必要な気がします。


 それにしても、スラスラと正しい曲名が咄嗟に出てくるのですから、やはり麻生さんは良家のお嬢様出身の可能性が高そうな気がしますね。



 わちゃわちゃとした感じの曲といえば、こんなのもありましたね。



 ~♪ ~♬ ~ ~♩ ~♫ ~ ~♪



『ハンガリー舞曲の五番、いい曲ですよね~』



 そう最後は、ハンガリー舞曲の五番で〆させてもらいました!



『ニワノ選手、今日はありがとうございました』


「私も楽しかったです! こちらこそありがとうございました」



 お? ちゃんと私の事をテニス選手だと覚えていてくれましたか。

 私の本職はピアニストではなくて、テニス選手なのですから。



『また是非、ハンガリーに来てください!』


「WTAのツアー大会があったら、また来れるはずですよ」



 でも、ハンガリーでインターナショナルが開催される2月の第3週は、ドバイのプレミアと日程が重なるんだよなぁ。

 賞金もドバイの方が4倍高いですし、カタールと一年交代でプレミア5とプレミアで開催しているから、隔年でいったら賞金の差は、ハンガリーの大会の10倍以上の差になるんですよね。



 まあ、早くても再来年以降の案件ですから、いま悩んでも仕方のないことでしたね。

 私はまだプロツアーには参加できない年齢なんですから。



『その日を楽しみに待ってますね。再来週のローランギャロスも頑張ってください』


「優勝目指して頑張ります!」



 さて、パリに向かって出発です!

 さらばハンガリー、また来る日まで~♪


 なんか、周囲でピアノの演奏を聴いていた百人以上の人に見送られてしまったんだけど、私が誰か知らないで見送っている人の方が多そうな気がしますね。

 でも、悪い気分ではありません。気分はもう既に、スター選手の仲間入りですよ!


 そう、気分だけは。


ブルクミュラーを途中で放り出したヘタレがピアノを語ってごめんなさい><

テニス小説じゃなくてピアノ小説になってしまった…どうしてこうなった?


あと四話分は書いたので、ボチボチと上げていこうかと思います。

それと、誤字報告受け付けるにしてみました。


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― 新着の感想 ―
ハンガリー出身で他に思い浮かぶ作曲家…… ゾルターン・コダーイと、ベラ・バルトーク。うーん、リストでええですわな。
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