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1 6-5 0-15 値段がネック


「あっという間に、ブダペストに到着~♪」


「名古屋に行くよりも、距離的には近いですからね」



 レイルジェットの終点であるブダペスト東駅に到着しました!


 うん、いかにも東欧って感じがする駅ですね。

 ゴシック建築とかいうヤツのかな? 詳しくは知らん。


 でも、近代的な駅だったウィーン中央駅とはだいぶ趣が違います。

 旧社会主義国の、やや殺風景な感じがする駅とでも言えば良いのでしょうか?


 レイルジェットでの旅は、なかなか快適な旅でした。やはり、列車に食堂車が付いていると、旅に彩を添えてくれる気がして、なんだか嬉しくなっちゃいますよね。



「両替をしてきますので、そのベンチで待っていて下さい」


「はーい」



 ハンガリーはEU加盟国であっても、使用している通貨はユーロではなくて、フォリントという独自の通貨を発行しているのです。

 面倒だからEU加盟国ならば、全部の国がユーロに切り替えろよとか思わなくもないのですけど、フォリントのままの方が外貨獲得とかで、輸出する時に有利なんでしょうかね?


 あと、ハンガリーの財政が問題で、ユーロの導入が遅れているのかも知れませんね。


 両替を済ませ、地下鉄に乗り換えてドナウ川を渡り、ブダペストのブダ側にあるケレンフェルドまで、10分少々で着きました。

 そこから、タクシーに3キロばかり乗って、グランドスラムパークにやってきました。


 グランドスラムパークなんて、大層な名前を付けていますけど、ロッジ風のホテル兼テニスコートの名称なんですよね。ここで、Alfa TI CapというG2大会が開催されるのです。

 なんだか、名前負けしているような気もしますけど、アンツーカーの綺麗なクレーコートが揃ってますし、ドーム型の屋内コートもありますから、雨が降っても試合はできるので、大会の開催にはうってつけではあります。



「麻生さん、このドームってウチでも使えそうじゃない?」


「便利そうではありますけど、値段次第でしょうね」



 日本は雨が多いのだから、この簡易型みたいな膨らませて作るドームがあれば便利そうな気がしますね。嵐の時には空気を抜いてしまえば、吹き飛ばされる心配もなさそうですしね。

 この簡易ドームは、私の自宅のコートにも使えそうな感じがしますので、取り扱い業者と値段を聞いておきましょう。



「やっぱり、値段がネックかぁ」


「ええ、まどかさんは意外とケチですからね」



 麻生さんも、ママのことをケチだと思っていたのですね。

 まあ、私が生まれる前からの付き合いなのだから、ママの性格は私よりも、麻生さんの方が良く理解しているのかも知れません。


 ママを納得させられる値段だと良いのですけど、ママがダメなら、上目遣いでお爺ちゃんにお願いしてみましょうかね!

 お爺ちゃんならば、可愛い孫娘のために一肌脱いでくれそうな気がしますし。


 それはそうと、ブダペストには有名な温泉があるのだから、時間があれば一度、旅の思い出としてブダペストの温泉に入ってみたいですね。

 ハンガリーは、WTAのツアー大会も開催されたりされなかったりしていますし、開催されたとしても時期が悪かったりするので、これからの将来においてハンガリーには、そうそう来ることもなさそうな気がしますしね。






 ※※※※※※






 本戦初日の前日に、麻生さんと一緒にコートで軽めの練習していると、声を掛けてきた人物がいました。



『あなたが噂のタマキ・ニワノね?』



 私の噂とは、一体どんな噂が流れているのでしょうか?

 私が庭野まどかの娘だとか、ビリェナの大会でリタイアした以外は、ジュニアサーキットでデビューしてから負けてないとかでしょうかね?



『はい。私がタマキ・ニワノですけど、何か用でしょうか?』


『わたしは、イレーヌ・ベルティエ。わたしとダブルスを一緒に組んでもらえたら嬉しいのだけど』



 なんか、金髪美少女にナンパされました。まあ、ダブルスのお誘いなのですがね。

 イレーヌ・ベルティエ。ベルティエ素子? それは、ペルティエだった!


 でも、フランス人なのは同じですね。


 今大会のダブルスは16ドローだから、最大で4試合のプラスですか。

 うーん、来週は全仏オープンジュニアの前だから、大事を取って念のために休養を入れてあるので、スタミナと疲労の心配はしなくても大丈夫かな?


 それに、ダブルスの経験もジュニアのうちに積めるだけ積んでおいた方が、後々の為にもなりそうですし、ここは一つ、ベルティエさんのお願いを受けた方が良さそうな気がしますね。



『そうですね。私も来週は休みますので、別にペアを組んでも構いませんけど、本当に私でも良いのですか?』


『ニワノは、』


『タマキでいいよ』


『じゃあ、タマキで。わたしのことも、イレーヌと呼んでちょうだい。それで、タマキは三月に、ダブルスでスペインのG2大会を優勝しているでしょ?』



 ダブルスだけではなくて、シングルスでもちゃんと優勝しているよ!



『確かに優勝はしたけど……』


『なにか問題でもあったの?』



 私とダブルスを組むのは、熟慮してから方がいいと思うのだけどなぁ。



『私のタブレットに、バレンシアでのG2大会のダブルスの試合がダイジェストで入ってるから、それを見てから判断しても遅くはないと思うよ』


『そうね。参考にもなるでしょうから、見させてもらうわ』



 私はバッグからタブレットを取り出して、端末を操作してガビーと組んで優勝した、ベニカルロの大会の動画をイレーヌに見せてあげた。




 ダイジェスト視聴中……




『どうだった?』


『な、なかなか斬新なプレースタイルね……』



 うむ、自分でもそう思うよ。試合の後で、自分のプレーを映像で客観的に見せつけられるのって、結構恥ずかしいんですよね。

 特に、このダブルスの試合は、のたうち回りたくなるぐらい恥ずかしいプレーをしていたのだから、なおさらなんですよ。


 でも、言い訳をさせてもらえるならば、試合中は一応なりとも集中してプレーをしているのである。これでも、一応は。

 だから、私が周りからどんなふうに見られているのか? そんなことを一々考えてプレーはしていませんので、これは仕方がないのです。



『私とペアを組むと、イレーヌはプレーがやりづらくなるはずだよ』


『この動画を見たら確かに、タマキに合わせるのはやり難そうではあるわね……』


『私はイレーヌさえ良ければ、ペアを組んでも構わないから、イレーヌが決めて下さい』


『ダブルスって、タマキみたいにクセが強い選手とペアを組むのも勉強になると思うから、ペアを組むのをお願いしたいわ』



 それは確かに、イレーヌの言うとおりではありますね。

 私のクセが強いのは、私自身理解しているけど、私以外にも変則的なプレーをする選手がいない訳ではないのだ。


 だから、イレーヌが言う勉強になるというのは、本当なんだろう。



『取り敢えず、今大会だけの臨時のペアとしてかな?』


『うーん、ペアの相性とかもあると思うから、取り敢えずはそうなるかな?』



 まあ、最初は一大会だけのお試しというのは、普通ではあるよね。

 それに、私も本腰を入れてダブルスをするつもりは、今のところ無いのだし。



『イレーヌはローランギャロスに出場するの?』


『わたしのランキングは140位だけど、もう既にシングルスとダブルス両方とも、ワイルドカードでの出場が決まっているよ』



 なるほど。それだったら、全仏オープンジュニアのダブルスのペアを組む相方は、フランス人の選手で確定しているということだな。



『あー、地元のフランス枠ってヤツかぁ』


『そういうこと。ちょっとズルいとは思うけどね』


『地元特権とはいえ、使えるモノは使わないと損だよ』


『あはは、タマキの性格がなんとなく分かったよ』



 私の性格? つまり、もらえるモノは街角で配っている無料のポケットティッシュでも、ありがたく頂戴するというのがバレてしまったということでしたか……

 でも、タダで貰えるポケットティッシュって、案外馬鹿にできないと思います。ポケットにあったらいざという時に、有難い存在なんですよね!


どんどんサブタイが適当になってきたw

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