1 4-5 40-30 麻生さんは話が分かる
ゴールデンウイークに入りました。
私も無事にチクチクが治って助かりました。入院したことによって多少落ちた体力も、この一月の間に取り戻すことができました。
それで、現在の時刻は朝の6時半になります。羽田空港の国内線第二ターミナルに来ています。
ママと優梨愛ちゃん萌香ちゃんの三人は、今頃、コートダジュールからイタリアのサルソマッジョーレ・テルメに移動した頃でしょうか?
早朝の五時前にお婆ちゃんに起こされて、眠い目を擦りながらも身支度を整えました。
五時半に麻生さんが合流して、お爺ちゃんが運転するエルグランドで羽田まで送ってもらったのです。
「ほい、到着したぞい」
「お爺ちゃんありがとー! 気を付けて帰ってね!」
休日の早朝は首都高湾岸線もガラガラだったので、羽田まで二十分ぐらいで着いてしまいました。
羽田にも東名高速にも直接行ける、首都高横浜北線の新横浜インターチェンジが近所にあるので、我が家にとっては、とても使いやすくて助かってます。
とても便利で良い時代になりましたよね。
「環希も練習を頑張ってくるんじゃぞ」
「はーい」
「百合ちゃん、後はよろしく頼むよ」
「お任せ下さい」
ちなみに、麻生さんの家は、私の家の直ぐ近所にあります。徒歩で一分か二分の距離になります。
というか、ママが所有する賃貸マンションに、麻生さんは住んでいるんですよね。
たまに麻生さんも一緒に、ウチでご飯を食べたりもしているのです。
ママもちょくちょく、麻生さんの部屋に入り浸っているみたいですしね。
雇用関係の公私のけじめが完全に破綻している気がしないでもないけど、ダブルスのペアを一時期組んでいたのだから、こういう事もありえるのかな?
しかし、麻生さんはママの行動を、迷惑と思ったりはしてないのでしょうかね? 少し心配になります。
でも、迷惑と思っていたりしたら、ママの仕事を手伝ったりは出来なさそうな感じはしますね。
なんといっても雇用主が、唯我独尊の庭野まどかなのですから。
それに、麻生さんは上手いことママを転がしているところを、この前、バレンシアで見ましたので、なんだかんだと言ってもママと麻生さんは、良いコンビなのかも知れません。
お爺ちゃんからして、麻生さんのことを親しく百合ちゃんと呼んでいますし、私が産まれる前からの、ママが現役時代からの付き合いですし、関係は深いのでしょうね。
それで、なんで私が、羽田の国内線ターミナルに来ているのかといいますと、これから佐賀に向けて出発するからなのです。
ゴールデンウイークだからなのか、午前中の時間帯の良い便は満席だったので、仕方なく、まだギリギリ空席のあった朝早い便でのフライトとなりました。
「麻生さん、お腹空いたー」
「出発時刻まで、あと三十分ぐらいしかありませんよ?」
「でも、お腹空いたー」
起きてから家を出るまでにあまり時間が無かったから、慌ててコーンスープとプチロールパンを口に放り込んだだけで、ちゃんとした朝食をまだ食べてないのですよね。
「プレミアムクラスでは食事が出ますので、それまで我慢して下さい」
「あんな軽食、麻生さんの分を強奪してもまだ食べ足りないよ」
朝食とはいっても、小さなサンドイッチが三切れとかしか入ってないのですから。まあ、日本国内の路線で機内で食事が提供されるだけ、まだマシなのかも知れませんけど。
しかし、その分、普通席よりも一万六千円ぐらい高いお金を払って乗っているのだから、当然のサービスとも言えるわけでして。
そう考えると値段の割には、機内サービスはしょぼいのか?
でも、運賃で割った機内の一人当たりの専有面積でいうと、プレミアムクラスはお得な気もしますね。
これは、国際線のビジネスクラスにも言えることだと思います。
でも、よくよく考えてみると、プレミアム株主優待割引を使っているから、普通運賃よりも五、六千円は安かったのでした。
てへっ♪
毎年、春と秋に数百枚単位で株主優待券が送られてくるのですけど、一部を知り合いにあげたりする以外は、大半を金券ショップに買い取ってもらっているみたいなのです。
株主優待券が、配当金の一部になっているような気がするのは、私の気のせいですかね?
株主の割には、その株を保有している会社に貢献しない株主のママは、それでいいのかと小一時間考えさせられますが。
おそらく、国際線は株主でも一割しか割引が効かないから、あまり日系キャリアには乗らないのでしょうね。
つまりママは、愛社精神があって株を保有しているわけではなかったのである。
まあ、大半の投資家は、ママと同じく己の利益の追求のために、株を保有しているだけだもんね。
でも、その割には、配当利回りもあまり良くないのに、長期間にわたって株を保有し続けていますね。
航空会社なんて、景気の動向にモロに左右される水モノの気もするのですが?
親方日の丸の方のキャリアなんて、一度紙屑になってしまいましたもんね。
まあ、あっちは組合が強くて高コスト体質だったのが影響したみたいですけど。
「私の分まで強奪されるのは、さすがに困りますね。わかりました、空弁を買って持ち込みましょう」
「やったー! さすが麻生さんは話が分かるね!」
「おだてても、空弁以外は買いませんよ」
ちなみに、空の上で食べる空弁と、南宮山で食べた振りをする空弁当って似ている気がしませんか?
それで、肝心の佐賀行きの件ですけど、優梨愛ちゃんとの会話の中で、思い付いたのですよね。
その話は、今月の上旬にまで遡ります。