1 30-40 脳内で愚痴こぼす少女
お元気ですか?
美少女人気ピアニストユーチューバーの庭野環希です。
玉や珠ではありません。たまきですのでご了承ください。
それで、やってきました! 川崎ジュニアテニス選手権大会!
大会のグレードは、G4-A。
私の初めての公式戦です。つまり、関東ジュニアトーナメントの公認大会ってことだね。
まあ、公式戦と言えば、先月に行われた秋季神奈川県小学生テニス選手権も、公式戦といえば公式戦ではあるのだけど、アレは関東ジュニアポイント対象外の大会だったし、既に実績を残している子は出場できない大会だったしね。
それに、県のテニス協会も小学生のテニス強化と普及を目的にした大会だと、ぶっちゃけているのだから、ノーカンということで。
それで、この川崎ジュニアテニス選手権大会で優勝すれば、関東ジュニアランキングのポイントが75ポイントもらえるのです。
公認大会に出場して勝ち上がってポイントを貯めて、さらに上のグレードの大会への優先出場権の獲得を目指すのが、テニス界のどの世代でも変わらない共通の不文律となっているのです。
つまり、私みたいに実力はあっても大会での実績がなければ、いくら私が全日本ジュニアに出たいとか言っても、出場できない仕組みになっているのです。
要するに大きな大会に出場したければ、「下のグレードでポイント貯めて出直してこいやー!」ってことですな。
ポイント上位者には、主催者推薦や協会推薦とかがあって、地区予選を免除されたり色々な特典があったりもするのです。
その分、しがらみに縛られたりもするので良し悪しの気もするのですがね。
つまり、下積みのドサ廻りは辛いよ……
それにつけても、川崎と冠が付いているのに、試合会場が小田原なのは謎仕様ではあるのですけど。まあ、テニスコートの使用状況との兼ね合いもあるから、これは仕方がないのでしょう。
ちゃんと本戦は川崎で行われるしね。
どっちも、砂入り人工芝のコートというのが泣きたくはなってくるのだけれど……
帰ってもいいですか?
え、ダメ? さいですか。
どうせならば、新横のコートでやってくれればいいのに。あそこなら近所だし、デコターフのハードコートなんだからさ。
なんなら、十日市場のテニスガーデンでもいいのよ?
え、ダメ? さいですか。
なにも砂入り人工芝が憎くて言っている訳ではないのですよ。ええ、砂入り人工芝それ自体には罪はありませんから。
それに、砂入り人工芝のコートにもちゃんとしたメリットはあるのです。
まず第一に、テニスコートを作る時に掛かる金額が、ハードコートとかよりも少しばかり安い。
お得ですよね。
足腰に掛かる負担もハードコートよりも少ないから、健康のために趣味で身体を動かしている中高年の人たちに配慮された設計なのです。
あと、クレーコートに比べて水捌けが良いのもメリットでしょうか? メンテナンスの手間も掛からないですしね。
水捌けが良いから、雨上がりでも他のサーフェイスのコートに比べて、砂入り人工芝は早くプレーが再開できるのです。
日本は雨が多いから、コートの稼働率が下がってしまえば、経済的にも非効率なのは確かではあるのだから。
つまり経済的にお得だから、砂入り人工芝の普及が進んだともいえる訳でして。
テニスコートを運営する会社や公共団体は、なにも慈善事業として運営している訳ではないのですから、そこに経済的なコストという概念が入ってくる余地があるのは、やむを得ないとは理解はしているのです。
会社としては利益を上げるために、自治体とかの公共団体としては少しでも税金の支出を抑えるために。
だから、砂入り人工芝のテニスコートは、日本の事情にマッチした必然ではあるのですよ。
ただ、世界で通用するテニスプレイヤーを育てるのには、砂入り人工芝は不適切なだけで。
まあ、私ぐらいのレベルになると、サーフェイスに関係なくプレイができるようにはなるんだけどね。えへん。
普通のちょっと才能がある程度の子が、ジュニア以降に世界を相手に戦う時になって伸び悩むってだけで。ええ、砂入り人工芝それ自体は悪くはないのです。
ええ、ただ単に、試合会場の選定に首を傾げる部分があるというだけで。
でもこれって、テニスのガラパゴス化だよなぁ。
ここ近年、世界で活躍している日本人のトップ選手には、ある共通点があるのだ。
それが、なんだか分かりますか?
「賢明な読者諸君には、もうお分かりのはずである」
そう、日本人選手なのに、ジュニア時代から外国で練習をしているのだ。
小坂なおみはアメリカ育ちだったけど、トップクラスの日本人選手みんながみんな外国育ちの日本人って訳ではないよ?
でも、日本生まれの日本育ちで、小学生までは日本でテニスをしていたとしても、中学生になったらフロリダにあるテニスアカデミーとかに留学してしまうのだ。
西織もそうだし、東岡もそうでしたね。
ランキング上位の日本人選手を思い浮かべてみたら、日本で育った選手が皆無なのが自明の理であろう。
日本人選手って、元々はそんなに弱くはないと私は思っているのですよ。特にジュニア時代では世界でも通用しますしね。
でもこれって、他のスポーツにも当て嵌まったりもするから、ただ単に日本人って早熟なだけなのかも知れないとか密かに思ってたりもするのですが。
しかし、ジュニア時代に日本で育った選手というのは、シニアに上がった途端に世界では苦戦するハメになるのだ。
ジュニア時代には通用していたのに、まったくもって、なにをかいわんやである。
指導方針の問題? いや、中には問題があるコーチとかも居るだろうけど、このご時勢では、旧態依然の精神論を振りかざすコーチは、だいぶ淘汰されているはずである。 ……そうだよね? そうだったらいいなぁ……
では、なにが問題なのか?
「賢明な読者諸君には、もうお分かりのはずである」
「環希、さっきから何をブツクサと独り言を言ってんのよ?」
「えっ!? 声に出てた?」
「うん、バッチリと。危ない人みたいだったわ」
おー、じーざす…… やっちまったぜ。
「馬鹿なこと言ってないで、そろそろ試合なんだから支度しなさい」
「はーい」
……気を取り直して。
では、なにが問題なのか?
もうお分かりでしょう。
砂入り人工芝が問題の大半だと思うのですよ。砂入り人工芝だとバウンドがイレギュラーし難いため、スピンを掛ける意味がなくなるので、あまりスピンを掛けなくても勝てるのです。
ジュニア時代には、それでも世界でそこそこ通用したものだから、それが当たり前になって技術が身に付かないのです。
その成れの果てが、日本国内で行われるITFの大会や、アジアのITFサーキットをドサ廻りするランキング200位~500位ぐらいの選手の量産である。
このドサ廻りには前世の私も含まれるので、あまり偉そうなことを言えた義理ではないのですがね。
それで、テニスを国際的に統括するITFにおいて、砂入り人工芝がどのように思われているのか?
それが良く分かるのが、サーキットカレンダーにおける大会の詳細表示である。
砂入り人工芝はサーフェイスが、Carpet - Outdoorになっているのだ。
カーペット。つまり絨毯ですかね?
ちなみに、外国で開催されるITFの大会で、Carpet - Outdoorの記述を見かけるのは非常に稀である。
当然ながら、ATPやWTAのツアーでは皆無である。
この意味、分かりますよね?
サーフェイスがカーペットである砂入り人工芝の日本国内で普段は練習や試合をしているのに、それなのにサーフェイスが違う外国の大きな大会で勝負になると考える方がおかしいのですよ。
これでは、世界で通用するトッププレイヤーを日本で育てることなんか出来やしません。
この点に関していえば、公然と砂入り人工芝と協会を批判したハム子様は勇者だと思います。
さすがは長年にわたって、日本テニス界のトップに君臨し続けた女王様なだけはあります。
ちなみに、砂入り人工芝を批判すると、テニス協会からは煙たがられたりもするので、その辺は注意が必要であります。
要するに、大人の事情ってヤツだ。
そんなたわいもない事を考えながらプレイしてたら、試合が終わっていただなんて……
予選は、8ゲームプロセットのノーアドバンテージ方式だ。2ゲーム以上の差を付けて、8ゲームを先取した方の勝ち。
3セットマッチで行わないのは、主に試合時間の短縮の為ですな。あと、子供の体力面にも配慮してだろうけど。
7-7になった場合は、9-7と2ゲーム差が付くまでやって、8-8の場合はタイブレークに突入する。
つまり、最大で9-8の17ゲームまで行われる訳です。滅多にないけどね。
今回の予選でも、一試合か二試合がタイブレークまでもつれれば多い方でしょう。
予選三試合は全て、8-3、8-3、8-3で終わらせました。1ゲームも取れずにベーグルを喰らっちゃうと、負けた子はテニスが嫌いになっちゃうかも知れないしね。
つまり、いわゆる接待テニスというヤツだ。
でも、言い訳をさせてもらえるとしたら、私にもメリットはあるのだ。
対戦相手は、私から3ゲームを奪えて、「また今度頑張ろう!」とか思えてハッピー!
私も好きなテニスが余分に楽しめてハッピー!
これぞ、win-winの関係だね!
え? 違う?
……なんでやねん。
おかしい試合の描写がなかった…