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1 4-4 0-15 黄砂に吹かれて……


 誰かさんが飛行機のチケットの安さの誘惑に負けたのか、またCAのビジネスクラスに搭乗させられている、庭野環希です。

 今回の旅の最終目的地は、フランスではないのですけど、パリまでは前回と同じ行程をたどります。



「麻生さん、これって絶対に北京での乗り継ぎに間に合いませんよね?」


「無理そうですね。これは困りましたねぇ」



 いや、もうちょっと深刻になろうよ。

 遅延による乗り継ぎに関してのことを、飛行機に乗る前に羽田のグランドスタッフに聞いてみたけど、現地、北京の空港で聞いてくれの一点張りだったのだけれど、はたしてどうなることやら。


 一年前の思い出があるから、個人的には、羽田~北京~パリの路線は、あまり利用したくはなかった路線だったのですけど、


「深夜便が乗り継ぎ待ちで眠くなるのなら、昼間の便にすればいいのよ!」


 とか、我が家の財布を握っている、ケチな悪魔が囁いたのですよ。

 母上様、その安易な考え方な如何なものかと存じるのですけど? 私がそういう問題ではないと言ったのですけど、


「なによ、私の決定に文句あるの? だったら、パリまで北京経由のエコノミーにしたろか? なんだったら、モスクワ経由やインド経由でもいいんだぞ? んー?」


 鬼がいた! まさか実の母親が鬼だったとは知らなかったよ。

 さすがに中国系やインド系のエコノミーには、気分的な問題で乗りたいとは思いませんので、ここは、ママに逆らうのは得策ではなさそうですね。


 怒ったママならば、本当にやりかねない怖さがありますので。


「い、いえ、北京経由のビジネスで十分満足であります!」


「ならば、よろしい」



 という経緯がありまして、今回のフライトでは、羽田を夜に出発するのではなくて、朝に羽田を出発する便に乗っているのです。

 まあ、ケチとはいっても、エコノミーで遠くヨーロッパまで行かされるよりかは、北京経由の乗り継ぎ便でCAとはいえども、ビジネスクラスなのだから、ママも少しは気を遣ってくれてはいるのでしょうけど。


 夜も明けきらぬ早朝の五時前に、ケチな悪魔に叩き起こされて、六時半頃には羽田空港に到着したまでは良かったのですけど、搭乗する予定の飛行機が一時間遅れでの出発とのことでした。

 それで、一時間遅れて飛行機に乗り込んだはいいものの、今度はプッシュバックしてから、離陸するまでに四十分以上は待たされたのです。


 北京での乗り継ぎ時間は、正規の時間で二時間。もう既に、一時間四十分以上のタイムロスをしていますので、北京発の飛行機にはどう考えても間に合いません。

 これは、また深夜に北京を発つ便に振り替えられるのか、今日、搭乗する予定だったはずの翌日の同じ時間の便に、振り替えさせられるのが決定したといえるでしょう。


 前回と違って、今回は羽田でパリまでの航空券をちゃんと発券してくれたので、幸先が良いなと思っていたら、思わぬ落とし穴が待ち構えていたようでした。

 こういうトラブルに遭うのが嫌ならば、飛行機のチケットの値段がお高くても、直行便を選択して乗れということなのでしょうね。


 ちなみに、直行便だと安くても、エコノミークラスでも北京経由のビジネスクラスの倍のお値段になります。

 まあだからこそ、私がビジネスクラスに乗れているともいうのですがね。


 ……北京経由のCA便だけど。


 あと、北京発パリ行きのビジネスクラスの料金は、日本発の三倍の値段がするのです。

 さらに、羽田~北京の日系キャリアのビジネスクラスの運賃よりも、CAの羽田~北京~パリのビジネスクラスの運賃の方が、10万円以上も安いのですよね。


 航空運賃とは、いったい……


 これ以上考えたら、頭がおかしくなりそうですので、やめにしましょう。






 ※※※※※※






「やっと着いたー!」



 羽田から北京とパリを経由して、太陽とオレンジの国、スペインのバレンシアへと、やってきました!

 北京では結局、前回も利用した深夜の便に振り替えられたので、空港のラウンジで十二時間以上を過ごす破目になったのでした。


 日本人は短期の入国ならばビザなしでも中国に入れるのだけど、それ以外にも、ストップオーバーで72時間だけ滞在できる専用のイミグレがあって、乗り継ぎの合い間に観光が出来るようにもなっているのです。

 乗り継ぎの合い間に、万里の長城か紫禁城のどちらかを、日帰りで観光でもしようかとも少しは思ったのですけど、振り替え便の手続きを済ませたら午後の二時を回っていましたので、今回は観光をするのはやめておきました。


 日帰り観光でも大抵の場合は、ガイドはあらかじめ予約をしておかなければいけませんので、今回のように突発的に時間が余ってしまった場合には、あまり融通が利かないみたいなのです。

 予約なしのガイドとかがいたとしても、大手旅行会社と提携していない場合は、トラブルとかがなんとなく怖そうですしね。


 それと、車だと渋滞で時間が読めませんし、地下鉄だと保安検査が面倒くさそうだったのもあります。

 地下鉄で保安検査があるだなんて、どれだけ厳しいんだ?とか思ってしまいましたよ。


 あと、日本に比べたら北京は空気が悪い気がします。黄砂の時期だからなのか余計に大気汚染が酷く感じられますね。空港の外全体が黄色く煤けているのですよ。

 日本でもこの時期には、西日本に黄砂が降り注いで、車などが白く黄色く汚されてしまいますけど、空一面が黄色くなるほどではありませんので、中国本土のこれには参りました。


 だから、十二時間程度だったら、空港のラウンジに引き籠もっていたほうが、まだマシであるとの判断が、麻生さんと二人で合意に至った結論ということなのでした。

 北京空港にあるCAのファーストクラスラウンジは、利用する人も少なかったので、ちゃんとシャワーも使えて仮眠室で仮眠も取れましたし、そこそこ快適に過ごせたので満足できました。


 機内食に比べたらラウンジでの食事も、かなり美味しかったです。

 こういうトラブル時には、中途半端にホテルに連れて行かれるよりも、空港のラウンジで時間を潰しているほうが良い気がしますね。


 まあ、トラブルがないのが一番ではあるのですけど。



 そんなこんながありましたけど、なにはともあれ、バレンシアに到着です!



「バレンシアには着きましたけど、目的地はまだですよ」


「あと、どれぐらい掛かるの?」


「目的地のビナロスまでは、此処バレンシアから、北に約140キロは離れていますので、まだ車で二時間程は掛かりますよ」


「140キロも北に行くだなんて、もうほとんどカタルーニャじゃないのよ」



 ビナロスという街があるのは、分離独立問題に揺れているカタルーニャとの州境の近くでしたか。



「これでも、バルセロナから行くよりも少しはマシだったから、バレンシアで降りることにしたのですよ?」


「ビナロスの近くに空港はなかったの?」


「ありましたけど、LCCがロンドンから週に三便程度、飛んでいるかいないかといった田舎ですから、日本からだと使えませんね」


「ふ、不便だ……」



 スペインの首都であるマドリードとの直行便すらないなんて、ちょっと田舎すぎやしませんかね? 日本でいったら、中標津かオホーツク紋別空港よりも田舎の気がしてきたぞ。

 あっちは曲がりなりにも、東京との直行便があるのだから。



「不便なのが嫌ならば、早く活躍して大金を稼いで、プライベートジェットにでも乗れるようになって下さい」



 プライベートジェット機をチャーターして、ツアーを飛び回れるようになるには、最低でも年に10億ぐらいは稼げるようにならないと厳しそうですね。

 一回チャーターして飛ばすだけでも、最低でも五百万とか掛かりますし、距離によっては一千万とかもしくはそれ以上の金額が掛かるのが、プライベートジェット機なのですから。


 しかし、私はまだジュニア選手なのだ。それも駆け出しの。

 それに、たとえプライベートジェット機に乗れるようになったとしても、肝心の問題がもう一つあるのを、麻生さんは見落としているよ。



「プライベートジェットに乗れるような身分になったら、そんな辺鄙な場所で開催される大会には出場しなくなるでしょ!」


「それもそうでしたね」



 WTAのツアーで辺鄙な場所で開催される大きな大会といったら、インディアンウェルズぐらいでしょうかね?

 あそこって、なにげにロサンゼルスから微妙に遠いですしね。


 だから、トッププロは、インディアンウェルズの会場にほど近い、パームスプリングスの空港にプライベートジェットで、颯爽と降り立つのでしょうね。

 くー、私もそんなお大尽な身分に早くなりたいぜ!


 あ、ちなみに、今回もシャルル・ドゴール空港でピアノを弾かせて頂きました! パリに到着した時に雨が降っていましたので、シェルブールの雨傘をチョイス。

 それからなぜか、小公女のテーマが頭に浮かんだので、それを雨傘から繋いで演奏。フランスは関係ないし、作曲者は日本人なんだけどね。なんとなく雨傘とメロディーラインが似ていると感じたから、私の頭に浮かんだのでしょうか?


 小公女のテーマを弾いていたら、今度は、難破船の旋律が浮かんできてしまったので、難破船をチョイス。難破船を弾いていたら、今度は、I Like Chopinが浮かんできて……

 ああっもうっ! 難破船とショパンでは全然違うのに、なぜ浮かんだ? エンドレスになりそうだったので、克己心を発揮して弾き続けたいのを無理矢理にでも押さえ込みましたよ。


 でもそれだけでは、湿っぽくなってしまうので、ラ・マルセイエーズを弾いてたら、朝から酔っ払ったオジサンが突然歌い始めました。それからは、周囲に居たフランス人による、ラ・マルセイエーズの大合唱となってしまいましたとさ。

 まあ、フランスの国歌なのだから、大抵のフランス人は歌詞を覚えているので、歌いやすかったみたいでしたね。


 ピアノを弾いていたのは、日本人の私だったのがシュールだったけど。


 あと、偶然にも一年前の出来事を覚えていてくれた人がいたので、オー・シャンゼリゼを弾いて、みんなで歌って〆ました!

 今回もフランス人はノリがよかったよ!


 あのフラッシュモブの再生数は、五千万回を超える勢いなのですから、フランスでも誰かが視聴していたとしてもおかしくはなかったのでしたか。

 思わず顔文字で表現したくなるぐらいには、広告収入が美味しい動画ですね!


中国さん緑化お願いします…

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