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1 4-3 15-30 ひなちゃんのその反応が見たかった


「行ってきまーす!」


「いってらっしゃい、忘れ物はない?」


「たぶん、大丈夫!」


「身だしなみチェックは…… まあ、今日は合格ね」



 よし! どうやら今日は、及第点はもらえたみたいでしたね。

 私も少しは、女の子らしくなってこれたということでしょうか?



「磯子行きに乗り遅れちゃうから、もう行くよ!」


「はい、いってらっしゃい」



 ニュージーランドから帰国した私は、いつものように、磯子行きの電車に乗り込むために、急いで家を出た。

 まあ、駅までは徒歩二分しか掛からないのだけどね。



「ひぇ~、今日も寒い!」



 南半球にあるニュージーランドは夏だったけど、日本は真冬の二月なのだから、体調を崩さないように気を付けねば。


 時刻は朝の7時40分。小机駅のホームにお馴染みの電車が滑り込んできた。

 最後尾の一番端のドアが開くと、ドアの端に優梨愛ちゃんの顔が見えた。ここが、優梨愛ちゃんのいつもの定位置である。


 うん、今日も相変わらず優梨愛ちゃんは可愛いですね。



「優梨愛先輩、ごきげんよう」


「ごきげんようっていうか、恥ずかしいから普通の挨拶をしようよ」



 なんでやねん。ごきげんようは、お嬢様学校のデフォルトですやん。






 ※※※※※※






「はい、ひなちゃんにニュージーランドのお土産だよん♪」


「わー! たまちゃんありがとう! 開けてもいい?」


「どうぞ、どうぞ」



 ガサゴソ……



「う゛、ナニこれ…… キモイ? いや、キモカワイイのかな?」



 ふはははは、ひなちゃんのその反応が見たかったから、わざわざソレを選んだのだよ。



「マリオウッドカービングとか言って、ティキというマリオ族の神様みたいだよ」


「たまちゃん、マリオやない。マオリ族や」



 マオリって言い難いですやん。


 グリーンストーンやホワイトストーンカービングのティキもあったのだけれど、私がピンときたのが、ウッドカービングのティキだったのですよ。

 あと、お値段もウッドカービングの方が、石よりも半額以下だったのも決め手の一つでしたね。


 ちなみに、ウッドカービングティキのお値段は、19.9NZ$也。

 ニュージーランドって、現金では10セント以下の単位での流通がないのですよね。電子決済とかではちゃんと1セント単位からあるのに、なんとなく不思議な感じがしました。


 日本でいえば、1円玉と五円玉がなくて、使えない状態とでもいえばよいでしょう。

 日本で1円と五円の流通をやめたら、主婦の反乱が起こって、政権が吹っ飛びそうな気がしますね。


 主婦を、既婚女性を、敵に回してしまったら、日本では政治家でさえ、社会的に抹殺されてしまう怖い世の中なのが、日本社会なのである。



「でも、このティキって、なにかに似ているような?」



 あー、やっぱり、ひなちゃんも気が付きましたか。



「なんかこう、宮崎アニメに出てきそうな感じがするよね」


「そういえば、似たような感じの森の精霊みたいなのがいたような気もする」



 つまり、ニュージーランドのティキも、日本に来たら八百万の神々の仲間入りをしてしまうということなのかな?



「ちなみに、私もお揃いだよ。ほら」



 そう言って、私は自分のカバンに付けてあるティキを、ひなちゃんに見せつけるようにカバンを持ち上げてみせた。



「わー、ホントだぁ。なんか魔除けみたいだね!」


「痴漢対策にはいいかもね」


「痴漢かぁ… そういえば、ひなたは痴漢に遭ったことはないなぁ」



 自分で言っておいてなんだけど、痴漢ねぇ。

 痴漢も、ひなちゃんに痴漢をするよりも、ひなちゃんが小さすぎて、庇護欲のほうが勝ってしまうとかなのかな?



「ロリコンは紳士なんだよ」



 二次元で性欲を発散させているのか、それとも、二次元にしか興味を持てないのかまでは分かりませんけど。

 そういわれてみると、私もまだ痴漢に遭ったことがなかったよ。


 自分で言うのもアレだけど、顔面偏差値は中の上以上で、ちょっと勝気な猫系が入っているけど、そこそこは可愛いはず。

 コメックスのジュニア向けのモデルもしていることだし、悪くはないはずなのだ。


 胸も発育途上だけれど、70のBがきつくなってきたのだから、もう既にB以上には成長しているのだ。

 お尻は、安産型というよりも、引き締まったアスリートのお尻だけどさ。まあ、テニスをしているから、引き締まったお尻は当然なんだけどね。


 しかし、この顔とスタイルで、なぜ、私は痴漢に遭わないのだ?

 やはり、お尻なのか? 痴漢は柔らかそうなお尻を触りたいのがデフォなのか?


 うーむ……


 当然、痴漢には遭いたくはないけど、痴漢されなかったら、それはそれで女性としての魅力に欠けるとも取れるわけでして、なんだか複雑な気分にさせられるぞ。

 そう考えると、私もまだロリコンの範疇に入るということなのか?


 紛い物の私ではなくて、世の中の本当の女性は、そのことをどう思っているのでしょうかね?

 今度、優梨愛ちゃんと萌香ちゃんに痴漢に遭ったことがあるのか聞いてみよう。



「それの意味は分からないけど、横浜で山女の制服を着た子に痴漢するのは、もぐりとか聞いたよ」


「ああ、なるほどね」



 つまり、お嬢様学校である、山手女学院の生徒に手を出したら、その生徒が本当のお嬢様かどうかに拘わらず、その背後にある権力が動いて、痴漢をした容疑者は社会的に抹殺されてしまう可能性が、極めて高いということなのか。

 だから例え、山手女学院の生徒に痴漢をしたくても、痴漢が出来ないが正解なのかも知れませんね。


 その分、他の女子中高生が被害に遭う確率が高くなっているのかも知れません。

 そうだとしたら、それは気の毒だと思いますけど、さすがにそれは、痴漢をする人が悪いのであって、山手女学院の生徒が悪いわけではありませんので、それはご容赦ください。


 つまり、痴漢が発生するような、ストレス社会が悪いという結論が、私の脳内の投票で決定したのであります。

 コンコンと木槌を鳴らす、裁判官かも知れないけど。


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